2017.02.28 (Tue)

子供たちが熱狂! 懐かしのヒット商品の裏側(第5回)

後発でもロングセラーに!「トミカ」成功の理由

posted by 味志 和彦

 手の平サイズのミニカーのブランドといえば、タカラトミーが発売する「トミカ」が有名です。

 トミカは1970年にミニカー市場に参入し、発売から6年目の1976年には、販売台数が1億台を突破。2015年には総計6億台を超え、それまでに販売されたミニカーを並べると、地球を1周する規模になるといいます。

 しかしトミカはもともと、国産のミニカー市場では後発でした。それにもかかわらず、トミカはなぜ先発のメーカーを追い抜き、40年以上続くロングセラーシリーズへ成長したのでしょうか。その秘密に迫ります。

なぜトミカのミニカーのサイズは約7cmなのか

 前述の通り、日本にはトミカ以前にも国産のミニカーはありました。ですが、粗悪品も多く、海外メーカーが扱うミニカーの方が人気がありました。

 そこでトミカは、海外メーカーの製品を参考に、それを上回るミニカー作りを目標にしました。

 トミカがまずこだわったのは、ミニカーのサイズでした。当時のミニカーは、海外で主流だった「1/43」スケールという、乗用車なら全長10cm前後の大きさになる縮尺を採用していたの対し、トミカは縮尺の単位を統一せず、全長約7cm台に収まるサイズに統一しました。この約7cmというサイズは、子供の手のひらに収まることを念頭に置いたサイズとなります。

 そして、ミニカーの造形にも力を入れました。全長7cmと小型サイズながらも、ドアが開閉したり、サスペンョンを装備していたり、クレーン車のクレーンが動いたりなど、細部にこだわりました。この造形は、後に大人にも愛好者を生む下地となりました。

 これに加えて、パッケージ(外箱)の大きさやデザインも統一しました。個々の商品にシリーズ番号を割り振るなど、デザイン面でも商品のイメージを洗練させました。

子供は高級車よりも働く車が好き

 トミカは、子供たちが“面白い”と思う車をチョイスする点でも秀でていました。

 一般的に「かっこいい」と思うミニカーを作ろうとすれば、高級な乗用車をラインナップに多く入れるのが定石かもしれません。しかしトミカの場合は、そうした車をラインナップに入れつつ、従来のミニカーには見られなかった、消防車やパトカー、救急車やゴミ収集車といった「働く車」にも力をいれました。

 たしかに子供にとっては、高級車で遊ぶより、憧れの職業で使われている車の方が魅力的に映るでしょう。「ごっこ遊び」にも使うことができます。子供心を理解し、働く車のラインナップを強化したことが、トミカの成功の一因といえるかもしれません。

 ちなみに、1970~2000年のトミカの売り上げ1位は「日野はしご消防車」、2005~2014の売上トップ5は「ポンプ消防車/白バイ/清掃車/救急車/はしご消防車」だったといいます。消防車は両方に入る人気ぶりです。

トミカ製品で子供に大きな世界観を提供する

 トミカはまた、「世界観」という大きな枠組みも作りました。

 もともとミニカーは、海外で鉄道模型のジオラマを作る際の付属品として生まれたものです。そこでトミカは、ミニカーのルーツを参考にし、駐車場、ガソリンスタンド、商店、ビル、道路など、ミニカーの舞台となる「建築物」や「場所」も発売しました。

 ミニカー単体で商品構成を完結させると、模型のように眺めて、コレクションとして扱う程度の遊び方で終わってしまうでしょう。しかしトミカは、乗用車や働く車が走る街のジオラマのような商品をラインナップに加えることで、子供がミニカーを通して大きな世界を想像しながら遊ぶという、より大きな遊び方を作り出すことに成功したのです。

変わり種のミニカーこそトミカのブランド力

 トミカの成功は、突き詰めれば”経営姿勢”といえるでしょう。ミニカーはサイズが小さい以上、クオリティで圧倒的な技術差はつけにくいため、商品コンセプトや商品ラインナップなどでライバルと差別化する必要があります。

 トミカはこれまで数多くのミニカーと、その関連製品を生み出してきました。その中は、動物運搬車や移動照明車など、ほとんど目にする機会のない、変り種のミニカーも多く見られます。一見すると、一部のファンに向けたマニアックな物作りをしているように見えますが、こうした突飛なアイディアを、長年許容し続ける上層部の姿勢が無ければ、そもそも製品が店の棚に並ぶことはないでしょう。

 トミカの成功の裏には、顧客(子供)が本当に欲しいものを提供し、コンセプトやラインナップで独自の世界観を生み出した工夫がありました。たとえ後発だったとしても、それ以上のものが顧客に提供できれば、先発メーカーを追い抜くことは可能なのです。

 

参考文献
・Neko hobby mook『トミカライフ1970~2005』ネコ・パブリッシング
・中本裕、他『ミニカーコレクションの世界 トミカのすべて』童想舎 1984年
・森山義明監修『トミカ徹底大カタログ』勁文社 1999年

味志 和彦

味志 和彦

佐賀県生まれ。産業技術の研究者を経て雑誌記者など。現在コラムニスト、シナリオライター。

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