目次
1.人流とは人々の動線のこと
人流とは、人の流れのことを指し、人が移動する流れを表したデータを「人流データ」といいます。地図上で可視化することで街の中で人がどこを通り、どの場所に向かい、どこに滞在し、どのような交通手段を使うかなど、人の動きに対し統計的な分析が可能です。
分析することで道の整備や交通手段の拡充、環境整備、防災計画などさまざまな社会課題の解決につながります。また、人々の動きを全体的に把握すると、まちづくりからマーケティングまで幅広く活用可能です。
2.人流データの解析が注目される3つの理由
この章では、人流データの解析に注目が集まった3つの理由を解説します。
- ・位置情報データが取得しやすくなった
- ・膨大なデータを分析しやすくなった
- ・データの格納コストが安価になった
それぞれの理由について詳しく見ていきましょう。
2-1.位置情報データが取得しやすくなった
人流データを効率よく分析するには、位置情報データの取得が必要です。以前は位置情報を集め、後からデータ化していたため、データの収集量に限りがありました。現在はスマートフォンの普及により、位置情報データがリアルタイムで収集しやすい環境にあります。それにより人流分析が容易になったことが注目が高まった理由です。
さらに、位置情報が特定できるGPS機能や携帯電話基地局、Wi-Fiなどにより精度が高い位置情報のデータを大量に収集できます。精度が高まったことでデータの信頼性が高まったこともポイントです。
2-2.膨大なデータを分析しやすくなった
近年のパソコンの高性能化やAI技術の著しい発達により、膨大な人流データを分析しやすくなったことが注目される理由です。今まではデータを収集して分析する必要があり、分析にも時間がかかることが懸念されていた原因です。さらに、分析したデータは公的統計など限られた分野でしか活用できなかったため、利用する層も限られていました。
しかし、AIの実用化に伴い人流データをリアルタイムで分析できるようになり、ビジネスなどさまざまな場面で活用できるようになったのも大きなポイントです。
2-3.データの格納コストが安価になった
現在では、収集した膨大なデータが格納できるサーバー環境を安価で整えられるようになったのも、注目される理由です。以前まで人流データは収集すると膨大な数になり、格納するに大きなコストがかかりました。コストがかかるうえ、精度が低く、収集できるデータは一部の分野のみだったため、導入する企業が少ない状態でした。
しかし、現在は会社の内部サーバーでも安全で低コストなサーバー環境を準備できます。高精度の人流データを低いコストで格納でき、さまざまな分野に活用できるため、導入ハードルが下がったといえるでしょう。
3.人流データを取得する5つの方法
人流データは位置情報からの取得が必須で、取得する方法は5つあります。
- ・GPS機能
- ・基地局情報
- ・Wi-Fiへの接続
- ・ビーコン
- ・カメラ
位置情報から取得した人流データは許諾を得た匿名の位置情報データであり、個人の特定はできません。この章では、人流データの取得方法について詳しく解説します。
3-1.GPS機能
行動履歴を記録できるライフログアプリや、ナビゲーションアプリ、見守り用の位置情報共有アプリ、SNSアプリから人流データを取得できます。この方法は、GPS衛星から発信された電波を受信し、現在地を特定する仕組みです。収集された位置情報は、スマートフォンの衛星測位機能(屋内ではWi-Fi測位機能)を使用して取得した情報が付加され、ビックデータとして活用しています。
しかし、収集には特定のアプリを利用するユーザーやGPS機能をオンにしているユーザーから取得するため、該当しないユーザーの情報は取得できません。また、GPS機能を使うと細かな空間粒度で位置情報を捕捉できることが特長ですが、ユーザーが限定される特性があります。
3-2.基地局情報
通信事業者は、携帯電話の基地局情報をもとに統計化したデータを取得します。各基地局で携帯電話を持つ人がどのくらいいるのかが把握でき、各エリアの端末数をもとに人口推計することで人流データとして活用が可能です。
これらはGPS機能をオンにする必要がなく、携帯電話の電源が入っていれば取得できます。また、携帯電話契約者の属性データを紐づけることで、属性分析も可能です。
GPS機能を比較し取得する空間粒度が大きくなる傾向にあるため、インフラ設計や都市開発などの開発シーンに強いことが特長です。
3-3.Wi-Fiへの接続
店舗や施設など街中にあるWi-Fiスポットの接続情報をもとに、Wi-Fiアクセスポイントに接続した端末数から分析して人流データとして活用する方法です。Wi-Fiを利用するにあたって登録した、性別や年齢などの属性情報も、個人情報が特定できない形に加工し統計データとして使用します。
設置されたWi-Fiの近距離通信によりデータを取得するため、GPS機能や基地局情報では取得できない来店数の計測に活用可能です。しかし特性として、機械設置の範囲内のデータしか取得できないことやWi-Fi機器の設置が必要になります。
3-4.ビーコン
ビーコンとは「Bluetooth Low Energy(BLE)」を用いた位置特定技術のことです。英語で「Bluetooth Low Energy」と呼ばれる低消費電力の近距離無線技術を利用したデータを取得できます。ビーコンは、信号を半径数10メートル範囲に発信する信号機で、主に専用アプリをインストールしたスマートフォンとの通信によって、建物内や地下でも位置情報の取得が可能です。
利用するには発信機の設置が必要で、機器設置以降のデータしか取得できない特性があります。また、データを取得できる場所にも制限があり、スマートフォンのBluetooth機能がオフのユーザーの情報は取得できません。
3-5.カメラ
監視カメラなどを使い映像解析する方法です。一般的には「混雑状況」「人数カウント」「属性解析」といった解析を行います。人が特定のデバイスを持っていなくても計測できる特長がありますが、機器の設置が必要で、機器設置以降のデータしか取得できません。
また、データを取得できる場所にも制限があるなど、カメラで取得したデータを活用できる企業に偏りが出るでしょう。
4.人流データを活用する4つのメリット
人流を活用すると4つのメリットが得られます。
- ・リアルタイムで情報の収集・分析ができる
- ・既存顧客の動きが把握できる
- ・潜在顧客の獲得に役立てられる
- ・競合店舗の状況も分析できる
以下では、4つのメリットについて、それぞれ詳しく解説します。
4-1.リアルタイムで情報の収集・分析ができる
人流データを活用すると、人の動きがリアルタイムでわかるため、誰がいつどこでどのような行動をしているか分析できます。以前までは、人口密度を調べたり交通量を人力でカウントしていたため、収集できるデータに限りがありました。
しかし、人流解析によって人の最新の動きが把握できることで、より正確な予測データの算出が可能になります。リアルタイムで情報を収集できると、ビジネスに直結する未来の予測が可能です。
4-2.既存顧客の動きが把握できる
人流データを活用すると、既存の顧客が滞在している箇所の把握が可能です。天候や曜日などの入店分析を行うことで、顧客ニーズを把握し対応できます。
また、長時間滞在している箇所やデッドスポットを把握することで、商品配置の見直しができるなど、マーケティングにも活用可能です。
4-3.潜在顧客の獲得に役立てられる
人流分析を行うと、潜在顧客と既存顧客の共通点を見つけられます。また、比較することで相違点が見つかり、潜在顧客にも適切なアプローチが可能です。適切なアプローチをすると、新規の顧客獲得につながります。
4-4.競合店舗の状況も解析できる
適切にカメラを設置することで、自店舗だけではなく、競合店の人流データも取得・解析できます。競合店の人流データを解析できれば、時間帯やエリア別で競合店の人活動状況が把握可能です。
競合店の活動状況を把握すると、どのように差別化を図るかなど具体的な対策が立てやすくなるでしょう。
5.人流データの活用シーン
人流データは、現在幅広い分野で活用されています。以下では、人流データの活用シーンを紹介します。
- ・企業のマーケティングや経営戦略
- ・まちづくり、地域活性化、市街化計画
- ・防災
- ・観光
- ・小売店、外食産業
- ・ショッピングモールなど大型商業施設
- ・テーマパーク、文化施設
- ・製造業
- ・オフィス
- ・交通機関、物流
- ・自治体、公共団体
- ・建設・不動産
- ・金融・投資
- ・スポーツ・イベント
人流データを活用すると、マーケティング分野では人流データを元に特定地域のユーザーに向けた広告配信などのプロモーションを行えます。また、人流データは工場の稼働率やショッピングセンターの混雑状況を可視化できるため、経済活動を推定し投資の判断にも役立つでしょう。
ビジネスのターゲットは人間のため、人々の動きを分析し予測する人流解析は、従来活用されていた店舗ビジネスにとどまらず、より幅広い分野で活用されていくことが見込まれます。
6.人流を「映像AIサービス」で分析可能なデータとして取得
NTT東日本が提供する「映像AIサービス」は、カメラから取得できる人流データの可視化が可能です。可視化することで、以下のようなメリットが得られます。
- ・入店者数や購買層の情報をデータとして可視化→売上向上
- ・万引き対策
- ・作業員や台車の動線・移動時間を分析→業務効率化
- ・既存の防犯カメラを利用して映像の分析を行うため導入コストが抑えられる
時間帯ごとの人物の滞在時間や通行回数をヒートマップで可視化し、指定した時間以上滞在している人物がいた場合メールにて通知が得られる機能が備わっています。また、マスクを着用しても人物の属性データを取得できるなど、高精度な人流データが取得可能です。
そのほかにも、エリア内人数カウントやエリア内や店内の混雑状況をWebで表示するなど、オープンデータ化することでお客さまにもメリットが生まれます。
「映像AIサービス」は電話やWebで相談でき、折り返し電話の依頼も可能です。人流データを可視化し売上向上や業務効率化をめざすなら、NTT東日本にご相談ください。
7.まとめ
新型コロナウイルスの流行により注目が集まる人流データは、さまざまな活用方法があります。目的に合わせた取得方法を選ぶことで、売上向上や業務の効率化につながります。
NTT東日本の「映像AIサービス」は業務別に合わせた活用ができ、コロナ禍に活用できる三密対策も可能です。メールやアラートで通知するため常に情報を確認しておく必要がなく、業務の効率化がめざせます。人流データの導入を検討している方は、お気軽にNTT東日本にご相談ください。