生き残る大学となるために(第5回)

大学のクラウド利活用はどこまで進んでいるか

 大学におけるクラウドの利活用が進んでいます。とはいえ、学内全システムのクラウド化を完了させている大学は決して多くありません。クラウド化を進める際に注意したいのが認証基盤の統合です。この記事では、大学のクラウド利用状況や導入する大学が増えている理由、導入の際に注意すべきことについて解説します。

94.7%の大学がクラウドを導入している

 文部科学省が実施している「令和4年度学術情報基盤実態調査」によれば、94.7%の大学が情報システムの全部または一部をクラウド化しており、多くの大学でクラウドの導入が進んでいる状況がうかがえます。

 一方で、学内全システムのクラウド化が完了している大学は多くはありません。同調査の「用途別のクラウド導入状況」によれば、電子メール、ホームページ等の「管理運営基盤」のクラウド化を実施している割合が95.1%、eラーニング等の「学術基盤」は82.2%と高い水準となっていますが、研究データ管理等の「研究基盤」へのクラウド導入は18.0%にとどまるなど、多くの大学ではクラウド環境とオンプレミス環境を併用している状況にあります。

   ※出典:文部科学省「令和4年度学術情報基盤実態調査(概要)」P14より

クラウドを導入する大学が増えている理由

 クラウドの導入を進める大学が増えている理由としては、「コスト削減」「運用負荷の軽減」「利便性の向上」「可用性の担保」などが挙げられます。

 システムは開発だけでなく運用にもコストがかかります。たとえば目的に合わせてシステムをカスタマイズするとメンテナンスコストの増加につながり、人的リソースの確保が必要になります。また、利用者増などに伴ってシステムに負荷がかかり、パフォーマンスが低下する場合があります。これらの問題は、システムの運用基盤をクラウドにすることで、ハードウェアに対するメンテナンスコストが削減できますし、システムの負荷についてもクラウドを提供する事業者に委ねることが可能です。

 さらにクラウドは外出時やテレワーク時にも利用でき、導入によって利便性の向上が期待できます。また、自然災害などの非常事態の発生を想定すると、BCP(事業継続計画)の観点からも可用性を担保できるクラウドの導入は必須だといえます。

クラウド移行の課題を解決する「クラウドリフト」とは

 クラウドへの移行は、一般的にシステムの改修や新規開発を前提とするため容易ではありません。この「クラウドシフト」と呼ばれる手法は、利用者の要望を柔軟に反映できますが、システムの開発や構築に多くのコストや手間がかかるといった課題があります。

 クラウドシフトに対し、オンプレミス環境で稼働するシステムをそのままクラウド環境へ移行する「クラウドリフト」と呼ばれる手法があります。クラウドリフトは既存のアプリケーションやシステム構成を変更することなくクラウド化を実現し、コストや手間を抑えるメリットがあります。

 たとえば、2018年に学内システムを全面的にクラウド移行したある国立大学は、事務系の財務会計システム・人事給与システム・教務情報システムなどをクラウドリフトしています。同大学では「教務情報系と財務会計系のシステム」「人事給与系のシステム」など、相互に連携しているシステムをグルーピングし、グループごとに段階的にクラウドリフトしました。

 クラウドリフトにはメリットが多い一方で、「既存システムをそのまま移行するためクラウドの柔軟性を生かしきれない」「既存のオンプレミス環境との連携が難しい」「古いシステムが残り、保守や運用に手間がかかる」といった課題があります。

クラウド移行で重要な「認証基盤の統合」

 クラウド移行には多くのメリットがありますが、単にオンプレミス環境をクラウドへ移行すれば全ての課題が解決するわけではありません。よく聞かれる課題が、「オンプレミス環境やクラウドサービスが学内で乱立し、認証方式もバラバラ。利便性が損なわれてID管理が煩雑化している」というものです。クラウド移行だけでは、こうした課題を解決できません。

 加えて、さまざまなIDの併用は情報セキュリティリスクを高めます。システム管理者が把握できないところでIDの追加や変更、削除が行われてしまい、脆弱なパスワードや古いIDの放置など、情報セキュリティ面で課題が生じることが考えられます。

 そこで検討したいのが、クラウドへの移行に合わせた統合認証基盤の導入と拡充です。SaaSなどのクラウドサービスはSSO(シングル・サインオン。1度のユーザー認証で複数のシステム利用が可能になる仕組み)化されておらず、個別のID管理となっているケースが珍しくありません。すでに学内システム向けに統合認証基盤を導入している大学でも、学生向けや教職員向けなど複数の認証基盤が設置されているケースがあります。クラウド移行の際には、クラウドを含めて対応できる一元的な統合認証基盤の構築が求められます。

 前述したある国立大学の事例でも、クラウド移行と合わせ、全学認証一元化の取り組みを進めています。同大学では2010年ごろより統合認証基盤を導入していましたが、学生向け認証基盤と教職員向け認証基盤が混在するなど、課題がありました。その大学では、最終的に学生向けの認証基盤に教職員向けの認証基盤を統合する形で一元化を図っています。

クラウド移行と統合認証基盤はセットで考える

 このように、クラウドへの移行は、認証基盤の統合とセットで考えるとスムーズに進みます。とはいえ、これら2つの観点の重要性や関連性を理解している業者が少ないのも現状です。特に認証基盤については大学ごとに状況が異なり、現状に合わせて柔軟に対応するためには、大学認証基盤に関する経験やノウハウが必要です。

 NTT東日本は、さまざまな大学で認証方法の整理や一元化、統合認証基盤の導入をサポートしてきました。ある大学のケースでは、Active Directoryに対応している教務システムと、別にLDAPサーバーを設置して対応していたLMS(ラーニングマネジメントシステム)で認証方法が分かれていました。そこで、新たにID統合認証システムを導入し各認証基盤との連携を実現しました。

クラウド化のメリットを最大化するために

 昨今のDX化の流れ、業務効率化の流れを受けて大学ICTのクラウド化は急速に進んでいます。それに伴って、SaaSの導入やオンプレミス環境のクラウド化などにより、ID管理が煩雑化しているケースは珍しくありません。柔軟性の高いクラウド化によるメリットを最大限享受できるように、認証基盤の統合についても併せて検討を進めるのが望ましいでしょう。

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