2017.08.31 (Thu)

子供たちが熱狂! 懐かしのヒット商品の裏側(第11回)

クレームから始まったガリガリ君の、起死回生の戦略

posted by 味志 和彦

 1981(昭和56)年の発売から30年以上にもわたってロングセラーを続けてきた、かき氷をスティックタイプにした氷菓「ガリガリ君」は、丸刈りの男子が大きな口を開けてアイスを食べているパッケージで馴染みのある商品です。

 ガリガリ君は年間販売実績で、2010年に3億本、2012年にはなんと4億本突破という記録を残しました。ほぼ横ばいということが多い氷菓市場では、驚異的な上昇率です。そのペースアップの要因は、ガリガリ君というガキ大将キャラクターを活用したプロモーション戦略によるものでした。

クレームからのスタートながら救世主に

 ガリガリ君を製造している赤城乳業の歴史は、常に順風満帆であったわけではありません。ガリガリ君は、同社が窮地のときに誕生した商品でした。

 同社は、1964(昭和39)年にカップ入りかき氷「赤城しぐれ」を発売します。当時、かき氷は店で食べるのが当たり前だったため、予想を超えるヒット商品となります。

 しかし、1979(昭和54)年に第二次オイルショックのあおりで生産コストが上昇し、同社を含めた多くの氷菓メーカーが製品を値上げしました。ところが、一部の大手メーカーが価格を据え置いたため、主力商品である赤城しぐれの売れ行きが激減。工場ラインは停止寸前にまでなり、倒産の危機が訪れます。その中、起死回生の商品として登場したのが「ガリガリ君」でした。

 ガリガリ君は、赤城しぐれをスティックタイプにするというアイデアから生まれた商品でした。片手で持てるスティック式にすれば、遊びに夢中になっている子どもが手軽に食べられるので、子どもにヒットするのではという狙いがあったのです。

 当時、スティックタイプのアイスキャンディーは商品化されていましたが、かき氷はありませんでした。最初のガリガリ君は、かき氷をゼリー状に固めた商品として発売されますが、包装袋の中でバラバラになっているというトラブルからクレームが多発します。赤城乳業はこのトラブルを、薄いアイスキャンディーの膜の中に、かき氷を入れるという技術革新でブレイクスルーを達成します。また、技術革新により新しい食感と味わいを作り出したことで、ガリガリ君はクレーム多発から一転、大人気商品となりました。

「気持ち悪い」といわれたキャラクターの再生劇

 ガリガリ君のパッケージデザインは、ガキ大将が豪快にアイスをかじっているイラストが掲載されています。他社の商品は、美味しさや高級感をアピールしたデザインのパッケージがほとんど。しかしガリガリ君は、消費者である子どもの「好奇心」をくすぐるために、あえて垢抜けない昭和30年代のガキ大将をモチーフにしたキャラクターを全面に押し出したのです。ガリガリ君のイラストがヘタウマ調であったことも、消費者に大きなインパクトを残します。

 クレームを克服して販売実績を伸ばしてきたガリガリ君も、1990年代に入るとその伸び率に頭打ちが見えてきました。そこで赤城乳業は、1999(平成11)年に全国の消費者に対して大規模な商品調査を行ないます。

 その結果はガリガリ君のイラストに対して、「歯茎が気持ち悪い」「汗が泥臭い」「田舎臭い」というマイナスイメージが多く、特に若い女性からは、そのイメージから「買わない」という否定的な意見も出てくるほどでした。

 同社はこの調査から、ガリガリ君のリニューアルを2000年に決断します。まずは外部デザイナーを起用してイラストを変更。さらに同社初となるテレビCMを制作し、新しいガリガリ君をアピールしました。これにより認知度は向上し、販売実績も2000年には1億本の大台を突破しています。

リニューアルしてもイメージが向上しない!

 2004年は猛暑でもあったことでアイス・氷菓業界全体が売上を伸ばしたのですが、ある雑誌で行なったキャラクターランキングで、新しいガリガリ君は嫌いの4位にランクインされてしまいます。リニューアルによって販売実績も伸びたのに「なぜ」と同社は頭を抱えます。

 しかし調査を行うと、商品に対しては「好き」という回答が多くなっており、リニューアルの成果は確認できました。そこで同社は、新しく子会社としてガリガリ君プロダクションを設立。漫画雑誌、文具、玩具、イベントとのコラボレーションにより、キャラクターであるガリガリ君のイメージ向上を図ったのです。

 そのコラボレーションはアニメや漫画にとどまらず、SL機関車の運行、温泉リゾートでガリガリ君温泉やその入浴剤販売などまでに発展します。さらにガリガリ君の世界観を深めるために、妹キャラクター「ガリ子ちゃん」も設定しました。商品だけでなく、キャラクターに関する口コミが増え、メディアも取り上げるようになります。これにより初代の「歯茎が気持ち悪い」「汗が泥臭い」「田舎臭い」というマイナスイメージは薄れ、ガリガリ君の元気なイメージが先行するようになったのです。このようなコラボレーション展開から2012年には、ついにガリガリ君は販売実績を4億本にまで伸ばしました。

 始まりは倒産のピンチを救う救世主でしたが、赤城乳業は「かき氷」「ガキ大将」という同社のアイデンティティーを諦めずにブラッシュアップし続けることで、ついには国民的なキャラクターを育成するまでに至ったのです。同社の諦めない姿勢が、いまのガリガリ君という商品とキャラクターを育てたといえるでしょう。

【参考文献】
・遠藤功『ガリガリ君が教える! 赤城乳業のすごい仕事術 』PHP研究所
・ガリガリ君プロダクション 『ガリガリ君 工場見学―アイスキャンディができるまで』汐文社
・遠藤功『言える化 ―「ガリガリ君」の赤城乳業が躍進する秘密』潮出版社
・鈴木政次『スーさんの「ガリガリ君」ヒット術』ワニブックス

【関連記事】
http://www.akagi.com/brand/garigarikun/index.html
http://www.nttcom.co.jp/comzine/no075/long_seller/
https://dentsu-ho.com/articles/1565

味志 和彦

味志 和彦

佐賀県生まれ。産業技術の研究者を経て雑誌記者など。現在コラムニスト、シナリオライター。

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