2023.05.29 (Mon)
遊休資産とは事業目的だが稼働していない資産|活用メリットや減価償却処理をわかりやすく解説
事業用資産として取得したものの、一身上の都合にて休止している機器や土地を抱えている人も多いのではないでしょうか。遊休資産は一つの資産になるため、固定資産税の対象となります。可能である限り早めに処分を受けるのが好ましいです。適当に処分してしまうと税務調査を受けます。
今回の記事では遊休資産とはどのような資産なのか、放置によるデメリットや活用するメリットを含めて解説します。遊休資産の対応を把握しておくと、損失を抑えられるだけでなく、トラブル回避が可能です。遊休資産を抱えている人は損失を抑えられるだけでなく、活用法の参考にもなるので、ぜひ最後までお読みください。
1. 遊休資産とは?基礎知識を解説
使用していない土地や建物を持っている場合は、放置したままだと赤字を生み出してしまう可能性があります。しかし、改善を行うことで黒字を生み出すことが可能です。
この章では、遊休資産とはどのような資産なのか、該当するものを含めて解説します。
1-1. 遊休資産とは事業目的だが稼働していない資産
遊休資産とは、事業用として資産を取得したものの、事業変更や稼働停止している資産のことです。事業に利益を生んでいる・生んでいないに関わらず、固定資産税の申告対象になるため、放置しているほどデメリットが大きくなります。
事業運営で黒字を出すためにも、可能な限り処分の検討や活用法を考えるのが理想的です。一定条件を満たすと損金算入ができるため、活用方法も把握しておくのが良いでしょう。
1-2. 遊休資産に該当するもの
遊休資産に該当する資産は主に下記の4種類があげられます。
- ・遊休状態にある土地
- ・遊休状態にある建物・工場
- ・遊休状態にある機械設備
- ・遊休状態にあるソフトウェア
たとえば、これから収益を生むために第2工場を建てようとした場合、土地が安いタイミングで購入しておく企業も多いのではないでしょうか。土地だけを取得していても、企業の資産の一部になるため、毎年固定資産税の対象になります。使用していない間は当然利益を生まない土地になるので、損失が続く状態です。
土地や建物の不動産だけでなく、使用予定であった大型工作機械を購入したものの、事業変更や稼働停止によって使わなくなった場合でも遊休資産になります。事業活動では利用していない資産になるので、減価償却費を「営業外費用」として計上する必要があります。
無駄な損失を抑えるためにも、遊休資産は放置しないようにしましょう。
2. 遊休資産の会計処理
遊休資産の対象となる資産を把握した後は、会計処理について把握しておく必要があります。会計処理では、下記の3つを理解しておきましょう。
- ・遊休資産の減価償却
- ・遊休資産の減損処理
- ・遊休資産の処分
それぞれの会計処理について解説するので、遊休資産を保有している人は理解しておきましょう。
2-1. 遊休資産の減価償却
遊休資産は利益を生み出さない資産ですが、会計上は減価償却を行う必要があります。ただし遊休資産を会計上する場合は、営業のための消費ではないため、「営業外費用」として処理をしましょう。
たとえば、大型工作機械の減価償却が100万円の中で、10万円分が遊休資産になる場合は下記のようになります。
借方 | 貸方 | ||
減価償却費(販管費) | 900,000円 | 機械装置 | 1,000,000円 |
減価償却費(営業外費用) | 100,000円 |
また、法人税務上は償却資産の要件として「事業の用に供しているもの」とされているため、遊休資産は減価償却の対象にはなりません。そのため税務上は損金不算入となり、申告調整が必要です。
ただし、休止期間中でも条件によっては減価償却資産に該当する資産として償却できます。休止期間中であっても、維持や補修を行えばすぐにでも稼働できる状態の場合は償却できる条件に当てはまるため、会計処理の知識として把握しておきましょう。
2-2. 遊休資産の減損処理
遊休資産の価値(直評価)が帳簿価格を下回った場合のみ減損処理を行えます。将来的に生じる損失分を前倒ししてB/S(貸借対照表)に反映させる会計処理です。
下記の条件に当てはまる場合や価値が著しく下落した場合は、固定資産の機能があったとしても、減損損失の認識が適用されます。
- ・客観的に判断しても将来使用見込みがない場合
- ・固定資産の用途を転用しても採算の見込みがたてられない場合
- ・資産が災害によって著しく損傷した場合
- ・1年以上にわたって遊休状態の場合
- ・資産の状況や場所に著しい変化があった場合
- ・会社更生法等に従って評価替えが必要な場合
遊休資産はすでに使用していない上に、将来活用する可能性が低いケースが少なくありません。他の資産と切り離したとしてもほとんど影響が出ない場合が多いです。減損損失判定を行うためには、回収可能価格の算定が必要になります。
ただし、取締役会や内部での具体的な計画が必要です。将来性について話し合いを行い、減損処理を行うか検討しましょう。
2-3. 遊休資産の処分
遊休資産を処分する場合には、経費として形状可能です。ただし、経費として処分する場合には、資産の帳簿価格から廃材などの見積額から差し引いた金額計上対象になります。遊休資産を処分して新しい資産を取得する場合は、処分した資産の価格を同年の経費に計上可能です。
また、遊休資産の中でも使用しないことが明確な場合は、帳簿価格から処分見込み価格を引いて経費計上できます。たとえば工場を処分したい場合、建物を壊す際に使用した価格の経費を引いた除去価格を経費に計上可能です。
処分を行うときも、使用した価格を経費として計上していくようにしましょう。
3. 遊休資産の放置による3つのデメリット
遊休資産を放置してしまうと、下記の3つのデメリットがあります。
- ・固定資産税がかかる
- ・手入れや維持管理にコストや時間がかかる
- ・近隣トラブルや犯罪につながる
固定資産税や維持管理費が発生するだけでなく、遊休資産を放置にしたことによって行政指導が入るケースも少なくありません。企業に大きな損失を生み出さないためにも、遊休資産を放置するデメリットを確認しておきましょう。
3-1. 固定資産税がかかる
遊休資産の中でも土地や建物が該当する場合は、固定資産税がかかってしまいます。固定資産税は毎年1月1日時点で計算が行われるため、処分をしたい場合は大晦日の12月31日までに行うようにしてください。
固定資産税は原則年4回の納期ごとに分割して支払いますが、利益を生み出していない間は損失になります。さらに遊休資産の土地・建物が、評価の基準とされる路線価が高い場所にあると高額の固定資産税を支払っている計算になります。年間で固定資産税評価額の1.4%が課されるので、活用または処分を検討しましょう。
また、土地を利用せずに2年放置していると「遊休土地」として判断されます。遊休土地は都道府県知事から通知が届き、手元に届いてから6週間以内に対応が必要です。利用するか処分するかの対応が必要なので、固定資産税による損失をなくす上でどのように対処するか検討してください。
3-2. 手入れや維持管理にコストや時間がかかる
土地や建物だけでなく、機械設備やソフトウェアが遊休資産にある場合、手入れや維持管理費に費用や時間がかかります。処分するのであれば機械設備やソフトウェアは撤去費用だけで問題ありませんが、今後使用する可能性がある場合はメンテナンスが必要です。
他にも、土地や建物の場合は清潔な状態で維持していくための管理費用が必要になります。中でも土地を放置しておくと、さまざまなトラブルにつながるケースも少なくありません。
たとえば、土地を放置して雑草が伸び放題の状態だった場合、害虫や害獣が住み着いて近隣に迷惑をかけてしまいます。さらに建物だった場合は不法侵入されてゴミを投棄されたり、犯罪が起きたりして事件になるケースもあります。
定期的に手入れを行わないと雑草やゴミの撤去費用など手間やコストが発生するため、早めに処分するか活用するかを考えましょう。
3-3. 近隣トラブルや犯罪につながる
建物や土地を放置していると、近隣トラブル・クレームに発展するケースがあります。遊休資産に勝手に侵入されて違法行為を行った場合、管理不足として所有している企業に連絡が届きます。
最悪の場合、近隣トラブルや犯罪につながるだけでなく、行政指導が入ってしまうケースもあります。行政指導が入ると社会的に信用が低下してしまう可能性があるため、企業としても大きなダメージになりやすいです。遊休資産を放置すると事業に支障が出る可能性があるため、早急に対応を検討しましょう。
4. 遊休資産を活用する3つのメリット
遊休資産を活用するメリットでは、下記の3つがあげられます。
- ・収益を得られる
- ・税金が抑えられる
- ・地域貢献になる
放置や売却せずに活用するメリットについて解説するので、遊休資産を抱えている人は参考にしてください。
4-1. 収益を得られる
土地を遊休状態にしている場合は、立地や状況に合わせて収益を得ることも可能です。たとえば、空いた土地を活用する方法では、下記の7つが活用法の例としてあげられます。
- ・賃貸住宅
- ・医療・福祉施設
- ・商業施設
- ・駐車場
- ・太陽光発電
- ・借地
- ・資材置き場
すぐに活用する場合は駐車場などが好ましいですが、長期にかけて遊休状態にする場合は他の活用法を実践すると大きな収益を得られるでしょう。うまく軌道に乗ると新たな事業になり、不労収入として活躍します。
4-2. 税金が抑えられる
遊休資産を活用すると、税金を抑えることも可能です。たとえば、アパートやマンションなどの「住宅用地」として活用すると、更地状態で課されていた固定資産税と都市計画税がそれぞれ1/6と1/3に(戸数×200㎡まで)軽減されます。
ほかにも、初期投資で不動産所得がマイナスとなる数年間は、所得税の軽減適用が受けられるため、節税可能です。多くの税金が抑えられるため、遊休資産の活用は事業活動の一端として良い手段となり得ます。
4-3. 地域貢献になる
そのままの状態ではなく、遊休資産を活用すると地域貢献にもなります。中でも土地や建物だった場合、活用すると人の手が届くため、不審な人が近寄りにくい上に、地域の人々が利用できる施設に変えることも可能です。
放置した状態では雑草が生えたりゴミの不法投棄被害にあったりと、土地の管理状態が悪くなる恐れがあります。遊休地を活用すると衛生や治安維持につながるため、地域貢献の意味でも活用していきましょう。
5. まとめ
遊休資産は放置したままでは大きなデメリットがありますが、活用することによって多くのメリットを得られます。中でもデメリットでは、固定資産税・手入れ・維持管理のコスト・時間がかかってしまう点が大きいです。
しかし、遊休資産を上手に活用すると節税効果が期待できるだけでなく、収益につなげたり新しい事業のきっかけになったりします。会計処理を行う上では遊休資産に関する知識を把握しておくことが大切なので、税務調査を受けないためにも覚えておきましょう。
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