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インタビュー

優れた5G環境をつくる「技術」の目利き。
ネットワーク事業推進本部 課長 山崎敬広

高速無線通信の安定利用を可能にするローカル5G。それを実現するのは機器の力だけではなく、人のチカラに依るところも大きい。東日本におけるデジタル基盤の確立に貢献してきたNTT東日本には、どんなチカラがあるのか。今回焦点を当てるのは、ローカル5Gの技術領域を牽引するメンバーで、ネットワーク事業推進本部 設備企画部に所属する山崎敬広(やまざき・たかひろ)課長。ローカル5Gのエキスパートとしてのプライドや仕事に懸ける想いを聞いた。
培ったスキルをもとにローカル5G製品を検証
――最初に、NTT東日本ではローカル5Gに関して、技術面でどのような取り組みをされているのか教えてください。
山崎:現在は、ローカル5Gシステムの実機検証をメインに行なっています。NTT中央研修センタ内に構築した検証環境で実際にローカル5Gシステムを動かして無線のエリアを構築し、スループット等の性能や安定性、保守運用性の評価に注力しています。システムをお客様に提供する前段で、「ベンダ(システム製造元)の公称どおりの性能・機能をシステムが備えているか」「安心して利用していただくために十分な信頼性を備えているか」などを確認しています。
※単位時間あたりのデータ転送量
――たとえば、どのような点を検証されているのでしょうか?
山崎:ひとつは通信可能範囲の検証です。たとえば、ローカル5Gで利用可能な帯域のうち、28GHz帯はミリ波帯と呼ばれ、電波の直進性が高いため遮蔽物により減衰しやすく、広範囲をカバーすることが難しいと言われています。そこで、NTT中央研修センタというリアルなフィールドの中で実際に5Gシステムを動かし電波を発射し、ミリ波はどれくらいの距離まで届くのか、どの程度の遮蔽なら通信できるのか、その際の通信速度はどの程度になるか等を検証しています。
もうひとつは、何か異常が起こった際に、すぐに原因を特定し復旧できるかどうかという、保守運用面です。長時間稼働させ続けると、条件の重なりによっては様々な障害が発生することがあります。その条件を探り、発生時の対処法やそもそもの原因を突き止め改修することも検証の対象です。こうした検証は直接システムを触って動かさないと分からない部分です。
――細部までぬかりなく検証することが、利用時の安心感につながるわけですね。
山崎:そう考えています。当社にローカル5Gの構築を任せていただく以上、信頼のおける品質をお届けしたいので。また、機能以外の検証として、ローカル5Gシステムの低廉化に向けた研究開発に取り組んでいます。現在の製品やシステムは高額で、多くのお客様にとっては手を出しにくいものになっていると考えられます。そこで、ローカル5Gを構成するメインの要素である「コアネットワーク」と「無線設備」について、コアネットワークへのオープンソースソフトウェア(OSS)の活用や、汎用のサーバ上で無線機能を実装する等の工夫により、低コスト化を目指す検証も行っています。
――ローカル5Gの検証や研究が本格化したのは、いつからでしょうか?
山崎:2019年12月のローカル5Gの無線局免許申請を皮切りに、NTT中央研修センタの検証環境で技術検証を開始しました。当初は、ミリ波帯(28.2GHz~28.3GHz)のNSA方式のシステム検証からスタートしました。さらに、2020年12月の使用周波数帯の拡張に伴い、Sub6帯(4.8GHz~4.9GHz)の無線局免許を申請しました。この帯域で使えるSA方式のシステムも登場してきたので、ラボの設備を拡張する形でシステムを追加し、現在も検証を進めています。
国際的なスポーツ大会でローカル5Gの可能性を実感
――山崎さんは、ローカル5Gの検証に携わる前、どのようなお仕事をされていたのでしょうか?
山崎:私は、NTT未来ねっと研究所で、大量のIoT機器からのセンサデータを高速に解析できるようデータベースに蓄積する方式を研究していました。その後、NTTドコモに異動し、LTEや4Gのコアネットワークの研究開発に従事。モバイル通信の知見はそのときに身につけました。それから2019年にNTT東日本に転籍となり、現在に至ります。
――NTT東日本は固定回線の研究開発に強いイメージですが、山崎さんの所属する担当のメンバーはローカル5Gの検証をメインにされているということですよね。
山崎:はい。今は大所帯ですが、ローカル5Gの技術検証スタート時は3名からスタートしました。私がメンバーを牽引し、5G通信の基礎技術を学ぶことからはじめて、ローカル5Gシステムを自ら構築し、ローカル5Gを構成する「コアネットワーク」、「無線設備」、「端末」の全てについて検証を積み重ねることでスキルを磨いてきました。緻密かつ徹底的に分析して、懸念点をつぶしていくところが我々の技術力の強みですね。また、最近は実案件も増えており、トラブルシューティングのサポートも実施しています。複数のベンダと連携しながら製品の改善点の洗い出しと同時に、トラブルが発生したときの解決力も高めているところです。
――その解決力は、どのようなトラブルで顕在化するものですか?
山崎:たとえば、ローカル5Gの端末がシステムにつながらないトラブルが発生したとします。その際に、何が原因になっているのかを迅速かつ正確に解析しなければなりません。端末に問題があるのか、システム側に問題があるのか見極める力が求められます。
――なるほど。そうした技術者の存在は、導入後の安心感を左右しそうですね。
山崎:導入後はもちろんのこと、導入前の提案にも自信があります。私たちは複数のベンダのシステムを検証しているので、お客様の用途や予算感など、ご要望に合わせて適したローカル5Gのシステムを提案できます。システムごとに動作の癖がありますので、それを踏まえたうえで最適なシステムを選定することが望ましいと思います。その点においても、複数のベンダのシステムに精通しているところが私たちの強みだといえます。
――ローカル5Gの検証をはじめて2年あまり。達成感を得たときはありましたか?
山崎:2021年に行われた国際的なスポーツ大会で、ローカル5Gの実証実験を行ったときですね。スタジアムにおける伝送の実証として、当社が構築したローカル5G環境を利用して報道機関のカメラマンが撮影した写真をサーバにリアルタイムにアップロードするという、取り組みを実施しました。従来、フィールドで撮影した写真は、LANケーブルの敷かれた場所までカメラマンが行って送信していました。スポーツ写真は特にリアルタイム性とスピードが求められます。そのため、カメラマンは撮影場所からLANケーブルのある場所まで急いで走って移動しなければならず、負担が大きい部分でした。また、既存の無線通信では、通信容量や通信の安定性に課題を抱えておりました。
――その点、ローカル5Gなら、スタジアム内のどこにいても大容量の写真データを高速で安定的にアップロードできる、というわけですね。
山崎:はい、その通りです。実証実験では報道大手6社の協力を得て、ローカル5G環境を利用いただきました。終了後の利用者アンケートでは、「ローカル5Gを活用したことで非常に楽になった」という声が多数寄せられていて、安堵しましたし、手応えを感じましたね。
ローカル5Gならではの新機能登場を見据えて
――では、最後に今後の展望について伺えますか?
山崎:来年あたりから、高速大容量通信以外の5Gの特徴である低遅延通信や同時多接続の機能を実装したローカル5G製品が出てくることが予想されます。このような新機能についても、検証と評価をしっかり行っていきたいです。
また、キャリアの5G通信は上り下りの通信比率が決まっていますが、ローカル5Gはその比率をある程度自由に変えることができます。これにより、お客様のニーズに合わせて上り下りの通信の優先順位を変更できます。たとえば監視カメラの映像をローカル5Gの無線でリアルタイムにアップロードしたいというニーズがあった場合、上り通信を優先することでより多くのカメラを接続することが可能になります。この点はキャリア5Gと比較した際のローカル5Gならではのメリットですから、上り下りの通信にまつわる新機能が実装されることを見据えて、検証と評価のスキルを高めていきたいです。
また、機能面以外では、先程お伝えした価格の低廉化に向けた取り組みを更に加速させていきたいです。たとえば、モバイルネットワークに関するオープンコミュニティにも参加して、OSSの利用・開発を促し、その完成度を高める活動も推進していきます。
――技術者目線でローカル5Gの機能を正しく検証・評価することや、低コスト化に向けた検証は、普及期であるローカル5Gを活用した課題解決を進める上で、不可欠だということですね。
山崎:そうですね。無線通信に不安感を抱いているお客様は少なくありませんが、ローカル5Gの機能に必ずメリットを感じていただけると思います。たとえば、工場ではレイアウト変更をしても配線を変更する必要がなくなります。ローカル5Gのメリットを享受していただくためにも、私たち技術者は検証・評価のスキルを磨いていかなくてはいけない。それをリードするのが、私の役割であり、今後も注力していきたい仕事です。
※記載の所属部署・役職等は、2021年12月時点の内容です。

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