2016.2.1 (Mon)
経営者をトラブルから守る法律知識と手続き(第5回)
事業の拡張・転換、どのようにやりますか概要
合同会社は日本の会社形態のひとつであり、米国のLLC(Limited Liability Company)をモデルとして、2006年5月に施行された会社法によって導入された。出資者の責任は有限責任であり、意思決定方法や利益配分が出資比率によらない点が特徴である。
歴史
新会社法施行までは、従来は株式会社・合名会社・合資会社・有限会社が営利法人としての形態であったが、施行後は、旧来の株式会社と有限会社が統合した株式会社と、旧来からの合名会社・合資会社に新設の合同会社を加えた持分会社という2種類の会社類型に整理された。
長所・短所
長所としては、株式会社のように有限責任で出資範囲内のみの責任である。また、意思決定方法や利益配分が出資比率によらずに決められ、株主総会や取締役を開く必要がなく、社員の合意が会社の意志決定となり、すばやい経営判断ができる。さらに、役員の任期が基本的に存在しないので、任期毎の役員変更等の手続きが不要となっている。
短所は、2006年の施行から時間が経過しても、世間の知名度が低いのが実情である。内容を良く知らない人にとっては株式会社に比べて、漠然としたものであるがゆえに信用的に不安を感じる場合がある。加えて、出資比率によらない意思決定(議決)方法が逆に短所になることもある。会社の経営に関する意思決定は、原則出社者全員の過半数の同意が必要であり、出資額に関係なく出資者全員が同等の議決権をもつことに注意が必要である。
場面
上記の長所(有限責任・設立手続きの簡素化等)を活かして、新規創業やジョイントベンチャーなどに活用されて、平成28年度の新規設立登記は約22,000件に登る(株式会社は約88,000件。e-start 政府統計の総合窓口より参照)。業種としては、介護、建設、不動産投資業、IT関連事業などがある。
気を付けるべきポイント
米国のLLCをモデルに導入されたため、日本版LLCと呼ばれることが多い。しかし、LLCの長所のひとつであるパス・スルー課税(LLCが法人として課税されるか、構成員レベルでの個々人に課税するか、いずれか好きなほうを選択でき、二重課税を回避できる課税制度)は合同会社には認められておらず、規則面でも違う点があることも留意が必要である。パス・スルー課税について認められているのは、有限責任事業組合(通称:日本版LLP)である。