2019.06.07 (Fri)

防災ICTのツボ(第1回)

被災者支援に有効なICTソリューション選びのポイント

posted by 岩元 直久

 地震、水害、火災といった自然災害を被った地方自治体には、当座の応急措置だけでなく、長期間にわたる住民の生活再建支援が求められます。ICTが発達した現在、多様なICTソリューションが被災した自治体の業務を手助けして、住民への支援を迅速に実施できるようになってきています。

 自治体が被災者生活再建の業務をスムーズに進めるために導入するICTソリューションには、どのような機能やシステム構成が求められるのでしょうか。ここでは、すでに200を超える自治体が導入しているNTT東日本の「Bizひかりクラウド 被災者生活再建支援システム」を例に、ICTソリューション選びのポイントを見ていきます。

業務のボトルネックの解決をサポートできる機能をチェック

 ICTソリューションは、自治体の被災者生活再建支援業務をスムーズで公正公平に提供できるようにするために導入するものです。すなわち、被災者生活再建支援に向けて実施する業務のボトルネックを解消するための機能が、きちんと盛り込まれているICTソリューションを選ぶ必要があります。

 業務のボトルネックは大きく4つあります。「(1)建物被害認定調査の調査員を確保できない」「(2)調査票のデータ化が大変」「(3)り災証明書の発行に時間がかかる」「(4)支援対象者の特定や公正公平な支援が難しい」という4つが多くの自治体に共通の課題です。

 (1)の「調査員の確保」に向けては、「Bizひかりクラウド 被災者生活再建支援システム」では未経験の職員にも行いやすい手法が用意されています。フローチャートで簡単に状況を選択していくことで、被害認定結果を導ける手法です。簡単なトレーニングを受ければ未経験者も調査が行えるようになり、調査員の確保がしやすくなります。また調査票の内容は、内閣府のガイドラインに基づいて標準化しており、これまでの災害で利用された経験からブラッシュアップが図られています。

 (2)の「調査票のデータ化」も大きな課題です。大規模災害の場合、大量の調査票が発生します。「Bizひかりクラウド 被災者生活再建支援システム」では大量の調査票をスキャナーで一括登録できる仕組みを用意する他、中小規模の災害では個別にデータ登録が可能な柔軟性を備えます。さらにタブレットやスマートフォンを現地に持参して、アプリケーション上からその場で調査結果をデータ化して登録する仕組みも用意しています。

 (3)の「り災証明書の発行」では、発行に必要な「住民」「家屋」「被害」の3つの情報の「名寄せ」に苦労するケースがほとんどです。「Bizひかりクラウド 被災者生活再建支援システム」では、二次元バーコードを用いて位置情報をCSVデータ化し、それを一気にシステムの中に取り込めるような仕組みも別途用意しており、位置情報を核として迅速な情報の収集が可能になります。

 (4)の「公正公平な支援」に対して、「Bizひかりクラウド 被災者生活再建支援システム」では収集した情報を一元管理できる被災者台帳の作成で対応します。1つの被災者台帳をすべての情報の中心にすれば、多様な支援業務の提供状況や進捗状況がひと目で分かります。子どもに向けたランドセルの支給状況や高齢者の健康相談の実施状況など、市町村独自で定めるり災証明書の発行と直接の関係がない支援業務についてもICTソリューションで一括して管理できるわけです。

応援・受援がスムーズになる「標準化」の推進

 ここまでICTソリューションに求められる機能面を見てきました。機能が充実していることはもちろんですが、実際に導入する際には「標準化」の考え方が適用されていることも選択での重要なポイントです。調査の内容が標準化されていることにより、実は副次的なメリットがあるのです。

 標準化された調査票やシステムの利用によって、他の自治体からの応援に対して受援する体制を整えやすくなります。災害時には、被災した自治体の職員だけですべての業務をこなすのは現実的ではありません。他の自治体からの応援を受けて業務を推進する際に、建物被害認定調査、り災証明書発行、被災者台帳の作成・管理などの業務が標準化されていると有効に機能するのです。

 標準化した同じICTソリューションを利用していると、研修プログラムなどによってシステムの利用方法から業務の推進方法までのノウハウが自治体の間で自然と共有されます。ある災害で業務を進めた経験を持つ自治体職員が、異なる災害で被災した自治体に応援に駆けつけたときに、同じICTソリューションを利用していたことから応援・受援をスムーズに行えました。「Bizひかりクラウド 被災者生活再建支援システム」を導入している自治体の間でも、そういった複数の実例があります。

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全国自治体の共同利用ともいえるクラウド版がお勧め

 システム構成の柔軟性もICTソリューションでは重要なポイントです。提供形態には、主に個別の自治体が導入する「クライアントサーバー版」、都道府県などの自治体が都道府県単位で共同導入する「共同利用版」、さらにクラウドにあるデータセンターのサーバーで運用する「クラウド版」の3種類があります。災害は広域にわたることもあり被災時の確実な稼働を考えると、物理的に離れたデータセンターで運用されるクラウドサービスの利用がBCP(事業継続計画)の観点からはおすすめです。

 クラウド版である「Bizひかりクラウド 被災者生活再建支援システム」ならサーバーなどを設置・設定するのと比べて導入期間が短く、費用体系も柔軟です。クラウドサービスのメリットを生かし、災害時にIDを増やすことにより、平時は最低限のコストで運用できます。サーバーなどの設置や設定が不要ですぐに利用できる他、人口規模に合わせた料金体系も用意。2018年10月のクラウドサービスの料金改定により、価格を大幅に低減し、リーズナブルになっています。NTTグループのデータセンターとクラウド基盤を利用するので、安心・安全への対応も整っています。さらに総合行政ネットワーク「LGWAN」を利用したセキュアなアプリケーションサービスとして提供していることから、個人情報保護への備えも十分です。

 被災者生活再建支援にICTソリューションを活用するには、システムの機能面だけでなく、応援・受援といった人材の流動性も含めた運用面も視野に入れて選定すると効果があります。災害に備えて導入するICTソリューションは、導入してあればよいというものではありません。ICTソリューションの選択から運用面の課題まで精査して平時のうちに対応しておくことも、地方自治体に求められる災害対策の1つでしょう。

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岩元 直久

岩元 直久

日経BP社でIT、ネットワーク、パソコンなどの分野の雑誌、ウェブ媒体の記者、デスクを歴任。モバイル分野については、黎明期から取材・執筆を続けている。フリーランスとして独立後は、モバイル、ネットワークなどITを中心に取材・執筆を行う。

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