在宅勤務とは
在宅勤務とテレワークの違いとは?メリット・デメリットや導入の際のポイントを解説
出社せずに自宅で仕事をすることを「在宅勤務」や「テレワーク」と言います。何気なく使っている言葉ですが、両者に違いはあるのか疑問に思ったことのある方もいらっしゃるでしょう。
また、同じように使われる言葉として「リモートワーク」というのもあります。いずれも新しい働き方として広まっていますが、それぞれの違いについて説明できない方も多いでしょう。
そこで今回の記事では、在宅勤務とテレワークの違い、さらにリモートワークについて解説します。また、そのメリットやデメリット、導入の際のポイントなども紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
1. 在宅勤務とは?【テレワークとの違い】
在宅勤務はテレワークの一種です。つまり、テレワークの方がより広い概念です。
テレワークを推進している一般社団法人「日本テレワーク協会」は、テレワークを「情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」と定義しています。
そして、以下の種類に分類しています。
- 在宅勤務:自宅での勤務
- モバイルワーク:移動中の乗り物のなかや、移動の合間の飲食店などでの勤務
- サテライト/コワーキング:サテライトオフィスやコワーキングスペースでの勤務
- ワ―ケーション:リゾートなどバケーションも楽しめる地域での勤務
つまり、本社や本拠地から離れた場所でICTを活用して勤務することが「テレワーク」で、そのなかでも自宅で勤務することを「在宅勤務」と言います。
ちなみに、「リモートワーク」はテレワークと同じ意味で使われますが、誰かが定義を決めたものではなく、自然発生的に使われるようになった言葉です。
2. 企業が在宅勤務を導入する背景を解説
テレワークとリモートワークは、定義の有無における違いがありますが、一般には同じ意味で使われています。新型コロナウイルス感染症で社員の在宅勤務を迫られた企業が導入して広まりましたが、政府が働き方改革を推進していることから、今後も継続的に採用されていく見通しです。
テレワークとは、情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことです。
※「tele = 離れた所」と「work = 働く」をあわせた造語
働き方改革では、長時間労働の是正や労働生産性の向上を実現するため、柔軟な働き方を根付かせようとしています。また、労働人口は少子高齢化で長期的に減り続けていきます。そのなかで、働き手を確保する在宅勤務やモバイルワークは重要な施策となります。
企業からみると、テレワークによって従業員の生産性が向上したり、育児や介護などで通常の働き方ができない人材に働いてもらったり、在宅勤務から大きなメリットが得られます。
3. 在宅勤務のメリット5選
在宅勤務は、時代の要請を受けた制度ですが、具体的なメリットにはどんなものがあるのでしょうか。一つずつ詳しく見ていきましょう。
ワークライフバランスの向上で業務効率や生産性が高まる
在宅勤務の導入で、仕事とプライベートの調和、つまりワークライフバランスの向上が図れます。出社しない在宅勤務では、従業員の通勤・移動時間がなくなり、その分、プライベートの時間を増やせます。
空いた時間を育児や介護、趣味や地域活動などにあてれば、生活に充実感が生まれます。仕事とプライベートのメリハリができ、効率の向上が期待できるでしょう。
通勤や移動、オフィス維持におけるコスト削減につながる
通勤には従業員の時間と交通費がかかっています。在宅勤務にして通勤をなくす、あるいは減らすことで、これらの時間とコストを削減できます。
また、従業員が出社するオフィスは、人数分のスペースや光熱費、維持費を必要とします。出社する人数を絞り込むことで、これらの費用も減らすことができます。
遠隔地の優秀な人材を確保できる
秀でた者の中には、育児や介護などの理由から退職を余儀なくされたり、遠隔の居住地から動けなかったりする人が多くいます。そのような人材を、在宅勤務で確保することが期待できます。
在宅勤務は、どこに住んでいても仕事ができる柔軟な働き方です。出社しなくても、本拠地から遠く離れていても仕事ができれば、退職者を減らし、新しい人材を獲得できるでしょう。
感染症を予防できる
厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症対策としてテレワークを推進しています。在宅勤務は感染拡大を阻止するための対策と位置づけられており、オフィスの密度の低下や、満員電車の回避につながります。
また、厚労省は総合ポータルサイトを設けて情報を発信しています。例えば、テレワークの解説、関係資料、セミナーやイベント、導入事例の紹介などです。テレワークを導入する企業向けの相談窓口もあり、助成金など利用できる制度の紹介もしています。
災害時など緊急時でも事業が継続できる
在宅勤務は、災害や緊急時に安全に業務を継続するために役立ちます。すべての業務が通勤を前提としていると、台風や大雨、地震などの災害で交通網がストップした場合、会社の全機能が停止します。
普段から在宅での勤務環境を整えておけば、こうした場合にも対応できます。在宅勤務で必要なペーパーレスやネットワーク処理の体制は、そのまま緊急時の体制に活用でき、事業の早期復旧も可能になります。
4. 在宅勤務のデメリット5選
在宅勤務のデメリットには、どんなものがあるのでしょうか。メリットと同時に検討すべき点を解説します。
導入コストがかかる
在宅勤務を実施するには、そのためのシステムやツールが必要です。勤怠管理システム、チャットツール、Web会議システムなどの導入費用について考えなければなりません。
また、ツールの導入やルールづくりで従業員の稼働が発生します。こうしたコストを計算して、在宅勤務導入で得られるメリットの方が上回るとなれば、全社で推進すると良いでしょう。
ただし、在宅勤務で得られるメリットは短期的なものに限りません。将来を見据えた人材獲得や、長期的な経費削減を考えていきましょう。
勤務時間とプライベートの区別が難しい
在宅勤務は、生活の場と仕事の場が同じになるため、プライベートと仕事の境界があいまいになる恐れがあります。
家事の合間に仕事をしようとすると、準備や集中するのに時間がかかって無駄な時間が発生することがあります。また、勤務時間を超えて延々と仕事を続けてしまうこともあり、労務管理上の問題となりかねません。
在宅勤務では、気持ちの切り替えをうまくできること、従業員がうまく自己管理できることが必要です。業務の時間配分や進捗管理を報告させるなどして、適切に管理する工夫をしましょう。
情報漏えいなどセキュリティリスクが高まる
在宅勤務では、仕事で使うパソコンやUSBメモリなどを社外に持ち出すことになります。そのため、紛失や盗難のリスクも考えなければなりません。管理の規定を定めたり、もし紛失してもデータを読み出せないよう暗号化したりするといった対策が必要です。
また、セキュリティの整った社内からパソコンを持ち出すことで、コンピューターウイルスやサイバー攻撃にさらされるリスクもあります。パソコンには、セキュリティソフトを導入して常に最新の状態にアップデートするほか、情報セキュリティ対策の運用ルールを決めておくことも大事です。
業務上のコミュニケーション不足が生じる
在宅勤務では、同じオフィスにいるときに比べて、コミュニケーションが不足がちになります。Web会議、チャットやメールなどのツールもありますが、対面で話す方が効率的な場合があります。
コミュニケーションがうまくいっていないと、伝達ミスや認識の食い違いが起こることがあります。それに気付かないまま進んで、業務に支障が出ることもあるかもしれません。在宅勤務ではオフィスで仕事をするとき以上の細かい確認が必要です。
勤怠管理や評価が難しい
在宅勤務は、従業員の様子が見えないので、働きぶりがわからないということがあります。勤怠管理システムで、業務開始と終了時刻の記録があっても、その間の仕事の質は見えにくいものです。
業務進捗や勤務態度が見えないとなると、仕事の結果や成果物を中心に評価することになります。個々の従業員の業務進捗の管理は、オフィスワークでは経験したことのない難しい作業になるかもしれません。
NTT東日本では、テレワークを導入するにあたっての作業の洗い出しや進捗管理のノウハウをまとめた資料を提供しています。以下のリンクからご覧ください。
5. 在宅勤務の導入・運用ポイント
先に見てきたように、テレワークとリモートワークには意味の違いがありません。その一つである在宅勤務には多くのメリットがあり、時代の要請もあって拡大しています。
以下では、在宅勤務の導入や運用ポイントを紹介します。NTT東日本はテレワーク時に役立つ資料や、わかりやすいコラムを提供していますので、あわせて参考にしてみてください。
勤怠管理を徹底する
在宅勤務には、勤務管理の徹底が必要です。虚偽の勤怠報告を防止するしくみや、勤怠にひもづかない形での人事評価制度を導入しなければなりません。
従業員がどのように業務を遂行しているかは、情報を共有し、見える化することで把握します。事前にルールを決めて明確にするとともに、従業員の理解を得ておくことが重要です。
また、企業によって勤務の状況が異なるので、それぞれの事情に応じたルールづくりが必要です。
評価方法を明確にする
在宅勤務者と出勤者で評価に偏りが出ないよう注意しましょう。不公平感を生まないため、評価方法を明確にします。また、評価方法のほか、業務成果の目標を設定することも大事です。
具体的な評価基準があれば、評価される側も安心して働けます。従業員から評価に対する異議があっても、明確な評価基準があれば説明できるでしょう。
こまめに情報共有できる体制をつくる
業務効率の低下や情報の格差を生じさせないため、必要に応じてコミュニケーションをして情報共有ができる体制にしましょう。チャットや企業SNSのようなツールが役立ちます。
わずかなコミュニケーションの行き違いが大きな問題に発展することもあります。これを避けるには、普段から気軽にやり取りできる雰囲気が大事です。また、コミュニケーションがストレス軽減につながる効果もあります。
福利厚生制度を見直す
在宅勤務の拡大で交通費の支給額は削減されます。その一方で、自宅で仕事をするための電気代やインターネット回線の費用が必要になります。業務に伴う経費は会社が負担しなければなりません。
こうした変化に対応するため、福利厚生制度の見直しが必要になります。支給の手続きや予算の手当について準備を進めましょう。また、場合によっては補助金などの適用も変わります。
セキュリティソフトの導入やルールの作成
在宅勤務を導入すると、従業員が自宅のネットワークや端末を業務に使うかもしれません。このとき、一番の問題になるのが情報セキュリティ対策です。
会社のネットワークと違って、家庭はサイバー攻撃に対して脆弱(ぜいじゃく)です。自宅に置いたパソコンから会社の重要なデータが流出する可能性があります。
まず、自宅で仕事を行うためのセキュリティガイドラインを作成して、従業員に徹底しましょう。また、すべてのパソコンにセキュリティ対策ソフトをインストールしておくことも必要です。
最初から従業員の自宅にデータを置かない方法もあります。「リモートアクセスツール」は会社にあるサーバーやパソコンに安全にアクセスし、データを社外に持ち出さないためのしくみです。
6. テレワーク体制を整えて在宅勤務を導入しよう
「在宅勤務」は「テレワーク」の形のひとつです。一般社団法人「日本テレワーク協会」では「テレワーク」を「情報通信技術を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」と定義しています。そのなかには、在宅勤務のほかに、「モバイルワーク」「サテライト/コワーキング」「ワ―ケーション」という働き方もあります。
在宅勤務には、従業員のワークライフバランスの向上や、業務継続体制の強化など、多くのメリットがあります。一方で会社としては、在宅のためのツールやシステムの導入、勤怠や評価体制の構築などが必要です。
また、在宅勤務の導入方法には、いくつかのポイントがあります。安全にスムーズに在宅勤務するために、事前の準備も必要です。在宅勤務の導入を検討している方は参考にしてみてください。