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2024.03.29 (Fri)

教育ICTの選び方(第3回)

教育DXとは?校務の効率化と教職員の働き方改革を実現

 社会全体でDXが急速に進み、クラウドサービスやAIなどの先端技術が日々の業務で積極的に取り入れられるようになりました。教育現場でも、GIGAスクール構想の実現に向けて、教育DXへの取り組みが推進されています。児童生徒全員がタブレットやパソコンなどの端末を1台持ち、授業を受けることが当たり前となった今、教職員はどのようにICTを活用していけばよいのでしょうか。加えて、教職員の働き方としても、ICTの活用でどれほど校務に掛かる業務効率化が期待できるのでしょうか。本記事では、教育DXや校務のデジタル化(校務DX)を推進するメリットや実践事例、今後の展望を踏まえた課題などを紹介します。

教育DXによる、校務デジタル化の5つのメリット

 教育DXとは、児童生徒の学習記録データや、教材などの公教育データをICTで利活用し、児童生徒ごとに最適な学習環境を整えるための取り組みです。加えて、紙などのアナログ処理が多かった会議資料作成や各種調査など、教職員の校務を効率化し、教職員が児童生徒と向き合う時間を捻出する目的もあります。

 教育DXを推進することで得られるメリットは、5つあります。

 一つ目は、児童生徒が学習の理解を深められることです。まず、デジタルドリルなどの学習支援ソフトやそれらと連携したダッシュボードなどの活用により、一人ひとりの学習状況をグラフや数値などで可視化することができます。不得意分野の克服に効果的な問題や、興味がある学習分野がレコメンドされる機能を使えば、児童生徒が自ら、自宅学習の取り組み方などを考えていくこともできます。

 復習や欠席によるフォローも効率化されます。授業の様子を記録した動画などをクラウド上で共有できるため、学習の振り返りが容易になります。普段の授業では、児童生徒同士の回答や考えをクラウド上でリアルタイムに共有できるため、「互いに理解を深める」といったことも期待できます。

 二つ目は、スムーズなデータ共有により、児童生徒の学習環境が変わっても教職員が切れ目なく支援できることです。教職員同士で、児童生徒の生活状況などをデータで共有すれば、普段の様子を随時確認できるので、生活に必要な支援もより手厚く行えます。進級や進学、転校などで児童生徒の学習環境が変わっても上記データを引き継ぐことで、これまでの支援内容をスムーズに把握できます。さらに、児童生徒の学習データや定期テストの成績データなどを一元管理できるので、全教職員がデータを参考に、個々に最適な学習指導が可能です。

 三つ目は、校務のデジタル化による業務負担軽減です。保健日誌や学級日誌などの帳簿類、会議資料などがクラウドツールや校務支援システムによりデジタル化され、更新や共有にかかる作業の効率化を図れます。また、クラウドツールを活用することで、ロケーションフリーで校務に従事でき、教職員の柔軟な働き方の実現にもつながります。

 四つ目は、保護者と学校とのやりとりがスムーズかつ効率的になることです。連絡ツールの活用により学校からの連絡事項をリアルタイムで確認できます。電話で行っていた欠席連絡や、紙で回答していた授業参観や個人面談の出欠連絡も、デジタルであればより効率的になります。このような取り組みにより、保護者にとって連絡の利便性が向上されると同時に、教職員の業務効率の向上にも効果が期待できます。加えて、保護者会などをオンラインでも行えるので、仕事などの都合で外出が難しい家庭でも参加しやすくなります。

 五つ目は、教育施策や学習指導要領の改善に活用できることです。これまで紹介した児童生徒のデータや教職員の支援データを参照できることで、現場の状況を適切に把握しながら、教育委員会や行政機関などは教育施策や学習指導要領の改善に活用することができます。また、学校と教育委員会などで、ダッシュボードを活用したデータの共有や連携ができれば、学校に対して行っていた調査の簡略化や教育施策の高度化につながりそうです。

クラウドツールの活用からAI型学習ドリルまで、教育DXの事例を紹介

 ここでは、教育活動や校務の効率化につながるICT活用事例を紹介します。はじめに、渋谷区の例です。渋谷区では2017年より「渋谷区モデル」を掲げて1人1台端末を実現し、国の「次世代学校支援モデル」等の実証事業へも参画するなど、ICT教育推進に積極的に取り組んでいました。運用していく中で、ネットワーク帯域不足やシステムの使いにくさなどの課題が見えてきて、端末のリース期間満了のタイミングでシステムを刷新。Microsoft Teamsやクラウドツールを活用したオンライン授業などを想定し、ネットワーク帯域の強化・回線の高速化などでネットワーク環境も整備しました。そのため、不登校や病気の児童生徒に対し、いつでも、どこでも学べる環境として、オンライン学習の機会を提供できるようになりました。また、学校と教育委員会とで基盤システムを連携させ、学校を経由して保護者に配布していたお知らせを、教育委員会から保護者に直接配布することもできるようになり、教職員の作業負荷が軽減しました。さらに、各学校でのシステムの利用状況を可視化できる運用ツールを整備し、利用時間が少ない学校に声がけをしながら利用を促進できています。

 東京都足立区では、区立小中学校を対象にしたAI型の学習ドリルを導入しています。児童生徒が教職員から配信された課題に回答すると、AIが回答状況を分析し、習熟度に応じた課題を自動抽出する方法で、学習を支援しています。これによって児童生徒は、家庭学習でも理解度に応じた支援を受けられるだけでなく、回答がわからないときにはヒントや解説などを参考にできるので、学習を効率的に行えます。

 教職員は家庭学習の作問や採点の時間が削減され、その分の時間を授業づくりなどに活用することができているといいます。

校務もICT活用でDX! 教職員の業務負担を軽減する校務DXの事例

 次に、鴻巣市全体における校務DXの事例です。出欠確認や学校日誌、出張申請などの業務処理を、汎用クラウドサービスを活用してデジタル化しています。また、文書などの決済作業も電子決済やワークフローを用いて行っています。こうした取り組みにより、いつでも、どこでも校務を行えるロケーションフリーな働き方を実現するとともに、業務効率の向上につながっています。

教育DX推進のカギは、教職員の苦手意識の払拭

 教育DXは、児童生徒の学びや自主的な取り組みを促すだけでなく、教職員の業務効率の向上にも効果が見込めます。しかしICTに対する理解は教職員によって個人差があるため、苦手意識があって教育DXによる授業や働き方のイメージが見えず、活用が進んでいないケースもあります。この点は課題としてすでに議論されているところです。

 こういった課題に対しては、教職員一人ひとりの自学自習に委ねるだけでなく、学校一丸で教職員のICTリテラシーを底上げするための研修に取り組んでいるケースも見られます。

 例えば、練馬区立関町北小学校では、職員会議で「今年は、職員室をクラウド化します」という管理職の言葉をきっかけに、副校長を中心とした校務のDX化を開始しました。同校では「クラウド型校内研修」と名付けた研修を実施。ICTの知見がある教職員が講師となって教科の学習指導や学級経営、機器の操作などを教える動画を作成し、校内のポータルサイトにアップロードしてオンデマンド形式で学習できる仕組みをつくりました。これにより、わずか半年で校務DX化が推進されたといいます。

 このような取り組みが広がり、教育DXによるスムーズな教育活動と校務が効率化されることが、「子どもたち一人ひとりに最適化された教育」の実現につながっていくと思われます。

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