2016.07.04 (Mon)

まさかのために備える知識(第5回)

被災地事例に学ぶクラウドの有用性

posted by 株式会社アークコミュニケーションズ

 未曾有の被害を出した東日本大震災。なかでも原子力発電所の事故により、住民の移動・避難はもちろん、役場の移転も強いられたのはまだまだ記憶に新しいでしょう。そんな混乱のなかで、役に立ったのがクラウドサービスでした。一部の町村では、震災による直接被害はあまり受けずに済んだものの、原発事故によりすべての住民が避難しなければならず、出張所を開設、役場機能の復旧を開始しました。

 ここでは、震災のため移転した役場の機能の復旧方法と、将来役場が戻ったときのためのシステム整備の手法から、リスクに備えた事業継続の方法をみてみましょう。

シンクライアントを活用した自治体

 役場機能を置いた際にまず取り組んだのが、全住民の安否・所在確認でした。しかし、住民は出張所の周辺をはじめ、県内や全国各地に避難していました。そのため、職員総出で所在確認に追われることになったのです。加えて、震災関連をはじめとした各種証明書などの発行の依頼が殺到し、役場から持ち出せたパソコンなどの機器だけでは、町民の要望にこたえることができませんでした。

 そんな仮役場の情報システムの復旧に役立ったのがクラウドなのです。なかでも、サーバー側のアプリケーションを利用できるシンクライアントは、大きな力を発揮しました。震災前からその自治体では業務の効率化やコスト削減の観点から、シンクライアントシステムを導入。それが功を奏して、限定された端末で数多くの処理が可能となり、町民サービスを順調に処理することができたのです。

住民サービスにICTを利用していた自治体

 一方、震災前からいち早くICT技術を導入していた自治体もありました。四方を山に囲まれたその村の住民は、少ない平地に点在して暮らしていました。そのため、住民サービスにICTを活用、1998年には全世帯にテレビ電話を設置し、遠隔診療などの実験を行っています。また、2010年には全世帯に光ケーブルを敷設。全国有数のICT活用自治体となっていたのです。

 仮設の出張所では役場から持ち出したICT機器が稼働しないなどの問題が発生するものの、ICT化のおかげで通信環境の整備を待って業務を再開することができました。そして、その自治体は、将来の帰村に向けてさらなるシステムの整備を開始。役場内のサーバーにあるデータをクラウド上に保存し、役所が移転してもすぐに機能を復活できるようにしたのです。また、クラウド化することにより、いざというときにデータが守られることはもちろん、煩雑な運用保守から解放され、業務がスリム化されました。

事業継続のためのクラウド化

 東日本大震災のような災害は、いつどこで再び起こってもおかしくないといわれています。そんないざというときでも事業を継続させるためには「リスクマネジメント」の手法が必要となります。リスクマネジメントには、(1)リスクの発生自体を抑える=回避、(2)リスクを発生させても最低限の被害に抑える=低減、(3)リスクを保険などでカバーする=共有(転嫁)、(4)リスクを許容範囲として受容する=保有の4つの対策があるとされています。

 さて、昨今では顧客情報など、「データ」を所有していない企業はありません。しかし、データは従前のリスクマネジメントにおける「低減」や「共有」「保有」では対処しきれない部分が多くあります。データは消失したら、元には戻せないのです。そこで企業の財産であるデータを守るため、これらの事象を参考にし、クラウド化の手法をとることをオススメします。クラウド化はデータの保全に加えて、シンクライアントを活用することで、ICT資産の削減や管理保守の手間を省くことも可能となるからです。

プロの力を借りてクラウド化

 そうはいっても、データを明日からサーバー運営企業に預かってもらう、というわけにはいきません。現状のシステムからの構成変更がどの程度発生するのか、毎日のバックアップにはどれくらいの時間を要するのか、いざデータを復元したいときにクラウドにアクセスできるのか、など考えるべきことは多くあります。

 そこで、クラウドを利用するサーバー運営企業のサポート体制をしっかりと見極めることから始めましょう。たとえば、トラブル発生時に原因を特定するのは利用者かサーバー運営企業のどちらが行うのか、ネットワークに問題がある場合にはどのような対応をしてもらえるのかなどです。サポートの観点から各社のサービスを比較し、リスクに備えてください。

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