中高年になると、身体のさまざまな部分で問題が発症しがちです。高齢になるほど罹患率が高くなるものとして「変形性膝関節症」(へんけいせいひざかんせつしょう)があります。
日本整形外科学会によると、変形性膝関節症は男女比で1対4と女性に多く見られる症状で、初期は立ち上がるときや、歩こうとする際といった動き始めで痛みを感じるようになります。中期になると、正座や階段の昇降が困難なほどの痛みを伴い、末期には安静時でも痛みが取れず、膝が真っすぐ伸びない、歩行が困難など日常生活に支障をきたす場合もあるそうです。
変形性膝関節症は、中年期から予兆がある場合もあります。中年期で膝の痛みを放置しておくと、高齢になってからの日常生活に支障をきたす可能性もありますので、早めのケアを心がけておくと良いでしょう。本記事では、そのような変形性膝関節症について、今から実施すべき健康習慣について紹介します。
関節軟骨で膝はスムーズに動く
変形性膝関節症の痛みが起こる原因の前に、膝関節のメカニズムを説明します。
膝関節には、硬い大腿骨と脛骨が直接当たらないように、クッションの役割をしている関節軟骨というものがあります。膝関節は関節包という膜に包まれ、その中は関節液で満たされています。関節軟骨は関節液に浸された状態です。
歩くと膝関節に圧力がかかり、関節軟骨に含まれていた関節液が滲み出してスポンジのように変形して、圧力を分散・吸収してくれるので、関節がスムーズに動きます。圧力が減ると、関節軟骨は再び関節液を吸収して元の状態に戻ります。関節軟骨には血管や神経が通っておらず、痛みを感じない組織です。また血液の代わりに関節液が栄養補給をしています。
このような働きを果たしている関節軟骨の柔軟性、緩衝性、表面の滑らかさを保つことが、スムーズな膝関節の動きには大切なことになります。
柔軟性、緩衝性、滑らかさが失われると、関節軟骨が摩耗・変形して、変形性膝関節症を招くようになります。摩耗・変形する原因は、老化、外傷、肥満、遺伝などが考えられるそうです。
関節軟骨がすり減ると痛みも
変形性膝関節症は、関節軟骨の摩耗・変形により、痛みや腫れ、曲げ伸ばしの制限とともに、大腿骨と脛骨の間が狭くなることで、膝関節の変形が起きます。初期から中期は、関節軟骨が摩耗・変形している状態ですが、それ以上となると大腿骨と脛骨が直接ぶつかります。このような状態になれば、膝に強い痛みが生じます。
関節軟骨が摩耗・変形する原因は、加齢による柔軟性・緩衝性の低下、激しい運動などによる酷使などが主なものとされていますが、体重の増加や肥満も大きな要因と考えられています。中高年になって体重が急激に増えた人は、膝への負担も急増します。一般的には歩くときに膝にかかる衝撃は、体重の3倍近くといわれています。体重のある人ほど、膝の負担は大きくなるのです。
変形性膝関節症の治療は、まず薬物療法、理学療法などが行われます。それでも治らない場合は、関節鏡手術、高位脛骨骨切り手術、人工膝関節置換術などによる手術となります。
膝の健康を維持させるには
日本整形外科学会専門医、日本関節鏡学会理事、日本整形外科スポーツ医学会評議員でもある星川吉光氏によれば、関節軟骨の傷や変形を治すことはできないそうですが、筋力トレーニングやストレッチを習慣にすることで、膝関節への負担を軽減できるとしています。
日本整形外科学会でも、「変形性膝関節症の運動療法」として膝を支える筋肉のトレーニング方法や、膝の動きを良くする運動を公開しています。この運動療法は治療だけでなく、予防法としても紹介されています。
また星川氏は、食生活で肥満を防ぐ過食だけではなく、関節軟骨の健康に役立つ栄養素も紹介しています。その栄養素はタンパク質です。骨、筋肉、血液などの材料となるタンパク質が不足すると、正常な代謝が行われず、膝にも悪影響を及ぼすとしています。食品としては、大豆製品や卵・乳製品などに良質のタンパク質が含まれているため、摂取を推奨しています。
またカルシウムの吸収を助けるビタミンDや、軟骨を丈夫にするビタミンC、代謝を助けるビタミンB群、骨の成長に不可欠なビタミンA、細胞の酸化を防ぐビタミンE、各種ミネラルも必要としています。
前述のように、膝関節の痛みを予防・改善するには、肥満の防止とともに、必要な栄養素を摂取する食生活と、膝の機能を維持する運動が大切です。肥満や栄養、筋力というものは一朝一夕で改善するものではありません。仕事で多忙な中高年のビジネスパーソンも、自分の生活習慣を見直し、食生活やウォーキングなどを習慣化して膝機能の低下を今のうちから予防してみませんか。
※掲載している情報は、記事執筆時点(2017年11月18日)のものです。
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https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/knee_osteoarthritis.html
https://health.suntory.co.jp/professor/vol2/
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