2017.12.18 (Mon)

「釜めし」最前線!(第3回)

信州独自の食材が楽しめる「安曇野釜めし」

posted by 松田 謙太郎

 陶器に入ったユニークな釜めしを紹介する連載第3回は、筆者の実家、長野県松本市に帰省した際に見つけたイイダヤ軒の「安曇野釜めし」を紹介します。

 具材は野沢菜、シメジ、鴨肉の野菜巻き、高野豆腐、シイタケ、ヤマゴボウ、クリ、サクランボ、ウズラ、インゲン。以前紹介した荻野屋の「峠の釜めし」と同じように、具材を別々で調理し、釜によそった茶飯の上に盛り付ける方法の釜めし弁当です。

旅館がルーツの駅弁屋が作る「安曇野釜めし」

 「安曇野釜めし」はJR松本駅と、松本駅に乗り入れる特急あずさ車内で販売している駅弁です。販売しているイイダヤ軒は、松本市内にある飯田屋旅館(現・ホテル飯田屋)の2代目社長が、1920(大正9)年6月に名古屋鉄道局の許可を得て、松本駅(当時は国鉄)にて駅弁の販売を始めました。その後1949(昭和24)年には、弁当部を旅館業から独立させて、現在のイイダヤ軒を設立。JR松本駅の近隣では立ち食いソバのお店も展開しています。

 イイダヤ軒は10種類以上の駅弁を販売していますが、その中で唯一陶器の器に入っているのが安曇野釜めしなのです。釜の形はオーソドックスなタイプです。

信州の独特の食材であるヤマゴボウと凍み豆腐

 安曇野釜めしの具材は、「ザ・信州」というくらいに地元の食材で彩られています。茶飯の米はもちろん地元産の安曇野産米。ヤマゴボウは長野県産で、山野に自生しているキク科のモリアザミの根になります。ゴボウに形が似ていることから「ヤマゴボウ」と呼ばれるようになり、菊ゴボウ、アザミゴボウという別名もあります。そのままではアクが強いので、よく煮てアク抜きをした上で、特製のタレでしっかり味付けをします。お茶請けなどにもなります。

 余談ですが、長野県出身の私にとってヤマゴボウは、日本全国で入手しやすい食材だと思っていましたが、東京ではなかなか手に入れることはできないようです。地元を離れてから信州の郷土食ということを知りました。

 次に豆腐です。和歌山県高野山の名産品として知られる「高野豆腐」と呼ばれる食材ですが、ここ長野県には「凍み(しみ)豆腐」という佐久地方の郷土食がありますので、凍み豆腐としておきます。

 薄く切り分けた豆腐を、一晩屋外で凍らせた後に、1週間から10日ほど屋外に干したものです。冬季に干すため昼夜の寒暖差で凍る、溶けるの繰り返しによる製法が特徴で、干しても溶かさない製法の高野豆腐とは対照的です。長野で高野豆腐といえば、この凍み豆腐のことを意味します。ダシを吸わせると、とても柔らかくなります。

しっかりとした味の鴨肉と野沢菜のしょうゆいため

 ではフタを開けて、上に載せられた具材から食べていきましょう。鴨肉の野菜巻きは、肉厚でジューシーです。鴨肉から出る肉汁を中に巻かれているインゲン、ゴボウ、ニンジンが吸収して、かぶりつくと野菜に染み込んだうまみが口中に広がります。

 「野沢菜油いため」はインパクト大です。野沢菜も長野県北部の名産ですが、油とよく合います。釜めしの中でも野沢菜の味と、シャキシャキ感のある歯ごたえが、アクセントになっています。

フタのみがプラスチック製

具材は容器にびっしりと詰まっていて、「目で見て楽しい」という駅弁釜めしです。オレンジの具材がヤマゴボウ、サクランボ手前にあるのが凍み豆腐です

長野では野沢菜を油でいためたものを、酒のツマミ、お茶漬けの具として食しています。漬物にした野沢菜漬けは、抗ガン作用、免疫活性作用のある乳酸菌発酵食品という研究が発表され、健康に良い食品として注目を集めています

 

 安曇野釜めしは、ヤマゴボウ、野沢菜といった有名な山の幸と、合鴨や高野豆腐という信州にゆかりのある逸品が1つの陶器に載っています。釜のフタを開けたときに旅のワクワク感が湧き上がるのと同時に、私のような地元出身者は、信州に帰ってきた!という実感がこみ上げてきます。特急あずさに乗車して松本駅を通過・下車する際には、信州の味を堪能できる釜めし駅弁として購入してみてください。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2017年11月3日)のものです

松田 謙太郎

松田 謙太郎

1979年、長野県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了後、経済団体に就職。検定試験の企画・運営、中小企業のコンサルティング、経営相談・融資に留まらず、経済法規、経済政策、税制などの要望書の作成業務を行う。その後、独立開業しフリーライター業と講師業を始める。旧姓・松本謙太郎名義の記事多数。

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