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インタビュー

仲間と創り上げるローカル5Gのソリューションモデル。
ビジネスイノベーション本部 ソリューションアーキテクト部 グループ長 門野貴明

高速無線通信の安定利用を可能にするローカル5G。それを実現するのは機器の力だけではなく、人のチカラに依るところも大きい。東日本におけるデジタル基盤の確立に貢献してきたNTT東日本には、どんなチカラがあるのか。今回フォーカスするのは、ローカル5Gを世の中に広げていくため最前線で挑戦し続けるメンバーであるビジネスイノベーション本部 ソリューションアーキテクト部 先端技術グループの門野貴明グループ長。ローカル5Gを活用したビジネスの創出に懸ける想いを聞いた。
ローカル5Gを活用し、全社横断で顧客の課題を解決する
――まず、門野さんはローカル5Gの事業にどのようなかたちで携わっているのか教えてください。
門野:地域や社会の課題を解決するためにローカル5Gを活用して変革を促すご提案をしています。僕が部長を務めるソリューションアーキテクト部 先端技術グループは総勢45名で、ローカル5GやAI、ドローンなどの先端技術を積極的に活用した革新的なソリューションモデルの創出にチャレンジしている組織です。大学や自治体、企業とのリレーションを深め、お客様が何を求め、何を課題に感じているのかを把握し、その課題をどう解決していくかを考えながら、最前線でプロジェクトを推進しています。
――課題ドリブンでローカル5Gの活用を提案されているわけですね。
門野:そうですね。ローカル5Gはあくまでもインフラであり、課題解決の手段でしかありません。とはいえ、まだまだ無線という分野の中では新しい技術です。そこで、我々はネットワークに関する幅広い知見を有している技術者集団として、ローカル5Gをどのように活用できるのか、農業や物流、働き方等、それぞれが抱える課題とローカル5Gを掛け合わせて、ソリューションモデルをつくることに注力しています。2021年上期だけでも11件を受注しており、ローカル5Gに取り組んでから2年、順調に件数を伸ばしています。
――具体的な相談は、どのようなかたちで届くのでしょうか?
門野:NTT東日本は、6事業部と29支店からなる組織です。それら組織のフロントにいる営業担当者とお客様とのリレーションはとても強固で、全国各地の自治体や地元企業と深いつながりがあります。そのため、普段のお客様とのコミュニケーションの中から、困りごとを拾い上げているんですよね。その困りごとを我々のグループに届けてくれるので、それを機に具体的な案件へと発展することが多いです。
――全社横断でお客様の課題解決に取り組まれているということですね。ソリューションアーキテクト部の中で、ローカル5Gの案件に携わっているのは、どのようなメンバーですか?
門野:12名のエンジニアが携わっています。全員、良い意味で“尖っている”メンバーばかり。ローカル5Gの技術を突き詰めているメンバー、免許関連の法制度に精通しているメンバー、プロジェクトマネジメントに長けたメンバーなど、個性的な面々が集っているチームです。全員に共通するのは好奇心旺盛なことと、新しい技術に対するアンテナが高いことですね。
――そのチームをまとめている門野さん、マネジメントで意識していることは何でしょうか?
門野:基本的なことですが、徹底して情報を共有することですね。特にローカル5Gは新しい技術なので情報のアップデートが早く、メンバー全員が同じ情報を持ち続けるのは相当大変です。また、偏った情報だと間違った判断をしてしまうので、情報を常にアップデートしていくことにこだわっています。ローカル5Gの普及促進のためにも、「仲間づくり」といったワードを使いながら事業部や支店の最前線で活躍するフロントのメンバーとの連携も強化しています。
――直轄のチームだけではなく、全国を見渡しながら「仲間づくり」を意識されていると。
門野:はい。我々が実現してきた様々なローカル5Gの構築実績や日本各地で実施させていただいている講演などをきっかけに非常に多くのお問い合わせをいただいています。そんな方たちを含めて仲間づくりを、と。また、分野別にローカル5Gによって実現できることをまとめたリーフレットを作成するなど、ソリューションアーキテクト部が蓄積したノウハウをスピード感をもって展開していくことを意識しています。
北海道で雪かき。泥くさい仕事も新技術を支えている
――では、門野さんの印象に残っている、具体的な案件を教えていただけますか?
門野:北海道岩見沢市で実施した「自動トラクター等の農機の遠隔監視制御による自動運転の実現」の実証※1は、特に印象深いですね。ローカル5Gを用いた映像伝送により、圃場(ほじょう)から約10km離れた場所で適切に無人トラクターを運用・遠隔監視・制御できるか実証しました。地域農業は労働力減少や少子高齢化の加速で、「スマート農業」の社会実装が急務とされています。そのための手段として、ローカル5Gの活用を探ることが、この実証の目的でした。
――もともとある自動運転トラクターに、ローカル5Gの技術を融合させるということですね。
門野:はい。自動運転トラクターは、前後にカメラを搭載していて高精細な映像を撮っています。その映像を通して稲の状態や刈り取りの様子を把握するわけですが、リアルタイムで確認する上で、高速で大容量のデータを伝送できるローカル5Gの活用は有効です。ただ、実装するには、無線の環境下できちんと動くかどうか、どの周波数帯がアンテナの設置環境や利用用途に合っているのかなどを検証しなければなりません。
――たとえば、どのような検証事項がありましたか?
門野:岩見沢市の圃場は、ものすごく広いので、まずはローカル5Gの電波が圃場内をカバーできるのかどうかを検証しました。また、自動運転トラクターは安全のために急停止する機能を装備していますが、人による監視も必要です。万が一、事故が起きたときには瞬時の判断が必要ですから、通信に遅れが生じないかどうかも確認しました。圃場間における農業機械の⾃動⾛⾏に関しては、農林水産省が「安全性確保ガイドライン」を定めていますので、ローカル5Gを使って要求条件をクリアできるかどうかを検証しています。
――次世代の農業を実現する上で、ローカル5Gは重要な鍵になりそうですね。この実証では、どのような場面で人のチカラを感じましたか?
門野:全国ニュースにもなった記録的な大雪の影響で、電波伝搬測定を実施するために広大な圃場内の雪かきを行いました。我々はエンジニアとして実証に参加しているわけですが、メンバー全員、朝起きて一番初めにする仕事が雪かき。ある意味で人のチカラが発揮された場面だったと思います。どんなに先端の技術でも、社会で安心安全に使えるようにするためには泥くさいことも必要です。特に岩見沢市での実証では、何としてでもプロジェクトを成し遂げるという技術者一人ひとりの執念が泥臭い仕事の積み重ねとなり、自動運転トラクターを安全に動かすこと、ひいてはイノベーションの創出に繋がっているんだと実感しましたね。
現場に赴き、顧客の声に耳を傾けることがイノベーションにつながる
――門野さんのお話から、現場や顧客を大事にされていることが伝わります。
門野:僕はいつもメンバーに、「お客様の方を見て仕事をしよう!」と伝えています。現場に出向いてお客様と会話を重ねると、困りごとの本質を肌で感じることができます。その困りごとを技術者である自分たちのフィルターを通して解釈するからこそ、最適な解決策を導けるわけです。オフィスにいるだけじゃ駄目ですね。
――門野さんは、オフィス外でどのように動かれているのでしょうか?
門野:たとえば、新潟県で多様な働き方へのシフトやワーケーションなどのニーズに応える実証(「遠隔会議や遠隔協調作業などの新しい働き方に必要なリアルコミュニケーションの実現」※2)に参加した際には長期間現地に赴き、ローカル5Gの技術特性について、徹底的に改善点の洗い出しを行いました。実証当初、導入した機器が要求されるスループットに届かず、連日パラメータ調整を繰り返しては電波伝搬測定をおこないました。こうした細かな調整作業の他、機器自体の性能改善に向けて、海外メーカーの開発陣とディスカッションしソフトウェア改修を何度もおこないました。当初は時差や言語の違いからコミュニケーションが上手く取れなかったり、文化の違いから実証案件の重要度を理解してもらうことに苦労しましたが、実証で得られる技術的な知見がローカル5Gの社会実装にマストであること、実証の意義の大きさを強く訴求することで、同じ温度で取り組んでもらうことができました。
こうした技術をとことん突き詰めていく作業の積み重ねによって、上部のソリューションが想定通りに動作してくれます。実際に環境が完成したあともユーザー目線で品質の確認を行い、高精細遠隔会議システムや3D-VR遠隔協調作業システムを体感し、さらに改善できる点がないか最後までこだわりをもって取り組みましたね。
また、北海道旭川市でeスポーツの競技場に、高速で複数選手との遠隔対戦を可能にするため、ローカル5Gを導入した実証(「eスポーツ等を通じた施設の有効活用による地域活性化の実現」※3)では、何度も現場に出向きました。利用者である現地の若者から生の声をもらったり、お客様と会議以外でもちょっとした時間の隙をみては地域の活性化に向けた議論を重ねたりしました。
――目下、ローカル5Gの普及に注力されているところだと思います。ゴールはどこに設定されているのでしょうか?
門野:最終的なゴールは、地域で暮らす人や企業で働く人、あらゆる人の生活を豊かにすることです。いまは当たり前になっていますが、20年前はスマートフォンを一人一台持つことは考えられませんでした。でも無線通信技術の進化とともにスマートフォンが普及し、社会や個人の豊かさを支えてきたかと思います。こんなふうに、次はローカル5Gがいまの世界をさらにアップデートしてくれると確信しています。
――NTT東日本はローカル5Gの社会実装に向け挑戦し続けることで、世界のアップデートの一端を担っているわけですね。
門野:そうありたいと思っています。我々はメーカーではないからこそ、メーカー等の様々な企業の皆さんと共創しつつ、お客様の課題を解決するための最適なソリューションを提供できるところが最大の強みです。僕自身、ローカル5Gの製品に関わるほぼすべての国内外のメーカーから話を聞いて、製品の特性をインプットしています。そのため、多種多様な案件に対して最適な製品の選定、提案、導入ができます。
――岩見沢市、新潟県、旭川市の実証では、すべて異なるベンダの製品を使っているそうですね。
門野:はい。ただ、あえてそうしているわけではなく、課題を解決することを第一優先で考えた結果です。ローカル5Gはまだまだ発展途上で、本来のポテンシャルを発揮するにはもう少し時間がかかります。でも、確実に次世代の通信を牽引する技術です。だからこそ、お客様の求めていることにアンテナを張りながら、仲間と一緒に世の中に新たな価値を生み出していきたいですね。
※1※2※3:総務省が実施した令和2年度「地域課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」に採択された実証。
※記載の所属部署・役職等は、2021年12月時点の内容です。

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