2016.02.01 (Mon)
経営者をトラブルから守る法律知識と手続き(第8回)
新規販路開拓にこれを活用してみては?
1.新規販路開拓の重要性
中小企業の取引構造の特徴として、取引先が古くから付き合いがある企業だけであるなど長期間「固定化」していることがあげられます。もちろん昔からの取引先を大切にすることは重要ですが、時間とともに先方企業や自社の競合企業の状況も変化していくため、従来と変わらない受注額を今後も維持していけるかどうかはわかりません。
特に景気低迷が長く続く昨今の状況においては、現在の取引先とも今後も今までどおりの取引ができなくなるという可能性もなくはないでしょう。
自社の取引構造を盤石なものにしていくためには、既存顧客の十分なフォローとともに新規顧客獲得に向けた計画的かつ継続的な取り組みが不可欠といえます。
2.紹介による販路開拓
新規顧客を獲得する方法として最も一般的なのは、「既存取引先」からの紹介でしょう。多くの経営者の方は既存取引先に新規の見込み客の紹介を依頼したことがあるかもしれません。自社のことを十分に理解してくれている先からの紹介ですので、紹介さえ受けることができれば、実際の受注に結びつく確率も高いでしょう。
紹介はあくまでも取引先の「好意」によるものですから、自社の思惑通りに紹介が進むとは限りません。
しかし既存取引先からの販路開拓は範囲こそ限定されているものの、即効性が期待できる方法です。
・日頃から既存取引先との親交を深めておく。
・自社の商品、強み、経営理念などについて十分に理解してもらう。
・既存取引先に自社の会社案内や商品案内などをあらかじめ渡しておき、新規見込み客に気軽に渡してもらえるようにする。
などの方策により、スムーズな紹介を促し、紹介してもらえるように最善の手は打っておくことは必要かもしれません。
3.自社独自による販路開拓
次に考えられるのは、自らが主体となって新規顧客を開拓する方法です。この方法は、独自のアプローチで販売見込みを発掘するところから始める必要があります。
大企業であれば、これらの活動は営業のための専任部署で恒常的に行われています。しかし中小企業においてはこの部分が仕組みとして確立しているケースは意外と少ないようです。その主な理由は、自社独自の新規顧客獲得の重要性は認識していながらも、「何から始めたらいいかわからない」、「新規営業に割ける人員がいない」などの理由で十分な取り組みがなされていないことなどがあります。
何かの縁で知り合いになった販売見込み先について、親しくなり新規受注につながることはあっても、「いつまでに何社の販売見込み先を獲得する」、「その中で何社と実際の受注につなげる」といった明確な方針は立てることは難しいことかもしれません。
4.経験やノウハウ豊富な団体の運営するマッチングサービス
さて、ここ十余年の情報環境の変化は目まぐるしいものがあり、上に挙げてきた新規開拓もそのありようを大きく変えています。ごく最近でいえば、twitterなどのミニブログで情報拡散をはかり、facebookなどのSNSを通じて人脈を固め直すこともひとつの営業手法におけるブームといえます。
そういう新手法についてゆくことは非常に重要ですが、ここでご紹介するのは、またそれとも一味異なるもの。皆さんも名前は聞いたことがあるような経験と実績ある機関が行っているマッチングサービスの利用です。若い経営者の皆さんにとっては、盲点になっているかもしれませんが、様々な機関がこのマッチングサービスを運用しています。
マッチングサービスとは「買いたい」、「売りたい」、「こんな商品を作って欲しい」、「新事業進出のパートナーが欲しい」といった事業ニーズについて、ニーズに適合する企業を紹介してもらうサービスです。
運営主体は、民間金融機関や日本政策金融公庫、公的な中小企業支援機関、商工会議所など。これらの運営機関が主催する会員制度に加入し、自社のニーズ、企業情報などを登録することでサービスを受けることができます。
(主なマッチングサービス)
○「ビジネス・マッチング・ステーション」(中小企業庁)
http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/BizMatchStation.htm
(財)全国中小企業取引振興協会と各都道府県の下請企業振興協会が連携して運営するサイト。受注希望や発注希望をインターネットで直接登録できる(審査あり)。利用料金は無料。各都道府県協会のサポートを個別に受けることもできる。
○「ザ・ビジネスモール「the 商談モール」(商工会議所)
http://www.b-mall.ne.jp/index.aspx#about-bmall
全国の商工会議所が共同運営する企業情報サイト。商工会議所に入会している企業は無料で利用できる。より高度な機能が利用できる有料の「プレミアムメンバーサービス」もある。
○「ビジネスマッチングゲート」(日本政策金融公庫)
https://match.k.jfc.go.jp/u_user_login_disp.do
日本政策金融公庫の取引先が登録できるマッチングサイト。公庫と取引がある個人や法人は無料で登録できる。登録者以外でも情報を閲覧することは可能であるため、不特定多数の個人や法人に訴求することができる。
■マッチングサービスの仕組み
これらのマッチングサービスは、インターネット上で登録することができ、登録完了後には参加企業の情報についてニーズ毎や地域毎などに検索することができます。
マッチングサービス利用の主なメリットとしては以下の3点があげられます。
(1)会員企業の様々なニーズを手軽に検索できる
マッチングサービスでは膨大な数のニーズ情報を検索することができます。通常の営業では見込み先のニーズ発掘から始める必要がありますが、マッチングサービスではそのニーズがリスト化されています。
(2)商談の成功確率をあげることができる
マッチングサービスに「買いたい」という情報を登録している企業は、条件さえあえば実際に取引したいと考えています。飛び込み営業では担当者に会うことさえ難しくても、マッチングサービスを使えば少なくとも商談の入り口に立つことは可能です。
(3)先方からの申し出が期待できる
マッチングサービスにはこれまで自社と全く関係のなかった多数の企業が登録しています。自社のニーズ情報や会社情報を閲覧して興味を持ってくれた企業から、思わぬ商談のアプローチが舞い込むこともあります。
商工会議所は、これに限らず、ビジネスの起点、トラブル解決の起点となっていて、地域の経済で重要な役割を担っています。思い悩んだり、行き詰まったりした場合に利用してみてはいかがでしょうか。
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