健康であることが、良い仕事、良いパフォーマンスにつながります。たとえば中高年に差し掛かると「肥満」には特に注意したいところです。肥満は、体にとって必要以上に脂肪が蓄積している状態をいい、病気ではありません。ところが、糖尿病や痛風、脂肪肝などのさまざまな病気を引き起こす原因の1つになってしまうケースがあります。
よく耳にする「メタボ」もしくは「メタボリックシンドローム」は内臓脂肪が多く、糖尿病をはじめとする生活習慣病になりやすい状況をいいます。その結果、心臓病や脳をはじめとする血管の病気につながりやすくなってしまいます。分かりやすく体の状態でいえば、「内臓脂肪が蓄積されている(へその高さで腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上)に、高血圧、脂質異常、高血糖などが合わさった状態」(国立国際医療研究センター 糖尿病情報センターHPより抜粋)となります。
本記事では、メタボリックシンドロームを予防するための食事の取り方、さらに仕事力を落とさない食事の取り方について紹介します。
肥満とメタボリックシンドロームの違い
肥満とは、体の中に体脂肪が過剰に蓄積された状態をいいます。肥満は2つのタイプに分かれます。男性によく見られるのが「内蔵脂肪型肥満」で、下半身よりもウエスト周りが大きくなるのが特徴です。腹腔(ふくくう)内の腸の周りに脂肪が過剰に蓄積している状態で、生活習慣病を発症するリスクが高くなるといわれています。
もう1つが「皮下脂肪型肥満」で、皮下組織に脂肪が蓄積するタイプです。お尻や太ももなど下半身の肉づきがよくなるのが特徴で、比較的女性に多く見られます。このうち、生活習慣病を発症するリスクが高いのは内蔵脂肪型肥満です。
自分がどのタイプの肥満なのかを判断する前に、まずは肥満度の判定基準になっているBMI(Body Mass Index: 体重(kg)/身長(m)2)を調べてみましょう。体重(kg)を身長(m)で2回割るという簡単な計算です。
例えば、身長170cm、体重70kgのBMIは、70kg÷1.7m÷1.7mとなり、BMIは24.2になります。
BMIの標準値は22.0で、統計上肥満との関連が強い糖尿病・高血圧・高脂血症に最もかかりにくい数値とされています。18.5未満がやせ気味、18.5~24.9を正常、25以上を肥満としています。
一方、メタボリックシンドロームの診断基準は以下の3つの項目からなっています。(1)肥満のタイプが内臓脂肪型かどうか。(2)腹囲(ウエスト)が男性の場合85cm以上、女性の場合90cm以上かどうか。その上で、(3)糖尿病、高血圧、脂質代謝異常のうち2つ以上を併発している状態かどうかです。
(3)に関しては、一般的な基準値として、――血糖は空腹時高血糖が110㎎/dl以上、血圧が最大は130mmHg以上で最小が85mmHg以上、中性脂肪が150mg/dl以上、HDLコレステロール値40mg/dl未満(どちらか一方)が基準値となっています。
BMIだけでは判定できないメタボリックシンドローム
肥満判定基準値のBMIが25未満であっても、メタボリックシンドロームと判断される場合があります。いわゆる隠れ肥満という状態です。自覚しにくい脂肪の付き方には、1年に1回の健康診断で判定してもらうことが有効になります。
よくいわれていることですが、メタボリックシンドロームから発症する疾患は、手遅れの状態になるまで自覚症状がほとんどありません。まずは中高年(40代以上)に差し掛かったら、年に1度の健康診断と、食事や運動などの生活習慣を見つめ直すことがオススメです。
肥満の予防には食事と運動のバランス改善を
肥満の原因は、食事や運動などの生活習慣による影響が大きいと考えられています。肥満を回避するには、食事による摂取エネルギーを減らし、運動による消費エネルギーを増やすことが一番の解決策です。しかし、極端に食事を減らしてしまうと、空腹や栄養不足などが精神面にも悪影響を及ぼし、逆にリバウンドしてしまう場合もあります。まずは、食事を1日3食規則正しく食べるようにしましょう。
働き盛りの中高年のビジネスパーソンにとって、意外に難しいのは「規則正しく」過ごすことではないでしょうか。例えば、仕事が長引き夕食の時間が遅くなったり、朝食を取らず、昼夜にまとめて多めに食べたりする人も多いでしょう。また、夜中に食事を取ると、体は翌日の活動に備えて脂肪を蓄えようとする働きがあるため、太りやすくなります。
理想論をいえば、夜8時までに食事を終えることですが、困難な場合は腹八分目を心がけ、よくかんで食べるようにしましょう。味を感じるようにしっかりかめば、満足感が増し、早食いを防ぐことに役立ちます。満腹感を得やすくなるのです。
同じものばかりを食べる食生活も太りやすくなりますので、糖質(白米、芋類など)、たんぱく質(肉、魚、卵、大豆製品など)、脂質(油、バターなど)をバランスよく摂取し、ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富に含まれる野菜や果物を加えましょう。食物繊維は血糖値の上昇を緩やかにし、食べ過ぎを抑えるといわれています。
デスクワークが多い人で運動する習慣がない場合は、日常動作を積み重ねてエネルギー消費を促しましょう。なるべく歩く、洗濯、掃除、料理といった家事をしたり、子どもと遊んだりなど、毎日の動きの中でエネルギー消費量を増やし、肥満の改善につなげていくのがポイントになります。
仕事力を下げないための食事の取り方
肥満防止だけでなく、仕事力を下げない食事の取り方も紹介します。大事な会議や商談の予定があるときには、開始3時間前までに食事を取ることがオススメです。食事の消化や分解を経て、脳にエネルギー源として使えるようになるためには、3~4時間かかるためです。
脳のエネルギー源として、ご飯、パン、麺類といった炭水化物の摂取は重要になります。しかし、効率よく食べたものをエネルギーへ変えるためには、納豆、ごま、卵、のりといったビタミンB1と一緒に取るようにしましょう。
ビタミンB1が不足すると糖質を分解できずに、乳酸などの疲労物質がたまって疲れやすくなってしまいます。ビタミンB1は水に溶けやすく、熱に弱いため調理中に失われやすい性質がありますので、ビタミンB1を多く含む食材である豚肉、うなぎを食べるのもオススメです。
逆に糖分が多いのに、ビタミンB1は含まれない甘い菓子類や清涼飲料水、インスタント食品をよく食べる人、さらに酒、タバコの習慣がある人は、ビタミンB1の不足を招きます。また糖分の多い間食、脂質の多いインスタント食品は、肥満にもつながるので、控えましょう。
食事の時間や内容が不規則になると肥満を招くだけでなく、夕食の消化活動が就寝中などの適していない時間に行われることで疲れが蓄積する、空腹からイライラを覚えるなどといった仕事の不調につながることもあります。できるだけ規則的に1日3食を食べ、仕事に集中できる体づくりを心がけてください。
※掲載している情報は、記事執筆時点(2018年1月15日)のものです。
連載記事一覧
- 第1回 仕事力を下げない肥満・メタボを予防する食生活 2018.02.15 (Thu)
- 第2回 脳の働きを活かして健康的に中年太りを解消! 2018.03.14 (Wed)