離島の廃校で学ぶ酒造りとまちづくり(第1回)

50年で人口半減の佐渡 盆踊りとICTで地域再生

 廃校になった小学校を酒蔵として再生し、地域活性化につなげている佐渡島での取り組みが注目を集めています。

 酒造りの場にとどまらず、酒造りを体験しながら学べる場、さまざまな人が集い意見を交わす交流の場、そしてエコアイランドとしての佐渡の美しい自然環境を見える化する環境の場を4本柱とする「学校蔵プロジェクト」。

 文化人など多くの人たちを巻き込んで活動の輪が広がるこのプロジェクトから地方創生のヒントを得ようと、佐渡島を訪ねました。

ジブリの世界を彷彿とさせる佐渡金銀山の北沢浮遊選鉱場跡

世界遺産を目指す金銀山、先進国初の世界農業遺産に認定された米作り

 「学校蔵プロジェクト」を見ていく前に、まず佐渡島について概観しておきましょう。

 東京から上越新幹線と高速船を乗り継いで約4時間。新潟県の沖合に位置する佐渡島は、独特の文化を育んできました。古くは流罪によって流されてきた貴族や知識人たちから貴族文化が、江戸時代には金銀山の開発に伴って江戸から武家文化が伝わり、また、上方(大阪方面)と北海道を結ぶ北前船の中継拠点として船乗りや商人たちから町人文化が持ち込まれ、これらを融合しながら形成された文化は“日本の縮図”ともいわれています。

 島の西北部の大佐渡山地と東南部の小佐渡山地に挟まれた、中央部の国仲平野には広大な水田地帯が広がり、そこで栽培される米は、魚沼産と並ぶトップブランドとして知られています。山間地にも多くの棚田があり、収穫を終えた冬場でも水を張り湿地状態を保っておくことから、ドジョウやタニシ、昆虫類などが豊富に生息。それが国の特別天然記念物・トキの餌場となり、トキが佐渡で生き続けた要因の1つとも考えられているようです。

豊かな生態系を育む岩首棚田

 佐渡金銀山は2010年、世界遺産暫定リストに記載され、また「トキと共生する佐渡の里山」は2011年、先進国では初めての世界農業遺産に認定されました。

盆踊りとICTが島を救う?

 こうした明るい話題の一方で、1960年に11万人を超えていた佐渡の人口は約5万7千人(2017年6月1日現在)と半減し、近年は毎年約1千人ずつ減少。観光客数も1991年の123万人をピークに、2014年には50万人にまで落ち込んでいます。少子高齢化に地域経済の縮小…。佐渡は課題先進地であり、この面からも“日本の縮図”といえるのです。

 人口減少の主要因は若年層の流出。佐渡市役所 産業観光部 地域振興課の市橋秀紀課長は「高校卒業後の進学先や就職先が島内に少なく、卒業生の9割弱が島外に転出します。そして、大学等を卒業する際、就職先の選択肢に佐渡が入らないのです」と話し、対策の検討を進めています。

佐渡市役所 産業観光部 地域振興課 市橋秀紀課長

佐渡市役所 産業観光部 地域振興課 市橋秀紀課長

 実は佐渡には、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の認定工場となっている企業や、国産初の小型ジェット旅客機MRJ(三菱リージョナルジェット)の部品を手掛ける企業など、高度な独自技術を持つ企業もあるのですが、あまり知られていないのが実状。

 そこで「子どもたちに、小中学生の頃から佐渡の歴史や文化を教え、郷土愛を醸成するとともに、島内の企業についてもきちんと伝え、職業観を育てるためのキャリア教育を推進しているところです」(佐渡市役所 市橋課長)。

 郷土愛の醸成には「例えば地域の祭りや郷土芸能も一定の役割を果たしている」と、市橋課長は自身の集落における経験などから実感しています。祭りや郷土芸能が存続している集落では、人々の絆が強く、島外で就職した人も祭りのために帰省するケースも多いのだとか。

島内の多くの祭礼で舞われる鬼太鼓(おんでこ)

島内の多くの祭礼で舞われる鬼太鼓(おんでこ)

 佐渡では、複数の大学の学生がゼミ合宿などで各種のフィールドワークなどを行っていますが、学生たちが盆踊りなどにも参加して地元の人たちと交流を深めたり、農作業を手伝ったり、さらには子どもたちに勉強を教えたりすることで、地域に活力を与える機会にもなっているようです。

 他方、佐渡は離島ながら、住宅地の91%は光化されており、市橋課長は雇用創出に向けてICTの活用にも期待を寄せています。

離島のハンディを克服するクラウドソーシングによる雇用創出

 佐渡市では現在、クラウドソーシング(インターネット上で不特定多数の人材に対して業務内容と報酬を提示し、仕事を発注する手法)の大手運営会社と提携し、Uターン・Iターン者の雇用の受け皿の1つとして活用する計画を進めています。

 まずは在宅コールセンターのオペレーターを育成するところからスタートし、ホームページ作成の請負といった在宅起業などへと拡大していくことで、離島における新しい働き方として普及させていきたい考えです。

 行政としてさまざまな対策を打つ市橋課長は、地元の酒蔵である尾畑酒造が推進する「学校蔵プロジェクト」にも注目しています。

 「私の卒業した小学校も中学校も高校も、今では残っていません。当時の雰囲気のままの校舎が“わが母校”として残るのは大きな意味があり、地元の方々が一番喜んでいるのではないでしょうか。観光客が減少する中、尾畑酒造の平島社長と尾畑専務に共感する人たちが佐渡を訪れることで、経済に大きく貢献するのも確かです。年に1度行われる特別授業には講師として文化人も招かれるため、そこから発信される佐渡の情報は、首都圏の駅に張り出す観光ポスターよりも大きな効果があると考えています」(佐渡市役所 市橋課長)。

 学校蔵の発案者である平島健社長と尾畑留美子専務も、実はIターン、Uターン組。NHK「連続テレビ小説」のモチーフにもなりそうな学校蔵プロジェクトと二人のエピソードには、次回、触れることとします。

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