テレワークとさぼり
テレワークでさぼりが発生しやすい?
事例や防止方法を紹介!
テレワーク時には、従業員の働いている場所が別々のため、「さぼり」が発生しているのではないかと疑念を抱いている管理職の方も一定数いるのではないでしょうか。
たしかにテレワークではさぼりが発生しやすいイメージもあり、テレワーク導入前の企業であればなおさら、さぼりがどのくらい発生するのかが気になるところです。
テレワークでのさぼりを予防しながら、従業員との信頼関係を高めることができれば生産性の向上が期待できるでしょう。
今回の記事ではテレワーク中のさぼりについて解説していきます。
1. テレワークでさぼりは発生するのか?
テレワークでは、管理者の目が十分行き届かなくなるため、従業員のモラル低下や業務へのモチベーションの状況によっては、さぼりが発生する可能性があります。
インターネット上ではテレワーク中のパソコンの操作記録で「マウスを5分以上動かしていないとさぼりとみなす」ということが議論になるなど、テレワーク中のさぼりについて多くの関心が寄せられています。
この章では、2020年から普及率が高まったテレワークにおける、さぼりに関する調査結果を踏まえ現状を見ていきます。
①管理職は部下がさぼらないか不安
2020年3月に実施されたリクルートマネジメントソリューションズの調査によると、管理職の約56%が「部下が在宅勤務中にさぼらないか」と不安を抱えているそうです。一方、管理職の約71%は在宅勤務を「部下の自己管理の習慣をつける、いい機会だと思う」と期待もしています。
また、2020年10月に実施されたヌーラボの調査では、年代が高いほど「テレワーク時、チームメンバーや上司・部下などに対してさぼっているのでは、と思ってしまう」と回答する率が高いとのことです。
このように、テレワークの導入前・導入中それぞれで管理職は部下がさぼるのではないか? という不安を多く抱えています。
②在宅勤務でさぼったことがある人は多い
2020年12月に公開されたマイナビニュースの調査記事によると、「テレワーク中に仕事をさぼったことがありますか?」の質問に「ある」と回答した人は74%です。
さぼりの内容は「動画サイトを視聴していた」「漫画を読んだりゲームしていた」などの普段のオフィスでは起こりにくいものから、「昼寝した」「お菓子を食べてしまった」「コーヒーブレイク」などのオフィス勤務でも制度次第では問題ないものや、「子どもが泣いてしまったので面倒を見ていた」などテレワークでの在宅勤務ならではの家庭事情によるものまで幅広くありました。
また、「サボったことが上司や同僚に発覚したことはありますか?」の質問に「ある」と回答した人は32%でした。
在宅勤務だけでなく、カフェやモバイルワークなどもテレワークなので、業務時間中に外出した際についでに個人的な用事に時間を使ってしまう、などのケースもあります。
その他、想定されるさぼりの内容は以下です。
- テレビやラジオを視聴しながらの仕事
- ネットサーフィン
- 飲酒
- 休憩時間以上の昼寝
- 買い物や散歩などの外出
- 個人的な用事を行う
- 業務時間中の別会社の副業
③さぼったと思われるストレスを抱えている人もいる
2020年10月に実施されたヌーラボの調査によると、20代の約50%、30代以上の約33%が「テレワーク時、さぼっていると思われるストレス」を実感しています。
また、2020年10月に公開されたカオナビの調査レポートによると、「自分がさぼっていると周りに思われているのではないか」との回答は22.3%でした。逆に「周りがさぼっているのではないか」という不安について、上司側は21.0%、部下側ではわずか5.1%との結果に。部下は上司や他の同僚がさぼることよりも、自分がそう思われることに対して、不安を感じているようです。
部下や従業員からすると、テレワーク中に普段どおりの業務を行っていたとしても、管理者の目が届かない状況ではなかなか証明しづらいものです。逆に上司からすると、目が行き届いていないことが理由で不安を感じ、結果的にお互いが疑心暗鬼になっている可能性があります。
2. テレワーク中のさぼりを防止して信頼関係をつくる方法
前述のとおり、テレワーク中には程度の違いはあるものの、ある程度のさぼりが発生する可能性があり、さぼっていなくても確認がしにくい状況のため、周りからの目が不安になる場合があります。ここではテレワーク時のさぼりを未然に防ぎ、互いに疑心暗鬼にならず信頼関係をつくって業務を進めるための方法を紹介します。
①コミュニケーションの見直し
さぼりを防ぎ信頼関係を構築するためには、テレワーク時に希薄になりやすいコミュニケーションを見直しましょう。
上司と部下が定期的に1対1で実施する「1on1ミーティング」は、目標の確認や進捗管理における認識の違いを解消する機会に最適で、部下が抱える課題を上司が把握してアドバイスをすることでスキルアップにもつながります。業務上の話だけでなく、部下が抱えている不満や悩みをキャッチアップして相談をうけることで、信頼関係を深めることができ、モチベーションの維持や休職・離職の防止にも役立ちます。
また、コミュニケーションを円滑に進めるためのITツールも積極的に導入しましょう。「件名」や「お疲れ様です」などの定型文を書く必要があまりなく、メールよりもカジュアルに連絡が取れるビジネスチャットツールや、遠隔でもお互いの顔を見ながらコミュニケーションができるWeb会議ツールなどが代表的です。
②疑似的にオフィス環境に近い状態をつくる
在宅やカフェなどのテレワークでは、周囲にいる人が自分の仕事に関係しない人であるため、緊張感が薄れがちです。普段のオフィス勤務では、周りから見られているという意識がほどよい緊張感を生み、さぼりの防止につながっていることがあります。
普段のオフィス勤務に近い環境をつくるために、会議時間とは別にWebカメラやWeb会議ツールを活用しお互いに視覚的に見られる状態にしながら業務を行う「もくもく会」を決まった時間に実施する、などの取り組みを行うことも有効です。
ただし、業務時間中にすべての時間を監視できるようにするのは従業員へ過度なストレスを与えたり、プライバシー問題にも発展したりするので注意しましょう。
また、「テレワーク=在宅勤務」と勘違いされがちですが、コワーキングスペースやモバイルオフィスの利用もテレワークですので、これらを活用することも環境づくりでは重要です。在宅勤務では家にいることで仕事のスイッチが入りにくい人もいますが、家から出ることで仕事モードへの切り替えることができ、また自社オフィスでなくても仕事場としての雰囲気がある場所で働くことは良い緊張感になります。
③勤務ルールの見直し
2020年10月に実施されたヌーラボの調査では「仕事をしているかどうかの判断基準」をどう持っているかについて三択で質問したところ、「プロセスで判断」「成果で判断」の回答の合計が91.5%とほとんどをしめ、「労働時間で判断」の回答は8.5%にとどまりました。仕事をしている基準について、労働時間の長さよりも、実際の業務に伴う内容をより重視している人が多いようです。
このことから、テレワーク時の「さぼり」の基準についても人や組織によって違いがあるかもしれません。たとえば、業務時間が長い従業員に対して「仕事をしているかどうかの判断基準」が「労働時間が長い=仕事をしている」という判断であればさぼっていることにはならず、「プロセスとして一日の成果物が上がってくる」ことであれば労働時間が長くても成果物次第ではさぼっていることになります。
このような認識のズレが生じる可能性があるため、テレワークではとくに勤務ルールを見直すことが重要になります。
テレワーク中の勤務ルールとして、人によって柔軟に勤務時間を変えることができるフレックスタイムの導入も有効です。労働時間が長いことが仕事をしているという認識の従業員の、無駄なさぼり時間の減少につながり、後述する成果物重視の評価制度への移行時の、プロセスごとの成果物や定量的な成果が出やすい環境構築に役立ちます。
④仕事の振り分け方も「ジョブ型」へ
近年、テレワークの普及をきっかけに「ジョブ型雇用」への注目が集まっています。ジョブ型の雇用制度とは、あらかじめどの仕事を担当するかの業務の範囲を明確に定めたうえで人材を雇用して仕事を割り振ることです。逆に、先に従業員を採用し、その後に状況に合わせて柔軟に仕事を割り振る雇用制度は「メンバーシップ型雇用」と呼ばれます。
メンバーシップ型雇用は、総合職などを一括で採用し、その後に仕事を割り振るような従来の日本的雇用習慣です。メリットとしては、柔軟に仕事を割り振ることができるためオフィスで密に連携をとりながらリアルタイムに担当する業務を変更できる点です。
一方、自分の仕事内容や責任の範囲が状況によって大きく変動するため、コミュニケーションの頻度が落ちるテレワークでは管理が難しく、個人ごとのやるべきことが不明瞭になる場合があります。結果として「自分がやらなくても他の人がやるだろう」というさぼりや手抜きの温床になったり、従業員同士の業務量についての不公平感が生まれたりするなどがデメリットとしてあげられます。
ジョブ型では、仕事の割り振りの柔軟さはあまりありませんが、その代わりテレワークのような「個人のやるべき業務範囲が明瞭でないと仕事の成果がわかりにくい環境」での生産性の向上や、さぼりの防止につながります。個人のミッションや役割、達成すべき責任が明確であれば、他の人が業務を進めてくれることに期待するよりも、自分で進めることの動機付けにつながります。
雇用方法としてのジョブ型だけでなく、すでにメンバーシップ型で組織を運営している場合でも、業務の管理方法としてジョブ型的な発想を用いることで、従業員やチームメンバーのやるべき仕事内容を明確にしてさぼりを防止する業務分担が可能となります。
⑤定性評価よりも成果型の定量評価重視へ
会社や部署の評価制度として定性評価が大きな比重を占める場合、「上司が部下をどうみているか」で評価が左右されるため、互いの姿が見えないテレワークでは正しく判断されない懸念があります。そのため、評価に対する不公平感が増加するだけでなく、その可能性を懸念しながら業務を行うことによる、従業員のモチベーション低下にもつながります。
テレワークでは、オフィス勤務を前提とした従来のような定性評価だけではなく、成果物重視の定量評価重視に比重を変えましょう。一日・一週間・一ヶ月などの決まった期間における成果物への評価(時間当たりの生産性)ができるような体制の整備や、そもそも担当している業務の成果の定義の見直しも必要になるかもしれません。
成果物ベースの定量評価を中心の指標にすることで、評価の公平感が強まり、前述した「仕事をしているかどうかの判断基準」のズレをなくすことにつながります。
上司と部下が「何をもって仕事をしているか」という認識を「一定の成果物」に基準を合わせることで、「さぼっているのではないか」「さぼっていると思われているのではないか」という疑いを持った状態を減らして、信頼関係を維持・向上し、モチベーション低下やそれに起因するさぼりの防止につながります。
3. まとめ
今回の記事ではテレワーク中の「さぼり」についての現状や、さぼりを防ぐための取り組みについて紹介してきました。
テレワークではさぼりが発生する可能性はゼロではありません。しかしむしろ、さぼりについての疑いの目があることへの不安感やストレス、「仕事をしている定義」の違いを生む構造に問題があります。
今回紹介した5つの方法を活用して、テレワーク中のさぼりを防ぎながら、互いに信頼し仕事ができる環境づくりにぜひ取り組んでみてください。