いま、特に中小企業で課題となっているのが、「定型業務や雑務に時間を取られてしまい、思考を要する業務に時間が割けない状況」です。接客担当が申請書の入力業務に多くの時間を割かなければならなかったり、営業が発注書や請求書を基幹システムに転記する作業にかかりきりになってしまったり......。さらに少子高齢化による生産力人口の減少や採用難が重なり、兼任業務、単純作業、雑務などの負荷が、従業員により重くのしかかるようになっています。限られた人材の力を定型業務ではなく、新たな商品企画の立案など、より高度な業務にシフトさせるためにはどうすればよいのでしょうか。
従業員を雑務から解放するRPAツール
人材不足をテクノロジーによってサポートする手法として近年注目を集めているのが、RPA(Robotic Process Automation /ロボティック・プロセス・オートメーション)ツールです。RPAとは、パソコンを使った定型作業を、ソフトウェアがあたかもロボットのように自動で処理してくれる技術や枠組みのことです。例えば、営業が入力した「発注書」の内容を、作業者が使用する「指示書」に転記し、管理番号を付けて、指定されたフォルダに格納する――。こういった定型作業を、RPAツールを使うことによって自動で実行できます。
他にも、「伝票や申請書などの書類を社内の基幹システムに取り込む・抽出する作業」や、「発注書・出荷伝票などから請求書を自動作成する作業」、「従業員から申請された通勤ルートと、領収書にある交通費を突き合わせる作業」など、経理、人事、労務をはじめとするあらゆるバックオフィス業務などを、ツールによって効率的に行うことが可能です。
データの入力や転記、エラーの抽出、確認作業などといった人手や時間のボリュームを要する定型業務は、いまや人ではなく、RPAツールで実行する時代になりつつあるのです。人手不足とともに、あらゆるビジネスの複雑化・高度化が叫ばれて久しいなか、RPAの導入・活用は、今後、多くの企業の人材不足を解消し、成長を加速させるための鍵となっていく可能性を秘めています。
中小企業での導入も始まっている
RPAを活用しているのは、大企業だけではありません。中小企業の導入も進んでいます。ある設備系の中小企業は、RPAを導入したことで、人が作業していたときの約3倍のスピードで受注処理が行えるようになったと公表しました。別のある中小企業では、経理部門の人材が5日かけて行っていた業務をRPAで1日に短縮できたと報告しています。その他、従業員40名程度の食品系企業でRPAを導入したところ、年間数十時間の業務削減効果があることがわかり、「なにより『従業員がストレスから解放されて喜んでいること』『ヒューマンエラーがなくなったこと』がプラスになった」というコメントも。こうした効果以外にも、「リードタイムの減少によって顧客満足度が上昇した」「未着手業務に着手できた」「お客さまのケアに多くの時間を割けるようになった」など、さまざまな効果が報告されています。
「RPAを導入したいが、専門家が必要では」と考える人もいるでしょう。しかしRPAを動かす自動化プログラムは「シナリオ」と呼ばれるメニューを組み合わせることで作成できるため、必ずしも専門家が必要なわけではありません。中小企業が導入しやすい仕組み、価格、規模感のRPAツールも、数多くリリースされています。
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RPAの導入を成功させるポイントとは?
RPAの導入を成功させるには、「RPAに行わせる作業内容を詳細に検討すること」がポイントのひとつです。RPAに担わせたい定型業務の周辺に、どのような業務が隠れているのか、どのようなフローで一連の業務が遂行されているのか、関連性のあるデータやソリューションはないか、人の目で見て判断をしなければならないイレギュラーなデータはないか、など、業務を俯瞰的に見渡して「RPAの稼働を想定した新しい業務フロー」を考えることが欠かせません。これを怠ると、例えば「読み取れないデータが多く思うように機能しなかった」、「RPAの前後のフローで、人の手で行わなければならない作業が多く発生してしまった」などのズレが生じることも。しかし、新しい業務フローの想定をしっかり行っておけば、働き方改革を促すような、これまでにない業務フローを生み出すことにもつながります。
RPAの選定から導入・運用を自社だけで進めるのが不安であれば、外部サービスに委託する方法があります。導入方法も全社一斉で入れる方式のほか、限られた部署・業務で試験導入するスモールスタート方式もあります。自社の規模や予算、目的に合ったサービスで始めましょう。
多くの人材を定型業務から解放し、より高度でクリエイティブな業務にシフトさせることができるRPAツールは、人手不足解消はもちろん、企業の発展を促す手段のひとつともなるのです。
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自治体DXの推進には、先行している自治体の事例が参考になります。ここでご紹介するのは、自治体のDX事例資料をおまとめしたセットです。何を導入し、業務がどの程度効率化できたのか、ぜひご自分の目で確かめてみてください。
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