2016.12.2 (Fri)
他人には聞けないICTの“いま”(第24回)
夜間の回線トラブルがもたらし得る大きな損害2011年の東日本大震災以来、企業の事業継続計画(BCP=Business Continuity Plan)への意識が高まっています。最近では、火山活動の活発化や豪雨、大雪など、自然災害のリスクは増大しているともいわれています。
また企業が事業を継続できなくなるリスクは、自然災害だけにとどまりません。周辺諸国との地政学的リスクもあります。2017年8月には、北朝鮮のミサイル発射によりJアラート(全国瞬時警報システム)が、北海道から長野県までという広範囲で発動。携帯電話やスマートフォンの緊急速報の音が鳴り響いたことは記憶に新しいでしょう。
幸いにも被害などはありませんでしたが、鉄道などの一部の公共交通機関が運転を見合わせる、プロゴルフの試合が中断されるなど企業活動や人々の生活に少なからぬ影響が発生しました。
現代の社会では、さまざまな状況下でも企業が活動を継続するために、インターネットをはじめとした通信網の確保が必須です。
しかしながら、大規模災害時にはインターネットはもちろん、連絡手段として欠かせない固定電話や携帯電話が使用できなくなる可能性があります。
東日本大震災などの自然災害では、スマートフォンなどによる電話回線以外でも利用できるSNSのメッセージ機能やチャットなどを利用して、救助や安否を知らせることができました。それらの経験を踏まえ、2014年には「大規模災害時における公衆無線LANの無料開放に関するガイドライン」が策定されまた。このガイドラインにより、大災害時には通信事業者の協力により、公衆無線LANが無料で提供され、電話回線以外の通信手段の確保の一端を担うことになっています。これにより、災害時という電話回線の不通や混雑が予想されるような状況でも、別のルートで通信が可能です。
大規模災害が発生したとき、自社の活動をいち早く再開するためには、通信網の確保が必要です。しかし、そのような状況下で電話回線などを確保するのは、容易なことではないでしょう。確保が難しいという前提で、電話回線以外の手段を考えておく必要があります。
その1つの方法が、LINE WORKSなどのビジネスチャットと考えられています。ビジネスチャットはスマートフォンのアプリなどでも提供され、平常時にもリアルタイムのメッセージ送信に利用しているビジネスパーソンも多いでしょう。ビジネスチャットの導入は、既読などといった送信相手が受取を確認できるシステムがあるので、メールのように受領を伝える返信という手間を軽減し、情報共有も容易になるなどさまざまなメリットがあります。
ビジネスチャットは、公衆無線LANでも利用できるものもありますので、通常の業務の効率化をするとともに、万が一のために導入を検討すべきでしょう。
災害時でなくても、自社の通信設備や機器のトラブルなどによって通信手段が絶たれると、事業の継続は困難になってしまいます。
電話だけでなくインターネット回線もつながらなければ、メール連絡や、ウェブサイトでの情報収集もままなりません。IP電話などをお客さまの問い合わせ先として外部からの窓口に設定していた場合、電話の機能すら落ちてしまうと、企業の信用を失うという最悪のケースも考えられます。
平時のお客さまとの連絡は、メールなどが主流になりつつありますが、コールセンターといった電話を利用している企業も少なくありません。コールセンターに電話が通じないとなれば、企業の信用は低下するでしょう。ネット全盛の現代でも、電話がつながるということが企業にとっては重要なことなのです。
企業にとって、事業の妨げとなる電話の復旧は急ぎたいものです。平日のビジネスタイムなら通信事業者も対応可能ですが、休日・深夜や早朝という時間帯は、サービス外ということもありえます。コールセンターなどは、休日や夜間などにもお客さまへの対応時間を拡大しているケースが多くあるでしょう。企業は、ビジネスタイム以外でも早急な対応を必要とする場合があるのです。
それらに備え、IP電話を利用している場合は24時間のサポートを提供するベンダーと契約しておくことが大切でしょう。自社の信用を確保するためにも、電話は事業継続で大切なものと考えておくべきです。電話がつながらないということから、顧客の信頼を失う、ビジネスチャンスを逃すなどで、事業の継続に影響を及ぼすということを防ぐためにも、サポートの充実したベンダーを活用して、平時・災害時ともビジネスをしっかりと遂行する備えを整えておきましょう。
※掲載している情報は、記事執筆時点(2018年2月19日)のものです。