2019.07.03 (Wed)

業務効率化が急務なワケ(第4回)

どこで使えば効果的? 部署別RPA導入マニュアル

posted by 林 達哉

 業務効率化の“切り札”といわれ、定型業務の自動化を推進するRPA(Robotic Process Automation)。他社の華々しい成功事例を見て、導入検討中という会社も多いでしょう。しかし、RPAは導入すれば終わりではありません。「どのような仕事をさせるのか」がポイントです。いったいどうすれば各部署で効果的に活用できるのでしょうか。具体的なRPA活用シーンを考えてみましょう。

 まず気を付けたいのは、RPAで自動化する業務には「向き・不向き」があることです。例えば、商品企画といった「人が考え、判断する」仕事にRPAは適用できません。一方、データの照合や入力などの定型業務はRPAが得意とする領域です。

どの部署でも「仕事の段取り」の把握が必須

 定型業務はあらゆる職場で存在します。具体的に「受注データのExcelシート入力」を例に考えてみましょう。品名、個数、価格といった内容を淡々と入力する作業は単純かつ定型的な業務といえますが、実際に現場を見てみると、担当者ごとに作業方法に違いがあることが分かります。

 例えば、Aさんは受注した時間の順番で入力し、Bさんは品名ごとに入力。Cさんは1件入力するごとに元データと照合し、Dさんは最後にまとめて照合といった具合で、詳細なルールがないケースも少なくありません。仕事の段取りの把握はRPA導入の基本になるもので、人によって進め方がちがう状態は「属人化」と呼ばれ、RPAが動く仕組みを作成する際の大きな障害になってしまいます。どの部署であっても、まずは社員個々の仕事の段取りを把握して、RPAに覚え込ませる仕事のルールの明確化が求められます。

部署別「RPAのオシゴト」

 では、実際のビジネスシーンでRPAが担当できる業務にはどのようなものがあるのか、部署別に例を挙げてみます。

【人事・総務】
 働き方改革で重視される残業時間削減に活用できます。毎日の勤怠管理データから残業の多い社員を抽出する作業では、社員全員の勤務データを洗い出すのに膨大な手間がかかります。RPAを使って残業30時間を超える社員を抽出し、過去数カ月間の残業時間の推移をExcelシートに転記するまでを自動化すれば、大幅な時間短縮ができます。

 さらに、その結果を本人や上司にメールで知らせることもRPAで自動化できます。他にも人事・総務では「人事考課表の作成・通知・回収」「採用時のエントリーシートのチェック、データ化」などの業務でもRPA活用が可能です。

【経理】
 長時間を要するデータ入力、帳票作成は、RPAの導入効果が分かりやすい形で得られる業務です。これまでのExcelマクロや経理用ソフトを使う方法では必須だった「手入力」をRPAで代行すれば、手間が省けるとともにミスの発生頻度も減ります。削減時間を入力以外の仕事に回せば、大幅に仕事の効率を高められます。

 また、担当者の負担が大きいFAXや手書き伝票などの「転記(データ化)」では、OCR(光学文字認識)と連携したRPAを活用して業務を自動化できます。

 他にも交通費などの経費精算や入金・支払業務、さらには資産管理など、さまざまな場面でRPAを活用できるため、費用対効果に優れた領域だといえます。

【調達・購買】
 調達・購買部門では各商品、部品の在庫や仕入状況などを個別に検索、確認する作業が欠かせません。必然的に事務処理の負担が大きくなっています。ここでRPAを導入すれば、商品管理システムに登録されたデータベースから必要な情報を検索・抽出し、関連部署に伝えるまでの作業を自動化できます。

 少量多品種生産が一般化する中、管理の中心的な役割を担う調達・購買の負荷は高まる一方です。RPAで業務のすべてを自動化することはできませんが、データ検索の部分を自動化するだけでも大きな効率化が望めるでしょう。

【営業・営業事務】
 営業部門の仕事は商談や得意先訪問など「外での仕事」と、書類作成やフォローといった「中での仕事」に分かれます。RPAは、主に出先から会社に戻って行われている社内業務を自動化します。結果として残業を減らせるでしょう。具体的には、請求書・見積書など定型書類作成や、データベース検索・参照機能を用いた見込み顧客リスト作成の自動化などが行えます。「書類づくり」や「新規開拓」といった仕事の負荷を軽減します。

 また、営業担当者の支援だけでなく、社内外の幅広い業務をサポートする営業事務は負荷が大きく、人手不足が慢性化する部署の1つです。ただし、個々の作業は定型的な場合が多いので、RPAで業務を自動化できれば、確実に残業時間を削減できるでしょう。

【その他】
 他にも、マーケティング部門ではアンケート調査の配布・集計、製造・販売部門ではPOSデータの収集や形式変換、情シス部門ではIT資産の棚卸しリストの作成といったように、あらゆる部署でRPAを活用できる可能性があります。

スモールスタートで効果を確認

 RPAには課題もあります。特に深刻なのが「使われなくなったRPA」の存在。導入したものの利用が進まず、改善もされずに放置されるケースが増えているのです。

 そこでお勧めなのがスモールスタート。あらかじめ特定の部署の定型業務を選び、担当者を決めてから必要最小限の規模で導入します。1人の社員がパソコン1台でこなせる量の仕事をRPAに代行させて効果を確認。次に改善を加えながら規模を拡大します。RPA活用に成功している企業の多くがこの方法を採用していることからも、利用が進む手法といえます。

 一方、RPA自体の進化も急ピッチで進んでいます。中でも最近注目を集めているのがAIを活用したOCR(AI-OCR)との連携です。手書き文字を瞬時にデータ化するAI-OCRは、定型業務の枠を超えて広く活用される可能性を秘めています。これからスモールスタートするなら、初めからAI-OCRとの連携を想定するのも有効です。すでにRPAのスモールスタートに成功しているなら、AI-OCRとの連携を改めて検討してもよいでしょう。

 RPAとAI-OCRを上手に活用して、業務効率化を成功させましょう。

林 達哉

林 達哉

出版社勤務を経て独立。メディアコンテンツ制作、マーケティングに携わる傍ら、IT、ビジネス等の分野で執筆活動を行う。

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