2025年4月1日利用分より、フレッツ 光ネクスト(一部サービスタイプ)の月額利用料を改定します。詳細はこちら別ウィンドウで開きますをご確認ください。

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2024.03.29 (Fri)

教育ICTの選び方(第5回)

GIGAスクール構想とは? 現状と課題、実例を紹介

 全国の公立学校で学ぶ児童・生徒への11台の学習用端末の整備と、校内通信ネットワークの整備を掲げる「GIGAスクール構想」が導入されてから、2024年度で5年目を迎えます。地域・学校間の利活用の格差や、利用者の増加に伴うネットワーク整備が課題となる中、「GIGA2期」に向けていま、端末の更新や予備機の整備にかかる計画が推進されています。今後、学校現場に求められるものは何なのか、GIGAスクール構想の現状を踏まえて紹介します。

「GIGA第2期」に向けた、学習用端末の更新計画

「児童・生徒1人1台の学習用端末」と「校内通信ネットワーク(校内LAN)」の整備を通して、多様な子どもたちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化され、資質・能力が一層確実に育成できる教育環境の実現を目指すGIGAスクール構想。コロナ禍でのオンライン需要の急増が後押しとなり、各地域・学校では急ピッチで整備が進められ、2022年度内にほぼすべての義務教育段階における整備が完了しました。

 しかしハード面の環境が整う一方で、地域や学校間で端末の利活用の格差があったり、ネットワーク環境の整備や校務DX化が不十分であったり、新たな課題が生まれています。 また端末の導入から数年経ち、故障の増加やバッテリーの耐用年数が迫っていることから、今後、端末の更新や予備機の整備が求められます。これを受け、国は2023年度の補正予算で、都道府県ごとに基金をつくり、2025年度までの2年間で端末の約7割を更新することを計画。公立学校の補助率は3分の2で、端末1台あたりの補助基準額が4.5万円から5.5万円に引き上げられました。また今回は都道府県域全体で共同調達することでコストを下げ、計画的に整備するとしています。

 ただ、補助金の交付には要件があります。各自治体は、①端末整備・更新計画、②ネットワーク整備計画、③校務DX計画、④1人1台端末の利活用に係る計画といった、端末の利活用の促進・そのために必要な整備等を内容とする計画を策定・公表する必要があります。2024年度からはデジタル教科書が段階的に導入されることからも、端末の日常的な利活用に向けて、さらなる環境の整備や改善が求められているのです。

そもそも、GIGAスクールの目的とは?

 ではそもそも、GIGAスクール構想はなぜ「1人1台の端末」の利活用を推進するのでしょうか? 文部科学省は、その目的を「多様な子どもたちを誰一人取り残すことなく、公正に個別最適化され、資質・能力が一層確実に育成できる」と説明しています。

 例えば、従来の一斉学習では、教員が黒板などを使って説明して、児童・生徒の興味関心意欲を引き出していましたが、1人1台の端末があれば、授業中でも表情だけでは読み取りづらい一人ひとりの反応や理解度を見ることができ、双方向型の授業が可能になります。

 また、各人の端末に学習の履歴を記録できることで、全員同時に同じ内容を学習するのではなく、一人ひとりの理解度や学習状況に応じた個別学習も可能になります。積極的に発言をすることが苦手な児童・生徒も端末を用いて意見を発表することで、各人の考えをリアルタイムに共有し、意見交換をしていくこともできるようになります。

GIGAスクール構想を支える、ICT支援員とは?

 GIGAスクール構想の実現にあたっては、学習端末や通信環境などのハード面の整備だけではなく、ICT人材を拡充することも重要です。

 具体的には、授業や校務の支援、機器やネットワークの環境支援、校内研修などを専門的に行う、ICT支援員を「4校に1人」の配置する計画が立てられています。こちらも年々増加しており、2022年度末時点で約4.6校に1人と、目標まであと一歩のところまできています。

 ただし、人員配置の度合いには自治体によって濃淡があり、約7割の自治体が目標数のICT支援員を配置している一方で、残る3割の自治体ではまだ目標数に到達していません。背景には、ICTの専門知識を有する人員が多い地域と、それ以外の地域で格差が生じていることがあります。加えて、端末などが整った後も、授業の改善や校務の負担軽減などに有効活用できているところと、端末を紙の代用としてしか活かせていないところの格差も広がっています。

 教育現場でのICT活用の先進事例の一つに、関東地方のある市の取り組みがあります。同市の小学校では、Google Workspaceなどを用いて児童の作品鑑賞や意見共有をすることで、児童の主体性や協働性を伸ばし、自主的な活用を導いています。ほかにも児童・生徒の学習状況をデータで蓄積し、理解度に合わせてAIで問題を提供したり、中学校の不登校生徒を対象にしたオンライン上の教室を設置したりするなど、個別最適かつ誰一人取り残さない教育を推進しています。

 こうした授業づくりを行うためには、教員のICTリテラシーの向上が必要です。しかし、新しい授業の準備、端末や情報の管理など、教員の業務の多さを考えると、自己研鑽には限界があるでしょう。実際、ICT活用に必要な研修の機会を用意できる学校ほど、授業へのICT活用が進んでいることはデータでも示されています。専門的サポートにより教員が授業づくりに集中できる環境をつくることが、ICT化による学習効果を得るというGIGAスクールの実現には必要不可欠なのです。

GIGAスクールが抱える課題と解決策

 児童・生徒が端末を安全に使うためのルール設定に頭を悩ませている教員も多いことでしょう。端末の使用場所や充電場所、個人情報やログイン情報の取り扱いなど、学校と児童・生徒、保護者が守るべきルールは多岐にわたります。

 端末の故障リスクを回避するため、端末の持ち帰りを禁止している学校や、情報リテラシーの観点から特定のアプリの使用やサイトの閲覧を禁じる学校もあるようです。しかし、そうしたルールの厳重化が、かえって主体的な学びを制限してしまうこともあります。文部科学省が示す「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を参照しながら、児童・生徒が主体となって活用ルールを考えることも、セキュリティ面などのリスクを共通理解するうえで有効かもしれません。

 またICT活用に継続的に取り組むうえでネックとなっているのが、学習支援ソフトの多様化です。学校により異なるソフトが使われている場合が多いため、児童・生徒が転校や卒業をする際に蓄積された学習成果が学校間で共有できない、あるいは教員が異動先でソフトの学び直しが必要といったことがあります。機器やソフトの導入・更新時には留意が必要です。

 GIGAスクール構想の実践も5年目に差しかかり、さまざまな課題が浮き彫りになるとともに、事例も多様化しています。そうした先進事例が一つの指針となり、全体の底上げが図られることが期待されます。

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