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2024.03.29 (Fri)

生き残る大学となるために(第9回)

大学における電子教科書の導入・活用事例を紹介

 文部科学省は、2021年度から初等中等教育の英語にデジタル教科書を導入する実証実験を進めています。今後は算数・数学でも導入が予定されており、初等中等教育でデジタル教科書の活用が進んでいます。

 大学などの高等教育機関にも電子教科書を活用する動きが広がりつつあります。例えば電子教科書から得られるデータを基にしたLA(Learning Analytics)や、LMS(Learning Management System)との連携による学修効率化など、さまざまな取り組みが始まっています。

 この記事では、電子教科書のトレンドやメリット・デメリット、大学などの高等教育機関における活用のポイントを解説します。

初等中等教育だけでなく、高等教育でも電子教科書の利用は進みつつある

 2019年4月に施行された「学校教育法等の一部を改正する法律」および関連省令により、初等中等教育でデジタル教科書の使用が認められました。GIGAスクール構想の後押しもあり、文部科学省が実施した「令和4年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」によると、2023年時点で全国の公立学校(小・中・高等学校など)の87.9%が学修者用デジタル教科書を導入するなど、普及が進んでいます。

 大学などの高等教育機関でも教科書の電子化が進みつつあります。NTT EDXによる「EDX UniText」など、電子教科書の導入・普及に向けたサービスも始まっており、初等中等教育と同じく高等教育でも電子教科書の利用は一般化していくと予想されます。

電子教科書の機能と教育的なメリット

 電子教科書には教科書を閲覧するビューワーとしての機能だけでなく、コンテンツ配信・管理や学修ログ確認など、紙の教科書にはないさまざまな機能・メリットが存在します。

ビューワー機能

 学生や教員が、パソコンやタブレットなどで教科書を閲覧できる機能です。検索機能やメモ機能により学修を効率化し、また移動中や外出先などでも継続して学修が可能です。

コンテンツ配信・管理機能

 市販の教科書や作成した教材、映像、実習マニュアルなどを学生へ電子的に配布できます。コンテンツをカテゴリーごとに分類したり、分類ごとに名前を付けたりすることも可能です。配布した教科書や教材は不正コピー防止処理がされるため、著作権も守られます。

学修ログ確認機能

 学修ログの確認も電子教科書ならではの機能です。学生が教科書や教材をどこまで読み進めたかという閲覧状況や、学生がマーカーを引いた箇所、どのページにどのくらい時間を費やしていたかを確認できるため、学修の進捗や理解度に合わせた細やかなフォローや講義の改善が可能となります。

 これらの機能は学生の学修効率を向上させるだけでなく、教員の業務負担を軽減し、学生に対するより充実したサポートの実現につながります。

電子教科書を利用する際の注意点

 一方で、電子教科書の利用には注意点もあります。1つはITリテラシーに対する配慮です。紙の教科書と異なり、電子教科書の利用では教科書の閲覧やページ移動、メモ書きなどを画面上で行う必要があります。大多数の学生は問題なく操作できますが、操作が難しい学生がいるケースも想定し、サポート体制の検討が必要です。

 また、情報セキュリティ面でも注意が必要です。生徒の学修状況や個人情報などの流出を防ぐためにも、十分な情報セキュリティ対策を行っている電子教科書プラットフォームを採用すべきでしょう。

高等教育機関における電子教科書利用の現状

 初等中等教育機関だけでなく、大学などの高等教育機関でも電子教科書の導入事例が増えつつあります。

 ある私立大学では、通信教育課程の受講生に向けて電子教科書を提供しています。従来は履修申し込み後に大学から教科書を発送していましたが、受講生からは申し込み後、すぐに事前学修を開始したいという声が上がっていました。意欲の高い学生は早い時期に申し込みをする傾向がある一方で、大学の事務処理の都合上どうしても教科書の配布が一律になってしまい、教科書が届くのが学修開始直前になってしまうことが課題でした。

 同大学は電子教科書の採用によってこのタイムラグをなくし、申し込み後すぐに教科書を配布できるようになりました。結果として、受講生の学修意欲が最も高いタイミングで学修を開始できる環境が整備されました。

 また、別の公立大学ではLMSと電子教科書を連携させ、得られた学修データを分析し、教育にフィードバックする取り組みを実施しています。

 同大学によれば、「電子教科書を読むときには、前のページに戻って正しい知識を確かめる人ほど成績がよい」といったように、学修方法による教育効果の分析も進みつつあるそうです。

 このように、電子教科書の活用は単なる教科書の電子化という枠組みだけでなく、課題を解決するための施策として、また電子教科書から得られるデータの活用施策としての側面もあります。大学DXの重要性が指摘される中、電子教科書の活用は大学DX推進における一つの手段になるのではないでしょうか。

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