総務省が発表した「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数のポイント」によると、2020年1月1日現在、日本の総人口は1億2427万1318人と11年連続で減少。調査開始以降最大の減少数となっています。深刻さを増す労働人口の減少に対する補完策として注目を集めているのが、ロボットを用いた作業の自動化とその一翼を担うRPAなのです。
今回は、RPAの導入を検討中の方に向けて、RPAの基礎知識から導入の方法、成功事例などをわかりやすく解説します。
◆目次
業務の効率化に必須なツール「RPA」とは?
企業や自治体での導入が進むRPA
RPAの得意分野と不得意分野とは?
RPAを導入するメリットとデメリット
大きく2つあるRPAツールの種類
RPAで失敗しないために抑えるべき導入手順
RPA導入によって業務効率化に成功した事例
サポートもついて安心! NTT東日本の「おまかせRPA」とは?
まとめ
業務の効率化に必須なツール「RPA」とは?
RPA(Robotic Process Automation)とは、従来は人間がコンピュータ上で行う定型業務を自動化する技術のこと。今まで長時間かけて手入力で行っていた仕事をソフトウェアロボットが記憶し、人間に代わって実行してくることから、デジタルレイバー(仮想知的労働者)とも表現されています。そんなRPAが今、人口減少による労働者不足、「働き方改革」を実現するためのツールとして注目を集めています。
こんな問題で困っていませんか?
Excel化された売上一覧表や商品情報などの内容を、別の基幹システムに転記したり、FAXで届いた発注書などの内容を手入力でシステムに登録したりするような、単純で定型化されたバックオフィス業務は多くあります。
「入力を専門に行うスタッフがいるわけではなく、従業員が他の業務と兼任で担当しているが、時間がかかる作業なので残業が増えてしまう」
「従業員の疲労が重なり、手入力時にミスが発生し、やり直しなどの悪循環が続いている」
「新規で専任スタッフを雇用する余裕はないし、このままでは社員の健康やモチベーションにも影響を与えてしまいそう」
こんな問題をかかえながらも、解決に向けた対策が遅れている企業は少なくないのではないでしょうか。
そんな問題解決に最適なツールが「RPA」です
日々、ルーティンで行われるコンピュータ上の作業や比較的簡単な入力業務などを、ロボットがシミュレートし、人間に代わって実行してくれるのがRPAです。作業を担うのはロボットですから、24時間365日の稼働が可能。迅速かつ正確に処理を行うことで、従業員不足や業務の負担を軽減させるとともに、コスト削減や生産性の向上を実現してくれます。
マクロやVBA、AIとの違いは?
まず、「マクロ」とは特定のソフトウェア に搭載された自動化機能のことです。Microsoft社のExcelを例に挙げると、規定のシートへのコピー&ペーストやセルへの記入などが自動化できますが、操作できるのは基本的に同ソフトウェア上での処理だけです。
「VBA」も「マクロ」と同じようにMicrosoft Officeに含まれる拡張機能で、定型的な作業や処理などを自動化できます。ただし、管理するデータが複数ある場合には、データを並べ替えるなどの複雑な処理が発生しますし、プログラミングなどの知識が必要になってしまいます。
一方、RPAの場合、利用者は複雑なシステムの構築やプログラミングを行う必要はありません。どのような業務を行わせるか、チャートなどを用いながらシナリオを組むだけですから、専門知識がなくても処理を自動化できます。
AIとの大きな違いは、RPAがインプットされた指示に沿って業務を実行するだけなのに対して、「AI」には学習能力があることです。最近では、あらかじめAIが組み込まれたRPAや、AIと組み合わせて使用するRPAもあります。
導入実績豊富なRPAツールにNTT東日本ならではの充実したサポートつき 作業自動化サービス「おまかせRPA」
企業や自治体で導入が進むRPA
企業や自治体では「働き方改革」として労働の効率化を推進する必要性に迫られています。そこで今、人間の業務を代行し、生産性の向上が図られるRPAに注目が集まり、導入が進んでいるのです。
企業のRPA導入率は30%を超える
MM総研が2020年1月に発表した「RPA国内利用動向調査2020」によると、2019年11月時点での企業のRPA導入率は38%となっています。2018年6月時点での調査では22%だったことを考えると、わずか1年半で16ポイントも増加したことが分かります。
また、年商1,000億円を超える大手企業に至っては導入率が51%と、すでに過半数に達しているのです。この数字からも多くの企業が、業務効率化を推進するツールとしてRPAの活用に積極的なことが見て取れます。また調査では、AIとRPAのセットでの活用が進んでいることもわかります。
参考・出典:RPA国内利用動向調査2020│MM総研
https://www.m2ri.jp/release/detail.html?id=391
都道府県レベルではRPAの導入率は80%越え、市区町村では差異も
総務省の資料によると、2019年度時点における都道府県でのRPA導入率は85%に達しています。2018年度の調査では導入率が30%に過ぎなかったことを考えると、ものすごい勢いで急増していることが分かります。また、指定都市でも40%(2018年度)から70%(2019年度)に増加しています。
しかし、市区町村に目を転じると状況は異なり、2019年度時点の導入率は18%にとどまっています。政府では、中小規模の自治体でもRPA導入によって作業時間の大幅な削減、業務効率化が実現できていることから、RPAの導入を積極的に推奨しています。
参考・出典:自治体におけるRPA導入のすすめ│総務省
https://www.soumu.go.jp/main_content/000731626.pdf
RPAの得意分野と不得意分野とは?
注目されるRPAですが必ずしも万能なツールとは限りません。得意分野と不得意分野があります。導入にあたってはそれをあらかじめ理解しておくことが重要です。
RPAが得意なこと
ルール化されているルーティン業務
RPAは決められた作業フローやルールに基づく単純な反復作業を得意としています。例えば、大量なデータをコピー&ペーストする作業、大量のデータのダウンロードやアップロード作業、一斉メールの配信、決まった種類のグラフや表の作成、提出書類に不備がないかのチェック、社内の基幹システムに情報を報告・登録するなどの業務が挙げられます。
パソコンのみで完結する業務
RPAはパソコンにソフトとしてインストールして利用するのが基本です。そのため、パソコン上からスタートして最終的にパソコン操作で完結する業務に適しています。例えば、社員への一斉メール配信、請求書の作成や印刷、大量のデータを取りまとめるといった、繰り返し行われる単純な作業で大きな効果を発揮することが期待できます。
RPAが苦手なこと、できないこと
ルール化されていない非定型業務
RPAは最初に設定したルール以外のことには対応できないため、あらかじめ組み込まれた業務を反復して実行することしかできません。そのため、定められたルールやフローがないような非定型業務の自動化は困難です。
判断や思考を求められる業務
複雑な判断や思考、分析を求められたり、途中で人の判断が介在するような業務の自動化も困難です。「これは必要か? 必要ではないのか?」といった応用的な判断を必要とする処理はRPAには不向きです。
RPAを導入するメリットとデメリット
ここでは、RPAを活用することで得られる業務上のメリットとデメリットについて解説します。
RPAのメリット
人的ミスを防ぐ
設定したルールに従って自動化処理を行うため、手入力による作業時のような人的ミスは起こりません。
業務処理のスピード化
手作業に比べて圧倒的にスピーディーで正確な処理が可能です。また、人間のように休憩を取る必要もありませんし、終業後や休日など24時間365日の稼働が可能です。
生産性の向上
これまで手入力の処理に取られていた時間がなくなるため、他の作業やクリエイティブな業務に取り組めるようになることで、社員一人あたりの生産性の向上が期待できます。
コスト削減
人間が行っていた作業をRPAが代行するため、社員を増やす必要がなく、人件費や採用・教育にかかっていた費用と時間を大幅に削減できます。
働き方改革の推進
現状の人員で、より生産性の向上が期待できることから、労働時間の短縮や負担の軽減につながります。結果、労働環境の改善、働き方改革の推進につながります。
RPAのデメリット
例外的な作業に弱い
頻繁に手順の変更が行われたり例外的な処理を行わせてしまうと、途中で停止したりエラーを起こすことがあります。そのようなケースでは人が待機して状況を常にチェックする必要があるため、「完全な自動化」の実現は難しい場合もあります。
不正アクセスによる情報漏えい
コンピュータ上での処理となるため、プログラムの不具合や人的ミスから、不正アクセスによる被害を受ける可能性はゼロではありません。代表的なものとしては、サイバー攻撃によるRPAの「乗っとり」やそれに伴う「機密情報へのアクセスと漏えい」が挙げられます。トラブルを未然に防ぐにはセキュリティ対策が重要です。
大きく2つあるRPAツールの種類
RPAツールは2種類に大別されます。自社の業務とのマッチングや導入コストに合わせて検討する必要があるでしょう。また近年はAI-OCRとの併用もよく見られるようになりました。
クラウド型
ネット環境があれば、どこでも利用可能なインターネット上でサービスを利用するタイプ。導入時のコストを抑えられるので、まずはスモールスタートでRPAを試したいと考えている企業や、すでに複数のクラウドサービスを業務で利用している場合に向いています。ただし、基本的に自動化できるのはブラウザ上での作業に限定されます。
オンプレミス型
自社内の専用サーバーやパソコンにRPAツールをインストールして運用するタイプ。セキュリティ面に優れ、社内の他のシステムと連携させるなどのカスタマイズも可能です。クラウド型と違い、多くの処理を自動化できるメリットがありますが、できることが多い半面、設定によっては情報漏えいリスクにつながるケースもあるので注意が必要です。
RPAと組み合わせることで業務効率を上げるツール「AI OCR」
コロナ禍においてもテレワークが行えず、出社せざるをなかった人の多くは紙の帳票作業を行うためだったといわれています。働き方改革や業務効率化の推進を阻む障壁となっているのが、まさに紙に関連する業務といえるでしょう。
紙文書をデジタルデータ化するAI-OCRとRPAを組み合わせることで、処理の自動化が可能となるため、在宅ワークの実現や業務効率の向上、労働環境の改善が期待できます。
RPAとOCRでどれだけコスト削減が見込める? 「導入効果シミュレーター」
RPAで失敗しないために押さえるべき導入手順
RPAを本格導入するにあたって、事前に行うべき手順について紹介します。
自動化したい(できる)業務の選択と決定
上述したとおり、RPAはすべての業務を自動化できるわけではなく、向き不向きがあります。まずは、現在の業務プロセスの中で自動化したいもの、自動化できると思われる業務をピックアップし、その中から業務負担の高いものを選び、決定します。
業務に適したRPAツールを検討
自社の状況や目的を達成するために必要な機能やサポートが備わっているRPAツールを探して、導入の検討を行います。
テスト導入して効果検証を行う
RPAベンダーの無料トライアルなどを利用して、実際にRPAツールによる自動化を実施してみます。使い勝手などの検証結果から改めて要件などを定義し、自社の業務に最適なものを選択することで、本格導入後のトラブルやリスクを回避できます。
まずはスモールスタートし、実際に稼働しながら様子を見つつ他業務への展開を検討することをおすすめします。
RPAツールの機能や価格を徹底比較! 失敗しないための導入ポイントを解説
RPA導入によって業務効率化に成功した事例
1日に最大6,000件の入力業務を自動化│武蔵野市
「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」として実施が決定した「特別定額給付金」。東京・武蔵野市では、約7万8,000世帯の申請情報のシステムへの入力作業を、いかに効率よく、スピーディーに進めるかが課題となっていました。
この課題解決に向け、武蔵野市ではAI-OCRとRPAの導入を決定。申請書をスキャンしてAI-OCRへアップロードしてデータ化。その読み取り結果を職員が目視チェックし、誤りを手補正したのち、RPAで特別定額給付金システムへ自動入力する業務フローを確立しました。これにより、従来の手入力の約4倍の処理速度で給付が可能となり、都内の自治体でもトップレベルの迅速さで給付を実現しました。
稼働時間を約8割削減│辻・本郷税理士法人
全国に64拠点、海外に6拠点を有する辻・本郷税理士法人では、膨大な帳票の転記作業と紙資料の保管・管理にかかるコストが大きな課題となっていました。
そこで、ペーパーレス化と業務効率化を実現する新しい業務フローの構築にあたって、AI-OCRとRPAの導入を決定。それにより、これまで通帳のコピーからExcelへの入力、紙での保管という一連の業務を通帳一冊につき約54分かけていたところを、約10分に大幅短縮。また、ペーパーレス化によって紙書類の保管や処理にかかるコストの削減を実現しました。
読み取り精度は96.71%! AI技術を使ったOCRサービス「AIよみと〜る」
サポートもついて安心! NTT東日本の「おまかせRPA」とは?
「おまかせRPA」とは、導入実績5,000社以上を誇るRPAツール「WinActor」を採用した業務効率化ソリューションです。
Windows端末上のあらゆる業務を自動化できるため、作業時間や人的コストの削減、業務の品質向上などが期待できます。さらには、シナリオ作成や操作方法など導入から運用まで、NTT東日本が充実のサポートを提供。パソコン1台、1ライセンスから導入可能な手軽さも、おすすめのポイントです。
もちろん、AI-OCRとの連携で紙の帳票入力作業も自動化可能です。
まとめ
本記事では、RPAの基本から導入のメリット、デメリット、成功事例などをお伝えしてきました。RPAの導入を成功させるには、事前の「業務の整理」と「業務の見極め」が重要です。できることとできないことを把握したうえで、どの業務を自動化するのか優先順位を決めていきましょう。
本格導入する前にテスト導入が有効ですが、実はこのテスト導入時にはトラブルがつきもの。だからこそ、万が一の時にも安心できるサポート体制がしっかりしたツールを選択することがトラブル回避につながり、結果的に業務効率の向上に寄与します。
働き方改革の推進、その第一歩としてRPAは必須のツールです。導入をご検討の際はぜひNTT東日本にご相談ください。
連載記事一覧
- 第1回 OCRとは? 仕組みや導入事例までをわかりやすく紹介 2021.08.25 (Wed)
- 第2回 AI-OCRとは? 基礎知識から導入のメリット、成功事例を紹介! 2021.08.25 (Wed)
- 第3回 RPAとは? メリット、デメリットから導入事例までを一挙紹介! 2021.08.25 (Wed)
- 第4回 RPAツールの機能や価格を徹底比較! 失敗しないための導入ポイントを解説 2021.10.04 (Mon)