2021.09.09 (Thu)

スマート農業でアグリビジネスはどう変わる?(第1回)

最新技術によるスマート農業とは? 目的・メリット・課題や事例を紹介!

 最新技術を利用した農業として、ニュースなどでも注目されているスマート農業をご存知でしょうか。

 農林水産省も推進するスマート農業には、日本の農家が抱える高齢化や労働力の低下などの課題の解消が期待されています。今回の記事ではスマート農業について説明していきます。

◆目次
スマート農業とはそもそも何か
スマート農業で利用される技術
スマート農業導入の主な目的
スマート農業を導入する4つのメリット
スマート農業のデメリット・課題
スマート農業の事例・ケーススタディ
まとめ

スマート農業とはそもそも何か

 スマート農業とは、先端技術であるロボットやAIなどのIoT技術を生かして、超省力・高品質生産を実現する新たな農業のことです。農業では人材不足や後継者不足などの課題がありますが、スマート農業はこうした課題の解決につながると期待されています。

 これまでの農業ではベルトコンベアーや運搬用のトラックなどの活用で、自動化・省力化が進んでいましたが、さらにそこから人間が判断する部分などを自動化することで、人手の確保や、負担の軽減などを実現させようとしています。

 農林水産省ではスマート農業を普及させるための政策やプロジェクトを進めている最中です。

 スマート農業は日本よりも先に海外での導入が進んでおり、スマートアグリカルチャー(Smart Agriculture)、スマートアグリ(Smart Agri)、アグテック(AgTech)、アグリテック(AgriTech)とも呼ばれています。

スマート農業で利用される技術

 スマート農業で活用される技術の例を紹介します。

農業用ロボット

 農業用に活用されるロボットには種類が数多くあります。

自動走行トラクター・コンバイン

 自動走行トラクターやコンバインは、GPS(位置情報)を活用し、人が乗ることなく、自動運転で農作業を行うことが可能な農業用ロボットです。トラクターやコンバイン、田植え機などがすでに製品化されています。運転者が不要なので、農業従事者の高齢化や熟練者の不足などの解決が期待されています。

 一般的な自動運転車とは異なるのは、農作業を行う環境では信号などの目印がない点、また起伏の激しい農地での作業ではきめ細かな運転制御システムが必要な点などです。そのため、自動走行トラクターにはさまざまなセンサーが内蔵され、精度の高い位置情報をもとに、機械を操作します。

農業用ドローン

 農業用ドローンは、上空からの農薬散布や画像撮影によるモニタリングなどに活用される農業用ロボットです。

 広い圃場の農薬散布にかかる労働の負担は大きく、これまでは無人ヘリコプターを利用するなどコストが大きいものが主流でしたが、ドローンを利用すればそこまで大きなコストをかけずに労働コストの抑制が可能です。

 一度農薬を散布した所には自動的に散布しないようにする、害虫の発生している部分に集中的に散布するなどの制御による農薬の無駄使いの防止や、環境に配慮した作物の生産に役立ちます。

 農薬散布だけでなく、上空からの画像・映像により圃場をモニタリングすることで、人では気が付かない作物の変化や病気のリスクを検知することが可能です。

自動収穫機・選別機

 人間が手作業で行っていた収穫作業を自動化するロボットも増えています。収穫する際に、センサーやAIなどの技術を組み合わせて、重量や重さから熟しているかどうかを判断したり、収穫後に出荷できるかどうかを判断する自動選別機も開発されています。収穫した作物を箱詰めするロボットや、運搬するロボットなどもあります。

栽培管理支援システム

 栽培管理支援システムとは、気象データや作物生育予想モデルや病害予測モデルなどを利用し、農業における気象災害を軽減するための情報システムです。早期警戒情報や異常高温・低温注意情報の発信だけでなく、作物の栽培管理の予測情報として、米の収穫適期予測や大豆・小麦などの発育予測なども提供されています。

センシングデータの利用

 センシングデータとは、農作物を栽培するための場所(圃場)にセンサーを設置することで、温度・湿度・風・光の強さなどを観測・数値化したものです。

 センシングデータを活用できれば、広大な農作地や遠い場所になる圃場に直接訪問して農作物の状況を確認する手間が削減でき、収集したデータをもとにAIが農作物の生育状況や病気のリスクなどを分析し予測することが可能です。

AIによるデータ活用

 前述のセンシングによるデータなどをもとにした、AI技術も多くあります。作物の大きさ、色、空気中の炭酸ガスの量などの情報から収穫時期を予測するものや、害虫の早期発見ができるものなどです。

 土壌・天候・肥料などの記録から同じ作農面積でも収穫量を増加させる、また品質向上によるロスの削減で収益性が向上する可能性があります。本来なら人間が判断して行っていたことをより高精度かつ省力化することが期待されています。

 これらの技術を活用することで、農業未経験者でも参入しやすくなり、人材不足の解消にも貢献します。

農業現場以外のテクノロジーの進化

 農家の生産力の向上だけでなく、市場ニーズの分析などもスマート農業には含まれます。市場における作物の需要が予想できれば、生産計画に役立つだけでなく、流通や販売の際に効率的に業務を行えます。まとめて輸送することでのコスト削減や、需要のある買い手に向けて不足しないように販売できれば、収益性の向上などが期待できます。

スマート農業導入の主な目的

 日本の農業が抱えている大きな課題は3つあります。農業は他の業界に比べてIoT化がなかなか進みにくい業界ですが、スマート農業が進むことで解決が期待されています。

農業の労働力低下の解決

 日本は世界でもトップクラスの少子高齢社会で、農業だけでなくあらゆる業種で労働人口が減少しています。とくに農業では高齢者の労働者が多く後継者も少ないだけでなく、労働内容も力仕事が多く、他の業界よりも労働力の低下が深刻です。

 スマート農業による超省力化や肉体労働の負担の軽減により、少ない人員でも生産力の維持や向上が期待されます。

低い食料自給率の向上

 令和2年度の日本の食料自給率(カロリーベースの食料自給率)は37%と、多くの食料を輸入に頼っている状態です。農林水産省では、2030年の食料自給率の目標を45%と掲げており、自国生産率を上げることが求められています。

 労働人口が減っていく中で、スマート農業の活用による効率的な農産物の生産が必要です。

出典・参考:令和2年度の食料自給率
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/ohanasi01/01-07.html

農業技術の継承

 農業における労働者の中心は高齢者で、若者や後継者が不足しています。仮に後を継ぐ人がいたとしても、農業で必要になる技術は長い期間をかけて習得していくものであり、すぐに継承できるものではありません。

 スマート農業では、熟練農業者の技術をデータとして蓄積することで、新しく農業を始める際の学習コストが大幅に下がります。AIを活用した作業の自動化などテクノロジーを併用すれば、すべての技術をすぐに取得できなくても、一定の生産力を保つことができます。そのため、新規就農者の参入ハードルを下げられるのです。

スマート農業を導入する4つのメリット

 スマート農業のメリットについて、ここまで述べた内容を改めて整理しましょう。

農作業の効率化・省力化

 スマート農業の大きなメリットは、作業の自動化による業務効率の向上です。人間が行っていた作業・判断などを機械・ロボットやAIがサポートすることで、大幅な農作業の効率化が期待できます。

 前述した通り、農業における就業者の平均年齢は高齢化しており、若い人の新規での就労も減っているため、省力化は大きなテーマです。

 効率化・省力化の例
・農薬散布や追肥の自動化
・トラクターやコンバインなどの自動運転
・効率化されたことによる少ない労働力でも生産量の増加

肉体労働の軽減

 スマート農業によりロボットや機械が肉体労働の負担を軽減することで、あまり力仕事に向いていない人でも作業を行うことが可能です。高齢になっても農作業を続けられます。収穫作業や運搬作業などをサポートするアシストスーツや、そもそもの収穫作業の自動化なども登場しています。

 また、農業に対する「きつい」というパブリックイメージが変わっていくことで、新しく農業を始める人が増加することも期待できます。

データの収集・活用

 前述した通り、スマート農業はデータを収集し、それをもとに予測を行います。センシングデータや気象データをもとに農作物の収穫予想や、病原リスクの把握を行うことで、収穫量の増加や高品質な作物の生育が可能となります。

 また、作業記録と日時と位置情報をデータ化して合わせて分析すること、これまで培ってきた農家の経験もノウハウ化することができ、経験のない新規参入者でも品質を維持し収益性の高い農作物の栽培が可能です。

環境に配慮した農業の実現

 スマート農業では、最新のテクノロジーを利用して必要最小限な農薬の利用に留めることができるため、環境に配慮した有機栽培や減農薬な農業の実現が期待できます。

 これまでの農業では、作業の負担を軽減しながら効率よく生産量を増加させるために、農薬の散布によって害虫や雑草の駆除を行って来た結果、人間の健康面へのリスクや環境への悪影響などが問題となり、有機栽培などが注目されるようになりました。

 どのくらいの農薬が必要なのか、また散布する必要のない箇所はどこなのか、などをセンシングデータで監視・判断します。継続したモニタリングで精度を上げることができれば、環境に配慮した農業の実現にも近づきます。

スマート農業のデメリット・課題

 スマート農業の推進には、コストやテクノロジーへの理解といった壁が存在します。

導入コストの大きさ

 スマート農業で必要になる機械は値段が高額なのがネックです。解決方法としては、リースでの利用、補助金の利用、既存の農機具の売却などの手段があります。

最新の機械への理解や慣れ

 スマート農業で利用する機械はどれも最新のテクノロジーを利用した機械のため、これまでの農機具や重機とは異なる操作方法が求められます。農家の多くは高齢者のため、新しい技術の啓もうや導入後の利用サポートも必要です。

機械の仕様や連携のバラつき

 スマート農業の機械を作っているメーカーは数多く存在するため、それぞれが別々の仕様に従っているケースもあります。別のメーカーの機械とは連携が難しかったり、前述のようなデータを総合的に計測することができないケースがあります。

スマート農業が抱える課題とは? 導入費用を抑える方法も紹介

スマート農業の事例・ケーススタディ

 スマート農業の導入に成功した事例をご紹介します。

山形市農業協同組合

 JA山形市は、ブランド野菜の「山形セルリー」の栽培でスマート農業を導入しました。生産者の高齢化や作付面積の減少、管理ハードルの高さによる新規生産者が増加しないことなどの課題が顕在化していたことがきっかけです。

 新規生産者の増加・育成・農業所得の増大などをめざすプロジェクトの中で、栽培環境の整備と並行してNTT東日本の「eセンシング For アグリ」を導入。センサーやネットワークを活用して圃場データの見える化を行い、ベテランの肌感覚・経験・勘が必要とされていたセルリー栽培でも新規生産者が取り組みやすい環境を実現しつつあります。

 スマートフォンでほぼリアルタイムに、圃場の温度・湿度・照度・土中の水分・温度といったデータを遠隔で確認できるようにしています。生産者間のデータ共有や比較ができるので、効率的な教え合いや学びあい、ベテラン生産者のノウハウをマニュアル化する目処がついてきたとのことです。

有限会社 中村養鶏場

 養鶏業を営む有限会社中村養鶏場では、養鶏場の温度管理にスマート農業を導入しました。これまでも温度管理などを全自動制御してくれる最新式のシステムを導入していましたが、実際の温度の把握やファンの故障や停電などの万一に備えて直接見回りにいく必要がありました。

 「eセンシング For アグリ」を導入することで、インターネットを経由して遠隔で温度が確認でき、万一の場合はアラート機能で気がつけるようになりました。その結果、一日の見回りの回数が6回から3回に半減したそうです。

 また、スマート農業に伴うネットワークカメラの導入は、防犯対策にもつながっています。

ふくしま未来農業協同組合

 JAふくしま未来では、果樹栽培における「霜」対策として職員や生産者が夜でも直接現地に行って温度を計測するなどの作業が発生しており、約60人の人員負担となっていました。自動計測を行うにも、電源の確保や通信網の整備がハードルだったそうです。

 電源の必要がない「eセンシング For アグリ」を導入することで、自動で温度計測できる環境を整備できました。20日近く続く徹夜の計測作業が0日になるなど、人的負担が大幅に軽減され、凍霜害防止資材を適切なタイミングで投入できることによるコスト削減と生産の安定化を実現したそうです。

まとめ

 今回の記事ではスマート農業について紹介していきました。

 スマート農業では自動作業を可能にするロボットから、遠隔での監視やデータ収集・活用のためのカメラ・センサーなどの技術が利用されています。

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