2017.10.30 (Mon)

仕事力を落とさない!中高年のためのヘルスケア(第5回)

骨粗しょう症で寝たきりに!侮れない骨の健康管理

posted by 村上 哲也

 中高年からは、身体のさまざまなところで老化がはじまります。その1つが骨です。骨の老化によってあらわれる症状としては骨粗しょう症があります。骨粗しょう症は骨の強度が下がり、軽い衝撃でも骨折を起こしやすくなります。また骨折以外にも、背骨の変形や腰痛などを引き起こします。

 高齢者の骨粗しょう症による骨折は、要介護や寝たきりの原因になるともいわれています。本記事では、そのような可能性のある、骨粗しょう症のメカニズムと予防方法を紹介します。

骨粗しょう症が原因で寝たきりや認知機能の低下に

 なぜ骨の健康が、老後の日常生活を左右するのでしょうか。内閣府が2016年に発表した平成28年版高齢社会白書にある「65歳以上の要介護者等の性別にみた介護が必要となった主な原因 」の内訳を見ると、脳血管疾患が17.2%、認知症が16.4%、高齢による衰弱が13.9%、骨折・転倒が12.2%となっています。

 また骨折の治療から身体活動が減少すると筋力が低下し、日常生活への復帰が困難になることもあります。2014年に国立長寿医療研究センター、京都大学、名古屋大学などによる「高齢者における骨粗しょう症および歩行能力と認知機能の関係」という研究論文では、骨粗しょう症や歩行機能の低下は、認知症のリスクが高まると発表しています。

 前述の調査や論文から骨粗しょう症が発端で、老後の日常生活に支障をきたす可能性のあることがわかりました。その骨粗しょう症が発生するメカニズムを紹介します。

骨の代謝機能を低下させる3つの原因

 骨の強度は、量である「骨密度」と、質の「骨質」という2つ要素で決まります。骨量とは、骨に含まれるカルシウムなどのミネラル(栄養素)の量のことになります。骨質は素材の質のです。骨には代謝があり、1年間で全体の20~30%が新しいものと入れ替わっているそうです。代謝は古くなった骨の成分を壊す細胞と、新しい骨を作る細胞が働くことによって成り立っています。何らかの原因で骨を作る細胞の働きが低下すると、骨量の減少や骨質の劣化が起こり、骨はもろくなるのです。

 細胞の働きが低下する原因はさまざまですが、アステラ製薬によると次の3つが代表的な原因とされています。1つ目はホルモンバランスの変化です。エストロゲンという女性ホルモンや副甲状腺ホルモンなどが骨の代謝に大きな関わりを持っていますが、それらの分泌が低下すると、細胞の働きが低下するそうです。女性は閉経によって、男性よりエストロゲンが急激に低下することがあるため、加齢によるホルモンバランスの変化が大きいとされています。

 2つ目が栄養素の不足です。カルシウム、タンパク質、ビタミンD、ビタミンKなどの骨に必要な栄養素は腸から吸収されています。摂取量の低下や体外に排出されやすくなるなどが起こると栄養素が不足して骨の代謝が滞ります。

 3つ目は運動不足、喫煙、過度な飲酒などの生活習慣です。骨は適度な刺激を与えると、代謝が促進する性質を持っていますので、運動不足は代謝低下の一因となります。また喫煙には女性ホルモンの作用を妨げることに加え、カルシウムの吸収も妨げて体外に排出させる作用などがあります。過度な飲酒もカルシウムの吸収の妨げと体外への排出を促すのです。この3つの生活習慣は骨以外にも、さまざまな生活習慣病の原因といわれています。

予防方法が2種類ある骨粗しょう症

 東京女子医科大学整形外科の加藤善治医師によると、骨粗しょう症の予防方法は年代によって違ってくるそうです。20~30代は食事による栄養素の摂取と、適度な運動です。これに加え、禁煙と適量の飲酒になります。

 40~50代は食事による栄養素の摂取に加えて、病院で骨粗しょう症の検査と、女性で閉経を迎えたならホルモンバランスのチェックも行いましょう。また運動は、無理のない範囲での継続に切り替えます。

 このように骨粗しょう症の予防には、加齢に関係するものと、生活習慣に関係するものに分けることができます。次は生活習慣に関する食事、運動に関する予防方法を解説します。

骨量と骨質を低下させない生活習慣

 生活習慣に関する予防法として、まず栄養素の食事摂取があります。骨を作るのに必要な栄養素を多く含む食材をとることを心がけましょう。たとえばカルシウムは牛乳、チーズなどの乳製品、小魚類や納豆、豆腐などに含まれます。またビタミンDを一緒にとると、カルシウムが吸収されやすくなるので、ビタミンDが含まれるサケ、サンマ、ヒラメなどの魚類をとりましょう。

 また適度な運動を行うことも大切です。10代は骨を育成するために、適度な負荷をかける運動が適していますが、年齢を重ねるとともに負荷を減らしていきます。40~50代では、1日に30分程度のウォーキングが目安となります。

長生きに関する平均寿命と健康寿命の違い

 冒頭でも述べたとおり、骨粗しょう症から寝たきりや認知症のリスクが高まることを伝えましたが、平均寿命が伸び続けている現代では、健康に老後生活を送ることは大きな人生課題でもあります。

 平均寿命とは、人口における0歳から亡くなるまでの年数の平均値です。平均寿命は、高齢者の日常生活や健康状態を調査するものではありません。そこでWHO(世界保健機関)は2000年に平均寿命とは別で、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる年齢を「健康寿命」と定義するようになりました。

 この定義は各国の高齢者の健康状態を示す指標となり、日本でも厚生労働省が2013年に平均寿命と健康寿命の調査を行いました。それによると男性の平均寿命は80.21歳に対し、健康寿命は71.19歳。女性の平均寿命は86.61歳に対し、健康寿命は74.21歳でした。男性は9.02年、女性は12.40年も日常生活が制限される可能性のあることがわかりました。このような点からも、ご自身の健康寿命を伸ばすために、日ごろの生活習慣を今のうちから見直しておくことは大切なことといえます。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2017年10月12日)のものです。

【関連記事】
https://www.takeda.co.jp/patients/osteoporosis/aging/health.html
https://www.astellas.com/jp/health/healthcare/osteoporosis/basicinformation02.html
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa13/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2014/0/2014_0200/_pdf
http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2016/html/zenbun/s1_2_3.html

村上 哲也

村上 哲也

コンサルタント兼ライター。ゼロベースでのコンサルタントには定評があり、担当する顧客とは「戦略」から始め「戦術」まで実行させる本格派。2013年より本業の合間にライター業務も行っており、コンサルタント関係に留まらない幅広い記事の記載を行っている。
http://midorinooka2014.wix.com/business-consulta-jp

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