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最近、「地方創生」がよく取り上げられていますが「自治体で地方創生に取り組みたいが、何をすれば良いか分からない」とお悩みの自治体担当者さまがいらっしゃるのではないでしょうか。
地方創生にはさまざまな方法や事例があり、一概にこれをすれば成功するといった案はありません。しかし、他エリアで成功した事例をもとに成功パターンを把握することで、より適切な施策を実施できるようになります。
そこで今回の記事では、地方創生の取り組みの成功事例を解説します。自治体の地方創生を考えている、また、取り組み方法を悩んでいるという方は、これから施策を検討する際に役に立つ内容になっているので、ぜひ最後までお読みください。
1.地方創生の取り組みはどんなものがある?
地方創生の取り組みには、いくつかのパターンがあります。それぞれの地域に合った施策を実施する必要があるので、取り組みの成功パターンを理解することが大切です。
ここでは、地方創生における取り組みパターンを4つ解説します。
- 資源の活用
- 伝統工芸などの活用
- 芸術・メディアの活用
- 民間企業との協力
自分の自治体に当てはまりやすいものはどれか確認をしましょう。
1-1.資源の活用
地域の資源を活用して、地方創生に活かすパターンがあります。地域に属する山や海、川などの自然を利用して、誘致することが多いです。場合によっては、気候や自然現象などに注目して活用している自治体もあります。
特に都心部から離れた地方では、自然の資源の利用がしやすい点や地形によっては独自性をだしやすい点がメリットとして挙げられます。
新しく施設などを作り出すことに資金をかけるだけでなく、資源を活用していくことが町おこしにかかるコストや手間を低減させます。
1-2.伝統工芸などの活用
地域で昔から作られている伝統工芸を活かすパターンがあります。代々受け継がれてきた技術による伝統工芸品は、ほかの地方では再現できない独自性が生まれます。
職人の技術を町おこしの主軸にし、雰囲気づくりをメインとすることで、伝統工芸を活用したまちづくりの実現が可能です。実際に伝統工芸を体験できるプランや観たり触れたりできる施設を設置することで、観光客の名所としてPRすることもできます。
近年では、SNSの流行により写真や口コミで情報が拡散されやすいといったメリットがあるので、伝統工芸の良さや特徴が広めやすい環境が整っています。
1-3.芸術・メディアの活用
芸術やアート、メディアを活用した地方創生の取り組みパターンがあります。主に美術祭や映画などを軸にした取り組みです。
芸術をテーマにしたイベントの開催や展示会などを行うことで、地域へと足を運んでもらえます。さらに文化の町として知名度が上がることで、分野ごと興味のある人を誘致することが期待できるでしょう。
1-4.民間企業との協力
地元の民間企業と協力のもと、地方創生に取り組んでいるパターンも多いです。民間企業との協力は、自治体の強みや資源だけでは誘致が難しい場合や、自治体内に認知度の高い企業がある場合に効果的です。
専門分野である民間企業に依頼することで、自治体に特産物や伝統工芸の知見や加工技術がない場合でも、新しい商品の開発やサービスの発信が可能です。また、民間企業側も商品の販売や認知度拡大につながり、より地域の産業が活性化するメリットもあります。
地域の活性化とまちおこしへの貢献に前向きな企業を見つけることで、より効果的に地方創生の取り組みを行えます。
NTT東日本では地方創生を支える「REIWAプロジェクト」は地方創生を支えるサービスであり、
地域が抱える課題に対して、IoTやAIなどの多彩なICTアセットを活用した適切なサービスやソリューションを提供します。地方創生の取り組みに悩んでいる担当者は、ぜひ検討してみてください。
2.地方創生取り組みの成功事例5選
地方創生取り組みの実際の成功事例を5つ説明します。自身の自治体の課題に沿った解決策をイメージしましょう。
2-1.長野県阿智村
長野県の阿智村はきれいな星空に着目して、夜空の光り輝く星を利用した取り組みを行うことで、地域の魅力を最大限に表現することに成功しました。
環境省が行う全国星空継続観測で、最も星が輝いている場所と認定された実績をもとに「日本一の星空の村」として発信を行い「日本一の星空ナイトツアー」やフォトコンテストなどのイベントの開催で、着実に認知を広げました。現在では「日本一の星空ナイトツアー」には年間約6万人の観光客が訪れるようになりました。
きれいな星空という豊かな自然が特徴的な阿智村だからこそできる、都心部では表現できない取り組みで注目を浴びたのです。星空という自然の資源を活用した、地方創生の取り組みパターンだといえます。
2-2.福井県鯖江市
メガネフレームの生産量日本一を誇る福井県の鯖江市は「メガネ」を利用した地域活性化に取り組みました。
全国のメガネ好きが集まる「めがねフェス」の開催や、メガネの手作り体験ができる「めがねミュージアム」の設立など、メガネをより身近に感じさせる施設やイベントを積極的に実現することで、「メガネ = 鯖江市」という認知を定着させることに成功したのです。
さらに、産地ブランドである「THE291」(ザ・フクイ)が創立され、消費者だけでなく、国内外への事業者への認知拡大も図りました。伝統工芸であるメガネブランドを活用した地方創生のパターンであるといえます。
2-3.香川県直島(瀬戸内)
香川県直島では、島全体をまるごと美術館に見立てるという施策を実施し、現代アートの島として認知度が上がりました。
アートや芸術などに携わっている方を中心に「瀬戸内国際芸術祭」などの、地域の魅力を高めるためのイベントを積極的に開催することで、多くの観光客が訪れる島になりました。その結果、観光客や長期滞在している芸術家の方々が島の魅力を発信・拡散してくれるなどのメリットが多く生まれました。
また、草間彌生さんが作成したカボチャのオブジェが有名で、芸術家のみならず、映える写真が撮りたい若者たちがSNSの投稿を通して直島を知ることで、観光客の足並みを増加させました。
イベント開催時のみならず通年で観光客が訪れる観光名所として知られるようになったのです。芸術品を活用した地方創生が成功したパターンです。
2-4.宮崎県都城市
宮崎県都城市では、地元の水と南九州のさつまいもを使用している地元の酒造メーカーに着目し、自治体への協力体制を構築しました。
お酒の売上を伸ばしたい企業と地方創生に取り組みたい自治体の互いがメリットになるように、ふるさと納税の返礼品として商品を提供、都心部での電車広告などの施策を中心に行い、認知度拡大を図りました。
その結果、認知度が向上して企業の売上アップにも貢献することとなりました。また、ふるさと納税の増加や地域観光客の増加にもつながり、地方創生の取り組みとして効果を発揮しました。民間企業と協力することで、地方創生の取り組みが成功したパターンといえます。
2-5.徳島県神山町
徳島県神山町では、地域や企業、NPOや行政が一体となって「とくしまサテライトオフィスプロジェクト」を推進することで移住民の増加や地域の発展につなげました。
2010年から企業と自治体が協力し、サテライトオフィスの設置とWebサイトを中心とした誘致で、サテライトオフィスの町として認知が上がったことがキッカケです。都心部の企業が神山町にサテライトオフィスを設置することで、テレワークの推進や事業規模の拡大にもつながり、コロナ禍においては注目を浴びることとなりました。
企業との積極的な協力が時代の新しい流れを作るとともに、神山町の認知度の向上につながりました。民間企業の協力を得た事例の1つといえます。
3.地方創生取り組みの成功例の共通点3選
成功事例から分かる地方創生の取り組みの共通点が3つあります。
- 資源や強みの徹底的な活用
- 現状ある資源の活用
- 中長期での実現を見越しての戦略設計
3つの共通点を理解して、地方創生の取り組みに活かしましょう。
3-1.資源や強みの徹底的な活用
成功するための共通点として、地域の資源や強みを活用することが挙げられます。ほかの地域では真似できない強みをうちだすことで差別化を図り、より効果的な地方創生の取り組みを行えます。
そのためには「自身の地域の強みはどのような点なのか」また「なぜ強みになるのか」を考え、施策を計画する必要があります。強みを理解して「どのように表現するか」「地域を認知した人をどのように動かすか」の観点が大事になります。
3-2.現状ある資源の活用
地域の魅力を表現するためには、新しい資源を見つけるのではなく、今ある資源の新しい表現の方法を見つける必要があります。有形無形にかかわらず、人々が興味をもつ内容や思わず惹かれてしまうことであれば問題はないでしょう。
しかし、自身の自治体のみでは自身の地域の資源や強みに気づくのが難しいことがあります。
そういった場合、訪れた観光客のデータを収集して分析することによって「なぜ自分たちの地域を選んで訪れてくれたのか」という理由や根拠を明らかにでき、地方創生の取り組みのヒントが得られるかもしれません。自分たちが自信を持って発信できる強みを見つけることが重要です。
3-3.中長期での実現を見越しての戦略設計
地方創生の取り組みにおいて成功の秘訣として、中長期的な計画を継続することが大切です。上記の成功事例でも、長年継続することで徐々に認知度が拡大し、結果として多くの人の行動を後押しすることにつながりました。
焦って短期間で戦略を変えてしまうと、芽がでないまま終わってしまうこともしばしばあります。「自分たちの自治体は地方創生としてこれに取り組む」と計画して決めたものは、一定の成果が見えるまで続けて活動をしていくことが重要です。
しかし、見当外れな施策は時間と労力、資金を失うだけになってしまうので注意する必要があります。
4.地方創生はどうあるべきか?3つの視点
地方創生の取り組みはどうあるべきか、3つの視点から説明します。
- IoT・ICTの導入で資源や強みを把握
- 徹底的なデータ分析
- データに基づいた施策
地方創生の取り組みに必要なことを述べてきましたが、実際に取り組む際には、データを活用して分析をしてみないと不明な点は多いです。この章では地方創生の取り組みに必要なデータ分析について解説します。
4-1.IoT・ICTの導入で資源や強みを把握
IoTやICTを導入することで、地域の資源や強みを把握できます。強みを把握することの一番の近道はデータを抽出し、分析することです。さまざまなデータを分析し、他自治体と比較することで、強みを発見することにつながります。
今までデータ分析を行ってこなかった自治体や、重視していなかった自治体は、IoTやICTを導入することで自分たちでは見つけることのできなかった強みが新たに発見されることもあります。資源や強みを把握するためにはデータ分析が必要不可欠です。
4-2.徹底的なデータ分析
データを抽出し、分析を徹底することで、資源の有効的な活用方法を見出せます。
強みや資源を把握できても、再現性の高いより効果的な施策を実施できないと地方創生の取り組みとして力を発揮できないことがあります。データを徹底的に分析することで、資源を利用する方法や有効な活用が可能になります。
4-3.データに基づいた施策
データを徹底的に分析することで、信頼性の高い施策を中長期に渡って常に改善を繰り返しながら行えます。
成功事例を同じように実行しても、成功する可能性が低い場合があります。成功要因を細かく分析して、参考にできる部分のみをデータで調べて再現していくことが重要です。データに基づいた取り組みの実施ができていない場合は、まずデータの分析から始める必要があります。
5.IoT・ICTで地方創生の新しい未来を作る「REIWAプロジェクト」
地方創生とは、地域ごとの特徴を活かして日本全体の活力を向上させる取り組みです。成功させるには今までの事例を参考にするだけでなく、自身の自治体の強みを見直したり、デジタル技術を導入したりすることが不可欠です。
NTT東日本では、自治体のデータを活用し、地方創生の取り組みの計画や実行をサポートするための「REIWAプロジェクト」を提供しています。IoTやAIなどのICTアセットを活用してデータを分析することで、自治体の強みや利用できる資源の再確認が可能になります。
専門の人材が高精度なデータ分析を行い、根拠を持った取り組みやデータを元にした改善施策を行えるので、地方創生の取り組みの中長期な継続がしやすいといったメリットが強みの1つです。
「これを機にデータ分析を取り入れてみたい」「より確実に、より効果的な地方創生の取り組みを行いたい」と悩んでいる方はぜひ一度導入を検討してはいかがでしょうか。