平成になってから流行が見られるようになった感染症が「麻しん」(ましん)と「風しん」です。麻しんとは「はしか」のことです。平成20年代になると集団感染などのニュースがいくつか報じられたのと、予防接種の必要性を厚生労働省が告知したため、記憶にのこっている人が多いかもしれません。
麻しん、風しんとも予防接種の必要性が告知されている理由は、重症化した場合に後遺症が残ってしまうような合併症を起こす恐れがあるからです。どちらとも強い感染力を持つため、オフィスなどでは集団感染する危険性が高いとされています。そのような事態に陥らないためにも、知識や予防方法によってビジネスへのリスクを低減させましょう。
非常に強い感染力、無防備は危険!
麻しんと風しんの特徴は、感染力が強いことです。風しんは風邪と同様に飛沫(くしゃみで飛ぶツバなど)で感染しますが、麻しんはさらに接触感染と空気感染が加わるため、同じ施設を同じ日に利用した程度でも感染する可能性があります(2016年8月に起きた関西国際空港での集団感染など)。また厚生労働省によると、麻しんは免疫を持っていない人が感染すると、ほぼ100%の確率で発症するといわれています。
もしも麻しんや風しんがオフィスで流行してしまうと、業務に支障をきたすことが予想されます。このような事態を防ぐため、2つの感染症の具体的な症状と予防方法を紹介します。
合併症もある症状。不用意な行動が感染拡大へ
厚生労働省によると、風しんは感染してから約2~3週間後に、発熱や発しん、リンパ節の腫れなどの症状があらわれます。大人がかかると、発熱や発しんの発症期間が子どもに比べて長く、関節痛もひどいそうです。まれに脳炎、血小板減少性紫斑病などの合併症が発生することもあります。また感染の恐れがある期間は、発しんが出る2~3日前から出た後5日くらいまでです。
また妊婦が感染した場合は、体内の子どもの目、耳、心臓などに障がいが出る可能性があるため、妊婦は特に注意が必要になります。
麻しん(はしか)ですが、こちらは感染してから約10日後に熱、咳、鼻水といった風邪のような症状が現れます。熱が2~3日続いた後に、39度以上の高熱と発しんがあらわれます。肺炎や中耳炎を合併しやすく、1,000人に1人の割合で脳炎を起こす可能性があると厚生労働省はしています。死亡率は、入院や通院などの治療を受けても1,000人に1人という侮れない感染症です。
その他にも麻しんには合併症があります。10万人に1人という低い割合ですが、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)と呼ばれる中枢神経疾患を発症することがあり、こちらは成人よりも学童期の発症率が高いそうです。
もし発熱や発しんなどの症状により風しん、麻しんの疑いがある場合は、早めに医療機関で受診するべきです。その際に、大阪府などの自治体では注意があると述べています。医療機関を訪れる前に、事前に電話で風しん・麻しんの疑いがあることを伝え、その後は指示に従うように、としています。これは両者の感染力が強いため、待合室で待っている時に周囲へ感染させる恐れがあるからです。
マスクでは予防しきれない!ワクチン接種が有効
風しんと麻しんの予防方法はマスク、うがい、手洗いといった風邪に準じた方法が推奨されていますが、厚生労働省ではこれだけでは完全としていません。これに加え高い確率で予防できるワクチンの接種をすすめています。
厚生労働省が予防接種を告知している理由は、20~40代の人がワクチンを摂取していない可能性が高いからです。麻しんの予防接種は、2008(平成20)年から5年間に、学童期の1日目のワクチン接種に加えて、中学1年生相当、高校3年生相当の年代に2回目のワクチン接種を受ける機会を設けました。風しんのほうは、1990(平成2)年4月2日以降に生まれた人は2回のワクチン接種を実施しています。いずれか、もしくは両方の集団予防接種を受けていない可能性があるのが、20~40代なのです。
そのワクチン接種ですが、現在は2種類を同時に行なえる「麻しん・風しん混合ワクチン(MR)」というものがありますので、一度で済ますことが可能です。
また、個人で風しんワクチンや麻しん・風しん混合ワクチン(MR)を接種する場合は、自治体からの助成金を受けられる場合があります。助成の有無や、条件などの詳細については、自治体へ問い合わせると良いでしょう。
オフィスでの集団予防接種を実施した企業
このような麻しん・風しんに対して、企業で予防に乗り出したのが、IT企業のサイバーエージェントでした。2013(平成25)年に麻しん・風しん混合ワクチン(MR)の集団予防接種を導入しています。社内に麻しん・風しんの流行世代といわれている20~40代の社員が多いため、全社員を対象に会議室に集めて実施したといいます。ワクチンの費用は会社側で負担したそうです。
個人で予防接種を受ける場合、通院による時間のロスが大きく、会社側もその間は貴重な人手を失っている状態です。オフィスに医師・看護師が訪れて集団予防接種を実施すれば、短時間で大勢に接種することができます。オフィスでの流行リスクの低減と、福利厚生を充実させる手段として、検討してみる余地はあります。
企業が感染症の集団感染に考慮することは、業務のリスクを取り除く作業の1つでもあります。インフルエンザだけではなく、麻しん・風しんなどの感染症についても情報収集し、集団感染を予防する対策を検討しておきましょう。
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http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/measles/index.html
http://www.nih.go.jp/niid/ja/rubellaqa.html
http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/ma/measles.html
https://www.nhk.or.jp/seikatsu-blog/400/157102.html
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