2019.03.26 (Tue)

求められる自治体の生産性(第3回)

迫る自治体の職員減。住民サービス維持にAIも

posted by 岩元 直久

 市区町村の消滅可能性が指摘されています。人口減や超少子高齢化が進むと税収が減少し、地域行政を支える自治体職員数の削減につながります。職員が減ったからといって、提供する行政サービスの種類は減りません。むしろ、住民の高齢化で取り組む事業は増えるでしょう。職員減少に手をこまねいていたら、行政機能が維持できなくなる危険性もあるのです。そうした将来を見越して、自治体が今から取り組んでおける対策の1つに、ICTを活用した業務効率化の推進が挙げられます。

住民サービスの持続可能性を高めるICT活用

 総務省によれば、日本の人口は2008年の1億2800万人をピークに減少が始まりっています。2040年頃には毎年100万人近くの総人口が減少していきます。大都市圏では並行して高齢化が進み、2042年頃に高齢者人口がピークを迎えます。この数字は、2040年頃にかけて自治体の税収減とともに、高齢者向けの行政サービスの負担増を示唆しています。そうした中で、自治体の住民サービスを持続可能な形で提供するにはどうしたらよいでしょうか。

 政府は、「未来投資戦略2018」の中で、「2020年度末までにAI(人工知能)・RPA(Robotic Process Automation:ロボティック・プロセス・オートメーション)などの革新的ビッグデータ処理技術を活用する地域数を300とする」という目標を掲げました。ICTの力を借りて、少ない職員でも効率的に事務を処理できる体制が求められているのです。現在でも地方自治体は、厳しい財政運営を余儀なくされています。ICT投資など、もってのほかという考えもあるかもしれません。しかし、今後さらに財政状況が厳しさを増してからでは、自動化、省力化のための原資も、対応する人材も、ますます不足しているでしょう。いち早く手を打てば、今後の住民サービスの持続可能性は高められるはずです。

 自治体での利用が想定されるICTの代表格が、AI(人工知能)です。人工知能というと遠い未来の印象を与えるかもしれませんが、近年は技術進化によりさまざまなシーンで利用できるようになっています。自治体でも、人間に代わってインターネット上で文字の会話(チャット)をする「チャットボット」というシステムにAIを使って、ゴミの出し方の案内を行う実証実験が行われています。

 また、車載カメラで撮影した映像をAIで分析して、道路の損傷状況を自動で抽出する取り組みも進められています。保育所の入所希望者の調整にAIを活用して、延べ1500時間の業務が数秒で済んだ事例もあるほどです。特定の業務に、AIをうまく適用できれば、大きな効果が見込めます。

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業務自動化で自治体職員の働き方改革を

 未来投資戦略で掲げられたもう1つの技術であるRPAは、自治体にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。RPAは、「業務自動化」を実現するものです。例えば行政事務では、住民から提出された申請書や他の行政機関から送られた書類の情報を、業務システムに人手で入力する作業があります。RPAを導入すると、複数のシステムやアプリケーションにまたがった作業でも、あらかじめ手順を指定すると忠実に実行します。こうした働き方から、RPAはソフトウエアロボットとも呼ばれます。

 自治体の事務作業を振り返ってみると、パソコンを手作業で操作している時間が多くを占めることに気づくでしょう。データのダウンロードやアップロード、他のシステムへの移行、データ集計など、部局を問わず行う事務作業は数多くあります。これらのうち、定型的な業務をRPAに任せれば、自動化・省力化が実現できます。すでに、ふるさと納税の業務の自動化、時間外業務申請の集計の自動化、異動届出受理通知のための発送簿作成の自動化など、自治体でもRPAを使った取り組みが始まっています。

 こうした自動化の取り組みによって、業務にかかる時間は大幅に減少し、職員の負担の軽減、時間外業務の削減などの効果が上がっています。さらに業務作業の自動化が実現すると、操作ミスの軽減や時間の有効活用効果も表れてきます。

 AIやRPAがもたらす自動化・省力化の効果は、職員減少への対応といった側面だけでなく、業務時間の短縮やクリエーティブな業務への専念などによる自治体職員の働き方改革につながります。自治体の業務課題を解決するためにも、こうしたIT活用をまず「どの業務で適用できるか」考えはじめてみるとよいでしょう。

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岩元 直久

岩元 直久

日経BP社でIT、ネットワーク、パソコンなどの分野の雑誌、ウェブ媒体の記者、デスクを歴任。モバイル分野については、黎明期から取材・執筆を続けている。フリーランスとして独立後は、モバイル、ネットワークなどITを中心に取材・執筆を行う。

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