これからの時代を生き抜く能力や資質を身につけるために、教育のICT化が推進されています。2020年度から実施される新学習指導要領にもその方針は取り入れられ、教育現場におけるICTの活用が強く求められています。
文部科学省が策定した「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画(2018~2022年度)」では、3クラスに1クラス分の学習者用PCを整備すること、教員には1人1台の指導者用PCが与えられること、高速インターネットや大型の提示装置が100%整備されていること、などのICT環境整備の具体的な水準が示されています。
こうしたICT環境整備の原資としては、2018年度から2022年度まで単年度1,805億円の地方財政措置を講じるとされ、新学習指導要領に明記されている「コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用するために必要な環境を整え、これらを適切に活用した学習活動の充実を図ること」という目標を達成する舞台は整いつつあります。
ハードの整備はゴールではなくスタート
もちろん、教育のICT化はハード面でのICT環境の整備だけで達成できるわけではありません。整備されたICTの環境をどう使っていくのかがポイントです。最近は教員の長時間労働を改善するための働き方改革を推進するため、バックヤード業務である「校務」などのICT活用も注目されています。しかし、あくまでも本丸は、教育現場でICTを活用して質の高い教育を実現することです。
すでに大きな電子黒板やプロジェクターを使って、資料や教科書を投影したり、児童生徒にタブレットを渡してインターネットでの調べ学習を行わせたりといった スタイルを取り入れている学校も少なくありません。
しかし、今求められているのは、児童生徒の興味・関心をより高め、効果的な授業を行うためのICTの活用です。それも一部のICTリテラシーの高い教員だけでなく、すべての教員にICTを活用した高レベルの授業が求められています。それが実現できなければ、せっかく整備したICT環境も“宝の持ち腐れ”になりかねません。そのためには何が必要なのでしょうか。
授業支援アプリのメリットを生かした授業へ
単に教室に電子黒板があって、児童生徒がそれぞれタブレットを持っているだけでは、ICTを活用した効果的な授業スタイルは実現できません。
<アプリで実現できる授業スタイルの一例>
●子どもたちの理解度に合った独自教材
現在、授業で使う教材は教員それぞれに一任されています。アプリを活用すると、アプリが提供する雛形教材があるため、教員はそれをベースに子どもたちの理解度に合わせた独自の教材を作成することができます。また、教員間でそれぞれの独自教材を共有し合うことで教員同士の情報交換も生まれ、効果的なコンテンツを作るモチベーションアップにもつながります。
●相互のコミュニケーションの活発化
児童生徒の画面を一覧表示することで、個々の考えや意見を一斉にクラスで共有できます。また、考えの違う児童生徒の画面を比較表示し、相互の考えや意見について話し合うこともできます。
このように授業の進行に合わせて、教員が子どもたちの理解を深めていけるような授業支援アプリがICT利活用では実現可能です。
また、教員だけでなく、児童生徒の書き込みを取り込む機能も必要です。これにより児童生徒一人ひとりの授業参加の気持ちを高められます。児童生徒の書き込みを一覧表示する機能を備えていれば、他の人の疑問点や感想などが分かるので、児童生徒が考えを深めることにつながります。
教員が授業全体をコントロールできて、授業後には振り返りができる機能も学習の効率を上げます。コンテンツの配布や回収、書き込みデータの保存機能などが、それにあたります。こうしたアクションを簡単に行えるのも、授業支援アプリを活用するメリットです。
数ある授業支援アプリの中から、上記のような機能を備えた授業支援アプリを選択し、導入を進めるのが、教育のICT化の重要なポイントです。ハード面では教育のICT化は進みつつあります。今後はそのハードをいかに生かすかが問われます。そのためには、適切な授業支援アプリの選択、導入が欠かせません。アプリ採用の際は、教育現場の声に真剣に耳を傾け、楽しく効果的な授業の実現はもとより、教員の授業進行の手助けになるアプリを選びましょう。
連載記事一覧
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