いよいよ始まるマイナンバー制度。しかし「何やら難しいし、いろいろと注意事項が多いようですが、中規模・小規模事業者が最小限すべきことは何でしょうか」という問い合わせが多く寄せられています。企業がやるべき事についてポイントを絞ってお知らせします。
1.「マイナンバー」とは?
(1)「社会保障・税番号制度」
こんなしかつめらしい名前ですが、社会保険のお金と、税金とを名寄せできるようにするのが、第一次の名目です。
平成27年10月から、「個人番号の通知」が開始します。利用は平成28年1月以降の税金に関係すること、社会保険の手続関係から始まります。
(2)マイナンバー(個人番号)は12桁の数字です
マイナンバー(個人番号)は、地方公共団体情報システム機構が、住民票を基にして作成します。作成したデータは市町村に提供され、市町村が「通知カード(紙のカード)(写真なし)」として交付します。「個人番号カード(自動車免許証のような樹脂のカード)(写真あり)」については、その後、本人が申請して作成(無料)します。その際に本人のIDとパスワードの登録もします。
(3)外国籍の人も交付されます
住民登録がしてあれば、外国籍の人も交付されます。海外にいて住民票がない人は、帰国時に住民票を登録してから交付されます。
(4)税金の関係で、法人番号も交付されます
平成27年10月には、法人登記してあれば、法人番号が交付されます。交付は国税庁からです。法人番号は12桁ですが、1桁のチェック用の数字がついて13桁になります。税金関係だけでなく、社会保険や雇用保険の事業所設置届けにも使用します。
2.マイナンバーで会社は何が変わる?
当面は、税金(所得税)と、社会保険(失業保険、労働保険、健康保険、今後の厚生年金保険)の届けに、「マイナンバー(個人番号)を記入する」という仕事が増えます。
マイナンバー(個人番号)は、その取扱いがよくわからず「情報漏えい」の不安がとても大きくなっています。そのため、マイナンバー(個人番号)を含む個人情報の取扱いについて、今まで以上に世の中が(従業員が)神経質になります。また、法的にも会社として「ルールづくり」が求められます。
3.まず会社がやるべきことは?
会社として最初にやるべきことは、社員からマイナンバー(個人番号)を収集することです。
(1) 利用目的をはっきりと書いた通知を出して、氏名・番号を書いてもらいます
<個人番号利用目的>
当社は、貴殿および貴殿の扶養家族の個人番号(行政手続における特定の個人を識別するための番号(マイナンバー)の利用等に関する法律に定める個人番号をいいます)を以下の目的で利用いたします。
•給与所得・退職所得の源泉徴収票作成事務
•雇用保険の届出事務
•健康保険・厚生年金保険の届出事務
•労働者災害補償保険法に基づく請求に関する事務
便利な例として、平成28年分の扶養控除申告書を利用するケースを紹介します。
平成28年分の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を配布し、そこに個人番号を記入してもらうと、本人ならびに扶養家族のマイナンバー(個人番号)を一緒に収集できます。
申告書は、国税庁のホームページからダウンロードできます。
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/pdf/h28_01.pdf
(2)マイナンバーがあっているかどうかの確認をします
正しい番号かどうか、社員本人の「通知(個人番号)カード」を見せてもらい、よく確認をする必要があります。ただし、個人が持っている「通知カード」または「個人番号カード裏面」をコピーすると、その後の管理のリスクが発生するので避けた方が良いでしょう。
4.マイナンバーの当面の用途は?
代表的な用途についてあげておきます(それ以外は省略します)。
帳票他、詳細は以下のホームページを参照してください。
■税関係帳票類(所得税、法人税、消費税他)(国税庁HP)
http://www.nta.go.jp/mynumberinfo/jizenjyoho/index.htm
■社会保険・雇用保険・健康保険関係帳票(厚生労働省HP)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12600000-Seisakutoukatsukan/0000082038.pdf
5.マイナンバーにあわせて対応が必要なことは?
(1)個人番号と社員コードを一覧表にします
マイナンバー(個人番号)とは別に、社員コードを作成して、「個人番号一覧表」で管理します。給与計算などの通常の業務では「社員コード」を使用し、個人番号が必要なときは、「個人番号一覧表」から「社員コード」で探して、使用するのが安全です。
この一覧表を書面で管理する場合は、鍵のかかる書庫に保管します。
(2)パソコンでのデータ管理は慎重に行います
パソコンに「個人番号一覧表」を保管するのは危険です。安全対策として「個人番号一覧表」のファイルは必ずパスワードをかけ、パスワードを知る者しか閲覧・更新できないようにしてください。また、ファイルはUSBメモリ等の外部記憶装置に保存し、その外部記憶装置を鍵のかかる書庫に保管、必要時にパソコンで読みだして使用する(パソコンにはデータを保存しない)方法をお勧めします。外部記憶装置は認証機能(指紋認証等)があるものを使うと、さらに安全です。
セキュリティ対策や外部記憶装置の紛失が心配という方は、クラウドにデータを預けるサービスを利用するのも選択肢のひとつです。他には、今後税理士や社会保険労務士がデータの収集から保管までを一手に担うサービスが多く出てくると考えられますので、それらのサービスを利用する方法もあります。
(3) 転記ミス対策を仕組み化します
個人番号は12ケタもあり、転記ミスが想定されます。対策としては、12ケタの数字を合計すると「幾つになるか」を計算し、それを別途の欄で記録します。転記後に12ケタを足して、合計があっているかを確認して転記ミスを予防します。ミスを100%回避できるものではありませんが、軽減はできます。
(4) 個人番号一覧表の管理担当者を決めます
「個人番号一覧表」は、管理担当者を決めて、適時、保管状況をチェックする仕組みにしましょう。退職者が出た場合は、その人の個人番号は「一覧表」から削除します。
(5)いろいろなルールの設定と周知を行います
①マイナンバーならびに個人情報の保管場所、管理者を決めます
マイナンバー(個人番号)は他の個人情報と一緒になった場合に、盗難や漏えいの際のリスクが大きくなります。したがって、今まで使用していた個人情報が含まれる書類やデータの管理方法も見直した方が良いでしょう。
②「個人情報」とは、個人を特定できる情報です
名前、住所、生年月日、電話番号、家族の氏名、給与振込口座番号などの「個人情報」を管理する上で、特に注意するのは、これらが一括して書いてある「一覧性のあるもの」(例えば社員の住所録)になります。マイナンバー(個人番号)は「特定個人情報」と呼ばれ、「個人番号をその内容に含む個人情報」として厳重な管理が必要です。
③鍵のかかる書庫にしまう
従来から実施しているとは思いますが、給与明細、源泉徴収票、健康保険の取得届・喪失届、月変・算定届、雇用保険の離職票、税理士等への支払調書、年末調整の際の扶養控除申告書などについて、さらには、社員の住所録、履歴書などについて、鍵のかかる書庫にしまい、鍵の管理方法をきちんと決めましょう。
(6)故意の情報漏えいは、罰則があります
民間の場合は、犯罪に等しいような故意に漏洩させた場合に適用されます。最大で4年以下の懲役、または200万円以下の罰金です。
なお、マイナンバー(個人番号)を使って社会保障や税などの手続きを行う際には、個人番号カードや運転免許証などの顔写真付きの身分証明書で本人確認を厳格に行うことが、法律で義務付けられています。言い換えれば、万が一マイナンバー(個人番号)が漏えいした場合であっても、マイナンバー(個人番号)だけで手続きを行うことはできないので、それだけで悪用されることはありません。マイナンバー(個人番号)が漏えいした場合には、本人の請求などにより、マイナンバー(個人番号)を変更することが可能です。
会社がしなくてはならないことは、情報漏えいのリスクについて注意して対処し、全体の個人情報を管理することです。マイナンバー制度の開始をきっかけに、情報の管理体制を見直しましょう。
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