コロナ禍によってリモートワークが普及し、企業では業務のペーパーレス化が急速に進んでいます。その一方、紙文化が根強く残る自治体では、ペーパーレス化はあまり進んでいないようです。しかし、紙文化の自治体こそペーパーレス化による業務効率化とコスト削減のメリットは大きくなります。今回は自治体がペーパーレス化を進めるべき理由とメリットについて、事例を交えながら解説します。
企業ではペーパーレス化が進む一方で、自治体では進んでいない
企業ではいま、業務の電子化・ペーパーレス化が進んでいるようです。
ペーパーロジック社の調査によると、東京に本社のある企業の72.3%が、2021年にペーパーレス化を推進したと回答。そのうち約80%は、2022年度にさらなるペーパーレス化を進めるため、ペーパーレス化システム導入のための予算配分を予定・検討していると答えました。
しかし、自治体においてペーパーレス化はまだ進んでいないようです。ある調査会社の調べによると、自治体における電子決裁・電子文書管理の導入率、および無線化・ペーパーレス会議の導入率は2~3割程度に留まっており、導入予定という回答も低い割合になっています。
自治体がペーパーレス化することのメリットとは
現時点では自治体のペーパーレス化はあまり進んでいませんが、業務効率化のためも今後は推進すべきでしょう。
たとえば、文書の管理も、紙であれば一つ一つ印刷してファイリングする必要があり、時間も労力もかかるうえ、保管スペースも確保しなければなりません。離れた庁舎に文書がある場合は、その文書をその庁舎から送ってもらう作業やコストも発生します。そもそも、どこにどの文書があるか管理できていない場合、膨大なファイルの中から特定の文書を探さなければいけません。
さまざまな申請書類を住民から受け取る窓口業務でも、職員は紙を見ながらデータを打ち込むため、作業に時間がかかり、打ち間違えのリスクも高まります。住民側も、複数の書類に何度も住所や氏名を記入しなければいけないことで申請に時間がかかり、窓口が混雑するといったことにもつながります。
さらにいえば、紙資料は火災、大雨、地震などの災害時に文書が破損・消失してしまうリスクがあります。
しかし、ペーパーレス化すれば、保管スペースの問題が解決し、探したい文書をすぐ見つけられる、窓口での申請時の労力や時間が減る、災害から文書を守れる......といった、さまざまなメリットがあります。職員の業務負担の削減とともに、住民サービスの質の向上にもつながります。
特に期待できる効果が、コスト削減です。たとえば、1万箱相当の文書を保管するとした場合、月々で175万円、年間だと2,100万円かかる計算となります(オフィスの平均賃料を1万円/坪として試算した場合)。ペーパーレス化することで、こうしたコストを削減できることになります。
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ペーパーレス化ですでに成果を出している自治体もある
いくつかの自治体では、すでにペーパーレス化によって成果を出しています。
ある地方都市では、ワードやエクセルなどで公文書を作って印刷していたものの、紙の文書が書庫に溜まり、保管スペースが限界に達する恐れがありました。過去の文書の開示請求があった場合も、探すのに苦労していたといいます。
そこでペーパーレス化を進めたところ、文書をコピーする量が減り、コストの削減に成功。さらに、電子決裁もできるようになったことで、関係者に書類を送ることなく、決裁や承認が得られるようになりました。
別の自治体では、庁内会議のペーパーレス化を実施したところ、会議資料に使う紙を1万枚以上削減できました。それだけでなく、何時間もかかっていた資料の印刷、製本などの負担が減り、資料の修正や差し替えも効率化されたといいます。
政府も現在、「行政のデジタル化の徹底」「政府ネットワーク環境の再構築」「地方公共団体のデジタル化」に取り組む方針を示しています。こうした国の構想が進むと、必然的にペーパーレス化が進み、自治体もそれに対応することが求められます。いまのうちから計画的にペーパーレス化を進めることが重要といえるでしょう。
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