2025年4月1日利用分より、フレッツ 光ネクスト(一部サービスタイプ)の月額利用料を改定します。詳細はこちら別ウィンドウで開きますをご確認ください。

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2016.02.01 (Mon)

ビジネスマガジン(第2回)

リアルとネットを統合して顧客と深い絆を築く

posted by 須田 俊江

ネットショップとリアル店舗の間で

 フラワーショップA店は、住宅街の一角にあります。近隣のスーパーマーケットに買い物に来た主婦が、季節の花に誘われて店頭で足を止める、そんな地域に溶け込んだお店です。かつて大手フラワーショップに勤めていた妻Bさんの経験を活かし、夫婦でここに出店して数年が経ちます。

 実はBさんは、大手フラワーショップ退職後、プリザーブドフラワー(生花を特殊な溶液に浸して水分を抜いたもので、生花の美しさを長く楽しむ)を使ったアレンジメントにいち早く取組み、オンラインモールにネットショップを立ち上げ、そこそこの売上を立てていました。しかしほどなく、プリザーブドフラワーは人気の新商材として大手フラワーショップの店頭を飾るようになり、ネット販売に参入する競合の増加に対抗できず、売上は急激に落ち込みました。

 しかしこれからも生業として花を扱っていきたいBさん、その想いを会社を退職したご主人と実現させたのがA店です。しかし昼間はA店の営業、夜間はネットショップで取扱うプリザーブドフラワーの制作と出荷対応に追われ、店づくりに心が行き届きません。A店にはじめてお伺いしたのは、ちょうどその頃。少々荒れた印象で、売上は極めて厳しい状況にありました。改善策として、A店でプリザーブドフラワーの取扱いをスタートさせ、ネットショップにはA店の案内を出しました。

すべては顧客目線にある~オムニチャネル~

 あちこちで「売上が落ちている。お客さんはネット通販で買っている。」との小売店の声を聞きます。店頭でじっくりと品定めをした顧客が、商品はネット上で価格比較して注文する時代です。そこではメーカーが、そして消費者自身が、小売りをしています。「小売り」は「小売業」という「業(仕事)」から、業態、売り方、流通などに関係なく「機能」に変化しているのです。

 小売りは、基本的に単一の販売チャネルで顧客と1対1の関係を築いています。19世紀アメリカで始まったカタログ通販から、小売りは消費者に新しい販売チャネルを用意し、インターネットの普及がネット通販というチャネルを提供していますが、店舗は店舗の顧客と、ネットショップはネット顧客と1対1の関係であることに変わりありません。リアル店舗を持ち、ネットショップを持つ小売りは、例えばネットショップで購入した商品をリアル店舗で受け取ることができるなど進化していますが、リアル店舗とネットショップの顧客は別々に管理されていることが多い様です。

 しかし、顧客の目線で考えてみるとどうでしょうか。店頭でスマートフォンを使って商品情報を検索している顧客を頻繁に見かけるようになりました。逆に顧客はリアル店舗とネットを意識的に融合させ、シームレスに行動しているのです。これまでの小売りの概念を変え、店頭に商品がなければネットから注文してもらうなど、店舗側が買う場はどこでもよいと考える必要があります。別々に管理してきたチャネルを、顧客を軸にして「すべてつなげる」。受注やプロモーションなどを横断的に実施する動きも活発化しています。

 すべてのチャネルで顧客とコミュニケーションをとり、得られたデータから顧客をパーソナライズ化し、それぞれの顧客に適した店舗、メニュー、サービス等を適切に提供していくことを「オムニチャネル」といいます。チャネルを一気通貫した顧客管理、商品管理、販促管理などのシステム構築が不可欠ですが、ICTの進化がそれを可能としています。

リアル店舗とネットショップ経営が創造する価値

 前述のフラワーショップにおいても顧客にとってリアル店舗でもネットショップでも提供する価値は、花を軸にした潤いのある生活の創造や、花に心を託して大切な人に届けることです。そのため、A店で生花と並べてプリザーブドフラワーを扱うことは、来店客の利用目的にあった商品選択の幅を広げることです。また、Bさんの強みは、プリザーブドフラワーを自ら制作するため、顧客の要望に応じてオリジナルのアレンジメントを提供できることです。A店で顧客と打ち合わせられるので、少々遠いところからも、付加価値の高いサービスを求めて顧客が通ってくる可能性があります。さらに、店頭に並ぶプリザーブドフラワーの種類は限られますが、ネットショップでは多くのアレンジメントから選択することができるので、A店で購入した顧客が、次回はネットショップから注文する導線が生まれます。

 リアル店舗とネットショップを行き来する顧客と確実にコミュニケーションを図り、その顧客情報や商品情報などを一元的に管理することで、今後もそれぞれの顧客に適したサービスを提供し、深い絆を築くことが期待されます。

 その後、BさんはA店レジカウンターの壁面にプリザーブドフラワーの資材を魅力的に陳列し、贈答目的で来店された顧客にはご要望をお聞きして、生花・プリザーブドフラワーの垣根を越えて、最適な提案をしています。新たに自社サイトのネットショップを立上げ、店舗の存在をアピールすると共に、ブログでは季節感のある店頭の動きを定期的に伝えて、生花やプリザーブドフラワーの楽しさを伝えています。以前は全く行っていなかった顧客フォローもメールで行っています。これらの取組みが功を奏したのか、A店にはプリザーブドフラワーを求めて来店される顧客が増加し、ネットショップの売上も徐々にではありますが回復しています。

 スマートフォンやSNSの普及で、顧客はシームレスに行動し、売り手はあらゆるチャネルでの顧客対応が求められます。「各チャネルでどうやって売るか」ではなく、「チャネルを統合していかに買っていただく仕組みを作るか」への転換を迎えています。

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須田 俊江

須田 俊江

中小企業診断士。情報処理技術者。中小企業のモノづくりから出口戦略まで、マーケティングを見据え一貫したご支援を得意とする。現場に密着し、経営者の想いを具現化することを信条とする。経営革新支援、企業再生支援実績多数。

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