あらゆる企業で急務となっている生産性向上。人手不足を背景とした効率化のために、定型業務をテクノロジーで自動化しようとする流れがあります。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、その代表格の1つです。2018年から急速に脚光を浴び、各ベンダーからさまざまな商品が出ています。RPAはパソコンに組み込むソフトウエアで、パソコンで行う業務ならアプリケーション間の作業も自動で行います。
今までは1つのアプリケーション、つまりエクセルならエクセル内での自動化は行えましたが、RPAなら、Googleマップで開いた地図をキャプチャして、それをワードに張り付ける、といった2つ以上のアプリケーションが関わっても自動化できます。最近AIという言葉を聞かない日はありませんが、RPAは「弱いAI」と表現される場合もあります。
このRPA、どれくらい活用が進んでいるでしょうか。導入実態および機能への評価、さらに政府・官公庁・団体にスポットライトを当て、全体数値との比較を試みました(調査は日経BPコンサルティングが3486人を対象に2019年1月に実施)。
約半数がRPAを導入または必要性を感じる
勤務先でRPAを導入している企業は19.2%でした。5社に1社は、RPAを導入済みの計算になります。また、「導入を検討している」「必要性を感じるが未検討」という、未導入だが導入意向のある層は29.3%でした。つまり、導入済みを含め必要性を感じている層は、48.4%と、約半数に上ります。
それでは、政府・官公庁・団体に絞った結果はどうでしょうか。全体と比較すると、大きな差が表れます。「導入済み」は全体が19.2%なのに対し、わずかに1.9%。また、「導入しておらず導入予定もない」との回答は、政府・官公庁・団体では75.5%と約8割で、全体結果の51.5%とは20ポイント以上の差がつきました。政府・官公庁・団体では、導入状況、導入意向ともに低い傾向があるといえます。
政府・官公庁・団体が、導入をためらう理由で最も比率が高かったのが「必要性を感じない」の25.3%でした。2位はほぼ差がなく「自動化する業務フローがまだ明確でない」の24.0%。この項目は、全体でのトップに該当します(24.1%)。政府・官公庁・団体でトップの「必要性を感じない」については、全体では15.7%しか選ばれておらず、10ポイント近くの差が見られます。これは全体とのスコア差で、最も大きい値です。全体とのスコア差の大きさで、それに続くのは「担当管理する人間がいない」の5.5ポイント。「セキュリティが不安」という回答比率も、全体より4.5ポイント高い結果が出ました。
自治体などでは人手不足が指摘されるケースも少なくありません。そんな中、住民サービスの維持には、RPAのような定型業務の効率化に寄与するツールが役立つ可能性は大いにあります。また、懸念されるRPA導入に伴うコストについても、手ごろなパッケージサービスも登場し、小規模運用も選択が可能な状態です。選択肢は多くなっています。懸念される事項を払しょくしてくれるベンダーを、根気よく見極めるのが大事です。
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RPA利用者の不満は「契約形態・ランニングコスト」
実際にRPAを利用しているユーザーは、機能のどこに満足して、どこに不満を感じているのでしょうか。ユーザーの満足度が最も高かったのは、「操作性・ユーザビリティー」(17.4%)でした。2位は「対応アプリケーション」(16.6%)。この結果から、ある程度ユーザーは、自動化したい作業を滞りなく行えていると予想されます。
一方、最も不満に感じるのは、「契約形態・ランニングコスト」(16.0%)でした。この項目は満足度も高くなく、満足度とのスコア差についても最も大きい数値(9.4ポイント)になりました。満足度とのスコア差で、その次に大きかったのが「サポート対応」(7.0ポイント)です。RPAにかかる費用を高いと感じるユーザーが多いのがうかがえると同時に、サポート対応に不満度が高い結果を合わせて考えると、契約形態において、もっとサポートや助言が必要だと感じている可能性が見て取れます。
RPA1位は「WinActor」。続く「UiPath」「BizRobo!」
導入企業が採用しているRPAシステムを見てみましょう。1位は「WinActor」、2位が「UiPath」、3位が「BizRobo!」でした。1位と2位の差は大きく、現在のところRPA市場はWinActorが他を圧倒している状況です。
高まりを見せるRPA市場。一方で、業種による捉え方、必要性への感じ方には確かな差も存在するようです。RPAは導入すれば、すぐに効果を出しはじめるものではありません。自動化する業務を洗い出したり、自動化のプログラミングをしたりと、"荷が重い"一面もあります。契約形態を含め、導入業者のサポート対応体制や品質が、後の成否を左右するといっても過言ではありません。
だからこそ、導入を支援するベンダー選びは肝要です。サポート対応体制についてはRPAだけではなく、システムやネットワークなど、他の商材においても保守運用の実績があるかどうかも、選定基準として考慮するとよいでしょう。また、効率化の道ではトライ&エラーがつきものです。ハードルの高いものや高コストなものを推してくるようなところではなく、手軽にトライアル感覚で導入できるパッケージ商品があるところのほうが、安心できるのではないでしょうか。
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連載記事一覧
- 第1回 人手不足による人為ミス削減で情報流出を防げ 2019.03.19 (Tue)
- 第2回 異動の多い自治体こそ手軽な自動化ツールRPAの導入を 2019.03.19 (Tue)
- 第3回 迫る自治体の職員減。住民サービス維持にAIも 2019.03.26 (Tue)
- 第4回 官公庁の意識低い実態。RPA調査2019 2019.03.26 (Tue)
- 第5回 自治体職員のテレワークや研修に活用、LGWANのいま 2021.09.14 (Tue)
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