2016.2.1 (Mon)
経営者をトラブルから守る法律知識と手続き(第5回)
事業の拡張・転換、どのようにやりますか概要
有限責任事業組合とは、有限責任事業組合契約に関する法律に基づいて組成される組合のことで、新しい事業形態である。イギリスのLLPを参考にして設立されているため、日本版LLP、もしくは単にLLPと呼ばれる。この制度は、専門的な人材を活用した共同事業の創業などを促すことが目的である。
特徴としては、次の3つがあげられる。まず、出資者が出資額以上の責任を負わなくても良い有限責任がある。次に、出資比率に関係なく、合意の上であれば利益配分を出資者同士で自由に決めても良い内部自治原則がある。最後に、LLPが利益を上げてもLLPそのものには課税されず、出資者に課税される構成員課税。通称、パススルー課税がある。
シーン
有限責任を利用した投資や開発のために設立されることがある。出資者は出資額以上の責任を負わなくて良いため、事業にかかるリスクが限定されることから、さまざまな事業に取り組みやすくなる。通常の法人では出資比率や社則など、さまざまな決まり事に基づいて事業を運営しなくてはならないが、内部自治原則を用いれば、出資者同士の合意の上で利益配分を決定できるため、柔軟な組織運営が可能となる。
そのほかに、構成員課税が適用されるため、たとえば共同研究を行う法人を設立した場合、LLP自体に課税されないことから、売上げの課税額を出資者同士で決め、分け合うことが可能となる。
気を付けるべきポイント
LLPは民法組合の特例として定めた組合であり、法人として扱われない。そのため法人格が必要な事業には利用できないし、許認可を得ることができない。許認可が必要な事業であった場合は、構成員それぞれが許認可を所得した上で、事業を始めなくてならないとされている。法人として扱われないので、株主総会、取締役会、取締役、監査役を置くことが義務づけられてはいない。
組合員に対する税務処理としては、所得税法第227条の2および所得税法施行規則第96条の2において、決算日の翌年1月31日までに、有限責任事業組合に係る組合員所得に関する計算書、を作成し、税務署に届け出るとともに、個々人の確定申告時に、LLPから分配された所得であることを申告する必要がある。
LLPは、共同で営利を目的とする事業を営むための組合契約とされているため、ひとりで設立することができない。構成員は、最低でも構成員はふたりとなっている。