小売業のDX化を進めたとしても、店舗スタッフ同士のコミュニケーションツールの改善については、意外と見逃されがちです。古い機器が使われ続けていたり、シフト調整の際に私用のチャットツールが用いられることで、効率化やセキュリティ面での課題が生じています。今回は、店舗スタッフのコミュニケーションをDX化する方法を紹介します。
小売業の人手不足はDX活用でカバーしよう
小売業では慢性的な人手不足が課題となっています。
2018年に農林水産省食料産業局が発表した「卸売業・小売業における働き方の現状と課題について」という資料では、小売業の中でも特に労働力が不足している分野の一つとして「営業・販売」、すなわち店舗スタッフの労働力不足が挙げられています。さらに長時間労働や少ない休暇日数といった労働環境の問題も顕在化し、生産性の向上を含めた働き方改革が求められています。
こうした問題の背景にあるのが、小売業のデジタル化の遅れです。同資料では「労働力不足・長時間労働が深刻化する中、特に情報技術の活用を通じた生産性向上が期待される」と書かれているように、デジタルツールの活用によるDX推進が急務となっています。
近年はコロナ禍の影響もあって、スマートストアやデジタルマーケティングといったテクノロジーが普及しつつあります。しかし、店舗スタッフ同士の業務中の情報伝達や事務連絡、シフト調整といった、スタッフ間の日常的なコミュニケーションについても、DX化を進める必要があるでしょう。
古い機器や禁止されているツールを使い続けるのはリスクである
なぜスタッフ間のコミュニケーションにもDXが必要なのでしょうか。それは、従来のやり方のままでは、コミュニケーションを取る際に伝達ミスやセキュリティ上の不備が発生しやすく、そのせいで無駄な作業が発生してしまうからです。
店内でスタッフ同士が連絡を取り合う手段としては、トランシーバー(インカム)を活用しているケースも多いでしょう。しかし、機種によっては音声が不明瞭なものや、接続が不安定なもの、重たくて使い勝手が悪いものもあります。伝達ミスやそれに伴う作業が頻繁に発生すると、業務効率が下がるとともにスタッフにストレスを与えてしまいます。
シフト調整など業務に関する連絡を取る場面では、会社が禁止しているにもかかわらず、私用のチャットツールを使っている店舗もあるかもしれません。個人店舗責任者や本部スタッフであっても、使用の実態を把握していながら、慣習や便利さから黙認しているケースもあるでしょう。しかし、チャットの内容について店舗が管理できていないと、内部情報が漏えいしてしまうリスクが生じます。
ツールを導入するだけでDXが推進できる
これらの課題を解決するためには、新たなコミュニケーションツールを導入し、店舗内のコミュニケーション全般をDX化することが有効です。
コミュニケーションツールは世の中にたくさんありますが、これまで私用のチャットツールをメインで使っていたのであれば、ビジネス用チャットツールを導入することで、スタッフは比較的ストレスなく移行できるでしょう。
ビジネスチャットツールを導入する際には、セキュリティに関する機能が重要なチェックポイントとなります。ツールの中には個人の端末にデータを残さない機能や、スクリーンショットを防止する機能など、情報漏えいを防ぐための対策が備えられているものもあります。
トランシーバーについても、現在使用している機器が重たい、ボタン操作が複雑、通信距離や同時接続数などで使い勝手に難点があれば、新しいものに変えるべきでしょう。高性能なトランシーバーであれば、無線が接続でき、ハードウェアも軽量、数十名の同時会話も可能で、録音機能が付いているものもあります。
こうした機器やサービスは、導入するだけですぐにDXとして成果を出せることになります。店舗スタッフのコミュニケーションに課題を感じているのであれば、検討してみてはいかがでしょうか。
事例掲載「小売業のコミュニケーション改革」
連載記事一覧
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