サーバーを、支店や拠点ごとに管理している企業は珍しくありません。ひと昔前、社内LANなどの普及が進んだ時は、部署内や支店内だけで完結すればよく、コストも安く済ますことができました。各部署で独自のシステムを作るのはそれほど手間がかからず、また使用する情報機器も少なかったのです。
しかし、企業の情報管理のほとんどすべてをICTで行うようになった現代、部署や拠点ごとに異なる方法で管理していたのでは、非常に煩雑です。
ここでは、仮想化サーバーを利用し、効率化に管理する方法を考えてみます。
効率化が、非効率を生む!?
パソコンが普及しはじめた黎明期には、社内業務の効率化のために、パソコン同士の接続、つまり社内LANを構築した企業も多いでしょう。これにより、部署や拠点内で営業日報をパソコン上で提出したり、データを共有することが可能になりました。
当時、これはこれで便利なシステムだったのですが、ICTの発達により、さらに多くの業務を電子データで管理・処理しなくてはならなくなりました。また、各部署にハードウェアを用意しているため、それらを管理する手間も増えてきました。
こうした手間を省くためには、「仮想化」によってサーバーを集約し、ムダをなくすという方法があります。
ある中堅企業のA社では、部署や拠点を合わせて約130台のサーバーを保有していました。ただ、それぞれのサーバーにかかる負荷はまちまちで、柔軟に運用しているとはとても言い切れない状況でした。
そこで、仮想化技術によりリソースを再構成し、TCO(総所有コスト)の削減と、運用管理業務の効率化を目指したのです。もちろん、一朝一夕にサーバー機器を入れ換えることは業務の停止にもつながりかねないので、数年をかけて計画的にサーバーの集約を行いました。A社の集約までの期間は、約5年を要しています。
集約の結果、130台あったサーバーは22台となり、TCOの削減と運用管理業務に大いに寄与しています。また、情報の統合も促進され、これまでは部署ごとに管理していた情報を情報システム部門で一括管理が可能となり、コーポレートガバナンスにも大きな効果を得ることができました。
サーバー仮想化のメリットとは?
サーバーの仮想化で注意しておきたいのが、仮想化するメリットをはっきりさせることです。目的や狙いがはっきりしていないと、何年も費用をかけて移行することは難しいでしょう。
仮想化の1つ目のメリットは、前述したA社の例でもわかるように、社内にある多数のサーバーをコンパクトにまとめることができることです。台数を減らせるのですから、コストの削減にもつながります。まず、社内に何台のサーバーがあり、サーバーの稼働率やCPUなどのリソースの占有具合を調査し、仮想化でどのくらいスリムになるかを見積もりましょう。部門ごとで管理していたサーバーを調査して見える化すると、運用費など多くのムダなコストがかかっていることがわかります。
2つ目のメリットは、安定した処理を実現できるということです。仮想化以前では特定のサーバーに過負荷がかかると、動作が不安定になります。一方で、ほとんど稼働していないサーバーも存在します。例えば、決算期なら経理部門のシステムに大きな負荷がかかるものの、企画部門のシステムは比較的余裕がある場合があります。こんなとき、仮想化によりサーバーを集約しておけば、サーバーのリソースの利用効率を高めることができ、結果として安定した運用が可能となるのです。
まずは仮想化の計画を相談してみよう
サーバーの集約、仮想化は専門知識が必要で、実現の前に、社内の運用状況などのチェックも必要です。ICT関連企業ならともかく、一般の企業でこれらを行うのはたいへんです。
したがって、サーバーの仮想化を考えたら、まず専門家に相談することをオススメします。サーバーの集約化はコスト削減の効果が大きく、またそのほかの効果も絶大なので、社内の理解も得られやすいはずです。
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