大坂冬の陣で築いた砦の名を取った大河ドラマ『真田丸』で話題になった戦国武将が、真田幸村(信繁)です。1614年の大坂冬の陣での戦いぶりを見た敵将の島津家久から、「日本一のつわもの」と評されるほどの勇猛さでした。それらの語り草によって、数ある戦国武将の中でもとりわけ人気の高い武将のひとりとなっています。その幸村が残した名言は、現代の企業経営や部下の管理など、リーダーシップ論に通じるものが数多くあります。
強い性根によって発揮されたリーダーシップ
幸村は、利害関係や裏切りが横行した戦国時代にも関わらず、義を重んじた人物として知られています。その義を重んじた人格から発言された数々の言葉が、名言となっています。
その名言の1つが「いざとなれば損得を度外視できるその性根、世のなかに、それを持つ人間ほど怖い相手はない」です。
この名言は、大坂冬の陣後に徳川方への寝返りを持ちかけられたときに発したとされています。人生において、損得だけが重要なものではない。強い意志(性根)から行動できる人は、想像以上の能力を発揮する、と幸村は考えていました。
幸村自身も、1615年の大坂夏の陣で、徳川方についたほうが明らかに得だったにも関わらず、義を重んじて豊臣方につき、徳川軍を脅かす奮戦を見せました。その奮戦ぶりは家康からも一目置かれるほどのものだったのです。
損得なしで行動することを説いたこの名言は、ビジネス・シーンでも教訓となります。人は、自分のこと、家族のことを第一にしたいという思いから、どうしても目先の得を選びがちです。
しかしビジネスにおいては、公共の利益や、お客さまの安全を配慮するなどで、安易に得を選べない場合があります。そこで損を選択するには、強い意志がないとできません。強い意志がなければ、お客さまやステークホルダーが納得するような理由を説明できないでしょう。強い意志に基づいた決断ならば、最終的に周囲から信頼を得ることができるはずです。
幸村は部下とのコミュニケーションが良好だった
幸村はまた、「部下ほど難しい存在はない」という上司と部下の人間関係に関する名言を残しています。
関が原の戦いで敗れた後、幸村は和歌山県の九度山に幽閉されていました。豊臣家が再び徳川家と戦をするために、幸村へ大坂城に参じるよう命じます。大坂城に向かった幸村の元には多くの家臣が集まりました。それは幸村が、つねに部下への配慮を欠かさなかった人物だったからです。
上司が部下と接するときは、つねに緊張を持って真剣に向き合わなければならないと幸村は考えていました。それまで忠誠を誓っていても、叱責の仕方によっては上司へ不信感を抱くようになります。また上司が部下の忠告に耳を貸さないようになると、離れていってしまうのです。その点を理解していた幸村は、緊張や配慮を怠らなかったのです。それによって部下は、大切にしてくれる、忠告を聞き入れてくれる幸村に、大きな信頼を寄せたのでしょう。
現在においても、部下と上司の間で良好な関係を保つことは難しいものです。部下にアドバイスをするにも、厳しすぎても甘すぎても成長に繋がりません。また部下の忠告にぞんざいな返事をしていると、部下は心が離れてしまい、退職を考えるようになるかもしれません。
戦国武将もビジネスリーダーも、1人では業績を上げることはできません。また強い意志がなければ、周囲からの理解も得られません。幸村は豊臣家の恩に報いるという義と、部下の重要性を知っていたから、大坂冬の陣・夏の陣で想像以上の戦いぶりを発揮できたのでしょう。
【参考文献】
大杉学『覚悟のススメ 真田幸村の教え』総合法令出版
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