2025年4月1日利用分より、フレッツ 光ネクスト(一部サービスタイプ)の月額利用料を改定します。詳細はこちら別ウィンドウで開きますをご確認ください。

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ビジネスマガジン(第4回)

クラウド導入時に考えるコストとリスク~顧客価値に見合ったコスト負担とリスクの考え方~

posted by 須田 俊江

前回は、顧客に価値を届けるマーケティング・ミックスの4Cという考え方についてご説明し、Customer Value(顧客の価値)とConvenience(顧客の利便性)について取り上げました。今回は「Customer Cost」、顧客にとってのコスト負担について考えます。

1.なぜクラウドを導入するか

企業存続の条件が、売上から原価と経費を差し引いた利益の最大化であるのは自明のことです。そのため、企業活動のあらゆるところで「コスト削減」が試みられています。近年クラウドサービスがビジネスの現場に徐々に浸透してきた理由も、そのきっかけはコストの劇的な削減効果でした。
なぜクラウド導入でコストが削減できるのでしょうか。
ひとつは、自前でサーバやネットワークなどの設備を持たないことです。サーバ類は技術革新により性能が年々上がるにもかかわらず値段は下がります。一度購入してしまうと機能が劣るものを相対的に高い値段で使い続けることになります。クラウドはサーバ等を「レンタル」しますから、購入コストだけでなく、買い換え負担もありません。
ふたつ目は運用費用の軽減です。バージョンアップやデータ保管は、通常サービス提供側が行います。今まで複数拠点でパッケージソフトを入れていた場合、本社に集約する手間やコストも掛かっていたでしょう。これらが軽減されます。
クラウドサービスを運営する事業者は、たくさんのユーザにシステムを共同利用してもらうことで1社あたりのコストを下げ、低価格でのサービス提供を可能にしたのです。

介護施設向け運営支援サービスを行っているB社では、拠点を2つに増やすときに、販売管理システムの刷新に直面しました。それまでは本社のパソコンに導入したパッケージソフトを使っていました。刷新案は3つありました。以下がその刷新案になります。

1.同じパッケージを入れて、毎月末データを本社で集計する。
2.パッケージのネットワーク版を導入し、専用線で運営する。
3.クラウドサービスの利用。

1.はその運用の手間がネックでした。集計のためのデータ引き渡しだけでなく、マスター登録のルール化など運用フローの整備も必要でした。また、拠点データが翌月にならないと本社では分からないのは大きな問題でした。
2.はコストです。ネットワーク版パッケージは本体価格も保守費用も高額で、別に専用線費用が毎月発生します。パソコンパッケージソフトと同じ程度の予算を考えていたため、明らかに予算オーバーでした。
3.のクラウドサービスは、必要な機能を満たした上、トータルコストも安く押さえられることが分かり、2拠点での導入、運用がスタートしました。
思わぬ副産物もありました。クラウドサービスはインターネットを十分活用したものであり、営業マンが出先から利用できるなどのメリットがありました。

B社が導入したクラウド型販売管理システムを4Cの観点で見ると以下のようになります。

【クラウド型販売管理システムを4Cで見る】
•Customer Value(顧客の価値)・・・現場の手間軽減で、担当者は顧客に割く時間を増加させることができた。
•Customer Cost(顧客の負担)・・・コスト削減の恩恵。
•Convenience(顧客の利便性)・・・クラウドサービスに慣れたことから、注文書、請求書などの追加サービスを検討中。導入すると顧客との書類やり取りが不要に。
•Communication(顧客とのコミュニケーション)・・・クラウドサービスから来訪頻度や注文間隔が割り出せるため、適切なタイミングで訪問、案内が出せるようになった。

このようにクラウドサービスは企業に新しい価値を提供しますが、自社のすべてのシステムをそのままクラウドサービスに移行してしまってもよいのでしょうか。

2.リスク軽視によりサービス停止へ

一昨年、企業のホームページやメールサーバを預かり、運営するサービス事業者において、大事故が発生しました。たくさんの企業から預かったデータのほぼすべてを、バックアップも含めて消失し復旧をあきらめた、という事故です。しかしこのサービス事業者は、賠償責任などを負うことはありませんでした。利用規約に、データのバックアップ責任は利用企業側にある、という条文があったためです。
自社にバックアップを保管してあった企業は、それらをもとに早々にサービスを再開することができました。しかし、一部の「丸投げ」していた企業は、新しくホームページを構築するのと同じだけの時間と費用をかけ、サービスを再開したのでした。
もちろんこのようなことはあってはならないことではありますが、後者の企業も、契約時に利用規約を確認しているはずです。バックアップ責任がこちらにあるのなら、それ相応の準備をし、データ保管の仕組みを取り入れるべきでした。
ここから得られる教訓は、端的に言ってしまえば「利用者はリスクを見極め、必要な費用を負担する」ことです。あらゆる情報がデジタル化し、インターネットを介して、社外にも散らばっている今日、目先の便利さやコスト低減だけに気を取られることなく、各々のリスクを見極め、適切なコストを払っていかなければならないのです。

4Cにおける「Customer Cost」とは、販売価格や利用料が「いくら」ではなく、商品やサービスを利用する顧客が最終的に負担するコストのことです。マーケティング・ミックスを検討する際は、顧客が販売価格以外のコストも含めて「トータルでいくら支払えるか」を考えることがポイントです。

次回は、「Communication」をテーマに、どのようにして顧客に企業のメッセージを伝えていくかについて考えます。

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須田 俊江

須田 俊江

中小企業診断士。情報処理技術者。中小企業のモノづくりから出口戦略まで、マーケティングを見据え一貫したご支援を得意とする。現場に密着し、経営者の想いを具現化することを信条とする。経営革新支援、企業再生支援実績多数。

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