2021.03.09 (Tue)
1から学ぶSDGs(第2回)
トヨタやアサヒの事例に学ぶ企業価値を上げるSDGs
レジ袋有料化に続き、管首相の「脱炭素宣言」で、ますます注目されているSDGs。関連するコンサルティングサービスやソリューションなども登場し、ビジネスの世界でも盛り上がりを見せています。では、企業は、実際にどのような取り組みを行っているのでしょうか? 国内企業の現状や代表的な事例について紹介します。
24.4%の国内企業が、「SDGsに積極的に取り組んでいる」
SDGs(エスディージーズ/Sustainable Development Goals)とは、2015年9月、国連サミットによって採択された、「2030年までに地球を持続可能な状態にするための17の目標と169のターゲット」のこと。現在、世界中の企業、学校、自治体などで、達成に向けた取り組みが行われています。
日本国内の企業では、どのように受け止められ、取り組まれているのでしょうか?まずは国内におけるSDGsの現状について確認しましょう。
帝国データバンクの調査によると、国内企業のうち24.4%が「SDGsに積極的に取り組んでいる」ことがわかっています。SDGsの17目標のうち、「現在、力を入れている項目」は、「8.働きがいも経済成長も」が27.1%でトップとなりました。次いで「7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに」(15.9%)、「12.つくる責任つかう責任」(14.8%)が続いています。
また、SDGsの達成への貢献によって向上される企業価値では、「企業好感度」が53.3%でトップでした。ほかに、「社会的評価」も50.4%で半数超となり、これらのデータから調査報告書では「SDGsによって社外からの見られ方に好影響があるとの意見が強い」との見解が示されています。
現在、SDGsは、企業だけでなく学校や自治体など、さまざまなコミュニティで、ベーシックなプログラムのひとつとして取り扱われています。SDGsの達成期限とされている2030年まで、残すところあと約10年。今後は、学校や地域でSDGsを学んだ子どもや学生が社会に参画するようになり、より深く、広く、SDGsに関する活動が普及していくと見られています。
「SDGsへの取り組みの評価が高い企業」は、どんなことをしているのか
次にSDGsに取り組む国内企業の評価や活動事例について見ていきましょう。「DIAMOND Online」が約1万人の消費者を対象に行なったアンケート調査「SDGsへの取り組みの評価が高い企業ランキング2020」によると、1位がトヨタ自動車(18.6点)、2位がアサヒビール(16.2)点、3位が旭化成(15.9点)という結果になりました。
1位のトヨタ自動車は「交通事故死傷者数ゼロ」「渋滞のない快適な移動」「移動弱者不在」「電源としても活躍するクルマの普及」「水素活用によるエネルギーの多様化」などを目指し、積極的に次世代モビリティや電気自動車の開発に取り組んでいます。
2位のアサヒビールは、全工場で製造するすべての「アサヒスーパードライ」などの製造に、環境に配慮したエネルギーである「グリーン電力」を活用しています。他にも、容器包装の軽量化・簡素化を進めたり、パナソニックと協働で「森のタンブラー」という名称のエコカップを開発したりと積極的に環境に配慮した活動を推し進め、同時に国際協力機構(JICA)と協力して、開発途上国における農薬問題の解決にも乗り出しました。
3位の旭化成は、「健康で快適な生活」と「環境との共生」を柱にしてSDGsへの取り組みを行っています。60年以上の長寿命を誇る自社ブランド「へーベルハウス」を通して、断熱性能の高い省エネ設計の住宅を提供したり、廃棄物の削減に取り組んだりと、SDGs目標に対応する多くの取り組みを展開しています。
ほかに、ランク外ではありますが、5GやVR、水中ドローンなどの先端技術を活用して海の自然を守るための遠隔校外学習を行っている富士通、繰り返し使える引っ越し用梱包資材「エコ楽ボックス」を開発したアート引越センター、JICAと連携しバングラデシュの小学校で公文式学習を採り入れるプロジェクトを実施している公文教育研究会など、優良事例は枚挙にいとまがありません。
国内企業の取り組み事例は、外務省が運営する「JAPAN SDGs Action Platform」や、経済産業省の「SDGsに取り組む中小企業等の先進事例の紹介」ページなどでも網羅的に確認できますので、まずはこれらのウェブサイトを閲覧して、各企業がどのようなことをしているか参照するとよいでしょう。
中小企業は、焦らず急がず、できることから始めよう
ここまで、大企業の事例を観てきました。では中小企業は、いったいどのような取り組みを行なえばよいのでしょうか。
取り掛かりやすいのが、名刺の紙を再生紙に変えることです。他にペットボトルをやめてコップでお茶を出す、エレベーターではなくなるべく階段を使用するといったことも、環境配慮やSDGsにつながります。大げさに考えず、まずは小さなところからルールを決めてスタートし、社員に意識の浸透を図るとよいでしょう。
こうした草の根のルールづくりや啓蒙を進めつつ、「SDGsの推進担当者を決める」「勉強会を実施する」などして意識を醸成する環境をつくり、次第に本来の事業と密接に関わる目標を定めていきます。飲食関連の事業を行っているなら「2.飢餓をゼロに」と紐づいたフードロスの削減活動を始めたり、水産業なら「14.海の豊かさを守ろう」を目標に据えて海辺の清掃活動を行いましょう。多くのSDGs研究者や識者が、論文やメディアで「設立時の思いや事業の根幹に基づいたストーリーのある活動をすること」「できるだけ多くの人を巻き込んでフラットに議論や活動をすること」が、企業の価値向上や活動そのものの成功に結び付くと述べています。
これからは大企業だけでなく、中小企業も、本格的にSDGsを意識した経営を行う必要性が高まっていくでしょう。地球のため、社会のため、そして会社の未来のために。先行事例を参考にしつつ、先送りすることなく、いま、できる活動をスタートさせることが肝要です。
連載記事一覧
- 第1回 社会人なら押さえておきたいSDGsのキホン 2020.10.20 (Tue)
- 第2回 トヨタやアサヒの事例に学ぶ企業価値を上げるSDGs 2021.03.09 (Tue)
- 第3回 約9割の企業が参加、寄附からはじめるSDGs 2021.05.31 (Mon)