2016.2.1 (Mon)
経営者をトラブルから守る法律知識と手続き(第5回)
事業の拡張・転換、どのようにやりますか概要
ジョイントベンチャーとは、1社では請け負えない大規模な事業を行う際に、複数の企業によって設立される事業形態のことである。共同企業体や合弁企業ともいう。
共同出資による合弁会社を設立し、互いの技術や人材、設備などを提供し合い、単独での事業によるリスクを減らし、大きな利益を狙う場合に用いる。
長所・短所
長所としては、単独では到底見込めない多額の利益が得られることである。互いの企業のメリットを活かし、新規の事業や顧客の開拓が行えるといった点で、大きな利点となる。加えてビジネスチャンスを活かすといった点において、大きな武器となり得る。
短所としては、複数社による事業を展開する際に、1社が事業の選択を誤った際、ジョイントベンチャーに加わっているほかの事業者まで損失を被るといった点が挙げられる。結成時に提携先の選択は慎重に行うことが、各事業者には求められる。
種類
ジョイントベンチャーといっても、さまざまな種類がある。まず、新規プロジェクトへの参入や海外に新規進出する際の足場作りに用いられるケースである。この場合は、合弁で取り組む事業の目的が特定されており、ほかの業種ではライバル関係にある企業同士が手を組むケースが多い。
次に建設業界のジョイントベンチャーがある。その目的によって、特定建設工事共同企業体(特定JV)と、経常建設共同企業体(経常JV)に分けられる。前者は、道路、トンネル、橋架など広範囲に渡る大規模土木工事や公共工事の際に用いられ、得意とする範疇の工事を各事業者が請け負っている。後者は、企業規模の小さい建設業者が単体で受注困難な規模の工事を行う際に結成される。受注機会の拡大や利益向上が目的である。
マーケティング用語においてもジョイントベンチャーがある。これは、戦略的提携の意を指す。他社の持つ経営資産を利用する、または自社の経営資産を他社に利用させることで、双方にとって事業上の発展が見込める場合に用いられる。あくまでも、利益が見込めるかどうかが判断基準であるため、双方の事業規模は問題ではなく、中小零細企業から大企業まで、幅広く活用されている。
映画などによく見られる制作委員会方式も、ジョイントベンチャーのひとつとされている。これは、アニメや映画、テレビ番組といった映像作品や、演劇やミュージカルなどの舞台作品を制作する際に結成するものである。
映像作品や舞台を制作する会社は、作品がヒットすれば多額の利益が得られる一方、興業が不振に終わった場合には大きな負債や関連商品の不良在庫を1社で抱えるといったリスクが存在する。そのため、そのリスクを最小限に抑えるために、制作サイドや広告代理店、出資スポンサー、レコード会社、芸能事務所などが出資して、制作委員会を結成している。収益は出資額の比率によって分配されている。この方式も、ジョイントベンチャーのひとつと捉えられている。