イマドキの確定申告はネットで完結?電子申告に概要やメリット・デメリット
-
2023.2.24 (金)Posted by 北森 雅雄
国税のシステムや市販デバイスの進化、インターネットの普及などによって、確定申告はネットで完結できるようになりました。事前にe-Tax(イータックス)への登録が必要になるものの、ネットで行う電子申告にはさまざまなメリットがあります。
当記事ではネットでの確定申告の概要、やり方、メリット・デメリット、ネットを使った確定申告の流れを解説します。
目次:
1.e-Taxを利用するとネットで確定申告や納税が可能
ネットで確定申告を行うには、「電子申告等開始届出書」を所轄の税務署へ提出し、e-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用する必要があります。電子申告=e-Taxを使った確定申告というイメージです。
e-Taxによる電子申告の概要を解説します。
1
e-Taxとは
e-Taxとは、所得税や消費税などの国税の申告、法定調書の作成・提出、税金の納付、各種届出・申請など、さまざまな手続きをインターネット上で行える仕組みです。
e-Taxは納税者と税務署をつなぐだけでなく、eLTAX(地方税ポータルサイト)、会計ソフト、金融機関、税理士など、多くの機関・仕組みと連携しています。この幅広いネットワークが、インターネットを通じての確定申告を可能としています。
2
パソコン・スマホのどちらからでも可能
ネットでの確定申告は、インターネット環境があればパソコン・スマホのどちらからでも行えます。
確定申告書等作成コーナー(確定申告書などの書類作成をサポートする国のサイト)や会計ソフト、アプリ(マイナポータルなど)など、確定申告書を作成できるシステムは、スマホからでもアクセス・操作ができるためです。
スマホでの確定申告はスマホ申告とも呼ばれます。スマホ申告に関するマニュアルは、国税庁の公式サイトよりダウンロードが可能です。
3
ネットで作成して紙に印刷する方法もある
「e-Taxに登録するのが面倒だから、書類作成だけネットで終わらせたい」という場合は、ネットで確定申告書・決算書を作成した後に、紙へ出力しましょう。出力した確定申告書や決算書は、そのまま税務署へ提出できます。
このようにネットでの書類作成は、e-Taxを使わなくても可能です。税務署窓口への提出や郵送・信書便といった書面申告を希望する場合は、ネットで作成してから自宅のプリンター・コンビニなどで印刷しましょう。
4
ネットで電子納税も可能
確定申告した後の所得税の納税も、税務署や金融機関に行かなくてもネットを通じて行えます。電子納税の方法は主に次の通りです。
- ●事前に税務署へ届出等して行うダイレクト納付
- ●インターネットバンキングからの振替納税(登録方式・入力方式)
- ●ネット上でクレジットカードを登録して行うクレジットカード納付
- ●国税スマートフォン決済専用サイトにて決済するスマホアプリ納付
- ●配当所得:法人からの剰余金や利益の配当が該当する所得
準備さえ整っていれば、ネットで確定申告してそのまま所得税の納付まで進められます。
5
個人事業主・会社員のどちらでも可能
個人事業主・会社員のどちらであっても、ネット上で確定申告を完結できます。個人事業主の青色申告決算書(貸借対照表・損益計算書)の作成も、ネット上で作成が可能です。
法人を設立している場合は、法人税の申告やCVSファイルチェックなども、e-Taxを利用してネット上で対応できます。
2.ネットで確定申告する際に必要なもの

ネットで確定申告をする際に必要なものは、原則として書面で提出する場合とほとんど変わりません。
確定申告書や青色申告決算書はネット上で作成できるので、実際に用意するのは確定申告書の作成に必要な税務関係の書類が主になります。具体的には次の通りです。
- ●e-Taxに対応できるインターネット環境
- ●総勘定元帳や仕訳帳などの帳簿
- ●源泉徴収票や請求書、控除証明書など収入・支出を証明する書類(提出は不要)
- ●マイナンバーカードや電子証明書、e-Taxの利用者識別番号などe-Tax関係のもの
- ●ICカードリーダライタやマイナポータルアプリなど、マイナンバーカードを読み込めるもの(マイナンバーカード方式のみ)
3.e-Taxを利用した電子申告のやり方
e-Taxを利用して電子申告する方法として、主に次の3つのやり方があります。
- ●確定申告書等作成コーナーで作成・送信する
- ●e-Taxソフトで作成・送信する
- ●会計ソフトで作成・送信する
それぞれのやり方の概要を解説します。
1
確定申告書等作成コーナーで作成・送信する
確定申告書等作成コーナーとは国税庁が運営するWebサイトで、確定申告書や青色申告決算書などの作成をサポートするものです。
画面の案内やマニュアルなどに沿って収入・控除額を入力するだけで、誰でも簡単に必要書類を作成できます。入力した数値はすべてシステム上で自動計算され、所得額や納税額を算出してくれます。
確定申告書等作成コーナーで作成した確定申告書のデータは、e-Taxへ送信したり紙に印刷したりが可能です。e-Taxに送信した場合は、e-Tax受付システムにて当該データを使って電子申告作業へと進みます。
2023年1月には機能がアップデートされ、以前は対応していなかったスマホでの青色申告決算書・収支内訳書の作成も、確定申告書等作成コーナーで作成できるようになりました。
他にもマイナンバーを利用しての申告時に読み取り回数が1回になったり、マイナポータル連携(マイナポータル経由で控除証明書などのデータを一括取得・自動入力する機能)の範囲が広くなったりなど、年々使いやすくなっています。
会計ソフトと違って月額料金もかからない点も、確定申告書等作成コーナーのメリットです。
2
e-Taxソフトで作成・送信する
e-Taxソフトとは、e-Taxの公式サイトからダウンロードできる、確定申告書などを作成するためのソフトです。
確定申告に対応できるe-Taxソフトは、実際にソフトをパソコンへインストールする「e-Taxソフト」と、ソフトをインストールしなくてもブラウザ上で作業ができる「e-Taxソフト(Web版)」の2種類があります。スマホ用のe-Taxソフト(SP版)は、確定申告には対応していません。
e-Taxソフト・e-Taxソフト(Web版)を利用するには、事前に「利用者識別番号」や「電子証明書(マイナンバーカードなども含む)」が必要です。また、OS・デバイスによっては利用できない可能性があります。
インストール型のe-Taxソフト
インストールするe-Taxソフトのメリットは、対応できる申告・手続きの範囲が広い点です。
所得税の確定申告だけでなく、相続税・法人税・消費税・酒税・間接諸税(印紙税や石油ガス税など)などの国税や、電子帳簿保存法関係・納税管理人関係といった手続きなどに対応できます。
また、確定申告書等作成コーナーや会計ソフトで作成した確定申告書のデータを、ソフト内に取り込むことが可能です。取り込んだデータは、e-Taxソフト上で編集できます。
取り込みや編集が終わったら、作成データをe-Tax受付システムへ送信し、e-Tax受付システムにて電子申告を行いましょう。
e-Taxソフト(Web版)
e-Taxソフト(Web版)のメリットは、ソフトのインストールなどの作業が必要でない点です。e-Taxソフト(Web版)に対応できるOSやブラウザであれば、いつでもアクセスして作業に取りかかれます。
ただし、e-Taxソフト(Web版)では確定申告書データの作成・編集ができません。原則として、確定申告書等作成コーナーや会計ソフトで作成したデータを取り込み、そのままe-Tax受付ソフトへ送信するのが主なシステムとなっています。
3
会計ソフトで作成・送信する
e-Taxに対応している会計ソフトであれば、会計ソフトで作成した確定申告書データをe-Taxソフトなどへ送信し、そこからe-Tax受付システムへ送って電子申告ができます。
会計ソフトでの電子申告の大きなメリットは、証憑書類の発行などの事務作業や、勘定科目設定・仕訳などの帳簿作業にも対応している点です。発行書類や帳簿付けのデータは、確定申告書や決算書作成時にそのまま流用できます。
簿記知識に自信がない、確定申告作業を効率化したいといった人は、会計ソフトでの電子申告をおすすめします。
4.ネットで確定申告する3つのメリット

ネットで確定申告をするメリットは、主に次の3つです。
- ●自宅や事務所で確定申告作業を終わらせられる
- ●e-Taxでの電子申告におけるさまざまな特典が利用できる
- ●訂正申告が簡単にできる
1
自宅や事務所で確定申告作業を終わらせられる
ネットであれば、自宅や事務所で確定申告書関係の書類の作成・提出を終わらせられます。税務署の窓口や郵便局などへ、足を運ぶ必要がありません。
税務署が遠かったり時間が取れなかったりする場合は、ネットでの確定申告をおすすめします。
2
電子申告におけるさまざまなメリットを享受できる
e-Taxの電子申告は、書面申告にはないさまざまなメリットを享受できます。具体的には次の通りです。
- ●青色申告特別控除が最大額65万円で適用できる(書面の場合は最大で55万円)
- ●還付金(源泉徴収などで納めすぎて帰ってきた税金)が受け取れる場合は、書面申告より早い時期に振り込まれる
- ●2月15日以前から確定申告を受け付けている(1月初旬~中旬あたりから申告可能)
- ●所得控除・税額控除関係の書類など添付が必要な書類の提出・掲示を省略できる
- ●e-Tax稼働日であれば24時間いつでも申告できる(申告期間中かつメンテナンス時間でないとき)
- ●マイナポータル連携を利用すれば、控除額データを一括取得・反映ができて作業が効率的になる
確定申告に慣れてきた人は、電子申告のほうがメリットは大きいでしょう。
3
訂正申告が簡単にできる
訂正申告とは、確定申告後かつ確定申告の期間中(原則として2月16日〜3月15日)で申告内容の誤りに気づいたとき、正しい数値をあらためて申告することです。
電子申告による訂正申告の手続きは、正しい内容の確定申告書を新しく作成し、そのまま送信するだけで終わります。訂正申告の報告や、追加手続きなどはありません。電子申告の場合、税務署は一番最後に送信したデータを正式な内容として受理するからです。
確定申告期間が過ぎた後に過少申告や過大申告に気づいた場合は、一度税務署へ問い合わせて対応方法を確認しましょう。期限後の過少申告の修正や無申告は修正申告となり、追徴課税が発生します。過大申告だったときは、更正の請求を行うことで還付金を受け取れます。
5.ネットで確定申告する2つデメリット
メリットが多いネットでの確定申告ですが、デメリットもいくつか存在します。具体的には次の2つです。
- ●税務署の職員のその場チェックが受けられない
- ●e-Taxの準備に手間がかかる
1
税務署の職員のその場チェックが受けられない
電子申告だと、税務署の職員にその場で書類のチェックをしてもらえません。
書面申告で税務署の窓口に持っていくと、窓口にて税務署の職員が書類の不備・不足を確認してくれます。初めて確定申告する人で不安な場合は、書面申告をおすすめします。
2
e-Taxの準備に時間がかかる
特典の多さがe-Taxによる電子申告のメリットですが、e-Taxを利用するにはさまざまな手続きが必要です。必要な準備は次の通りです。
- ●e-Taxが利用できる環境(OS・デバイスなど)を揃える
- ●マイナンバー方式で登録する場合はマイナンバーカードを発行する(設定する各種パスワードは番号を控えておく)
- ●ID・パスワード方式で登録する場合は、税務署へ届出を提出する(税務署窓口またはオンライン)
- ●所定の手続きで利用者識別番号や電子証明書を取得する
- ●e-Taxソフトを使うときは、ソフトのインストールを行う
手続きの流れや申請方法等は、e-Taxの公式サイトやマニュアルなどに記載されています。しかし、専門用語や見慣れない単語も登場するので、やや難解でわかりづらさもあります。
とはいえ一度登録を済ませれば、翌年以降は手続きをせずともe-Taxの利用が可能です。時間があるときに、早めに準備を進めておくとよいでしょう。
6.ネットでの確定申告のやり方

ネットで確定申告のやり方を流れに沿って簡単に解説します。原則としてインターネットを利用する以外は、書面での確定申告と流れは同じです。
1
e-Taxへ登録する
利用者識別番号や電子証明書などを取得し、e-Taxへの登録を行います。登録方法はマイナンバーカード方式とID・パスワード方式の2つから選べます。どちらを選んでも問題ありません。
登録申請の方法は、税務署窓口で行ったりマイナポータルを経由したりなど、さまざまな方法があります。
おすすめはマイナポータルを経由したマイナンバーカード方式です。
マイナポータルは確定申告作業の効率化ができる上に、税務申告以外にもさまざまな行政手続きに対応しています。マイナポータルが対応しているサービスは次の通りです。
- ●引越・年金・子育て・介護などに関する、行政手続きの申請ができる
- ●自身の所得・地方税健康保険証・その他行政からのお知らせなどの情報をチェックできる
- ●ねんきんネットやハローワークなどの外部サイトと連携できる
確定申告以外にもマイナンバーカードを活用する予定がある場合は、マイナポータル連携を検討してみてください。
2
確定申告書を作成する
前述した確定申告書等作成コーナーやe-Taxソフト、会計ソフトなどを用いて、実際に確定申告書や青色申告決算書などを作成していきましょう。
ネットで作成する場合は数値を自動計算してくれるので、数値の打ち間違いや転載ミスがなければ、計算ミスは発生しません。帳簿付けの段階でミスがないようにだけ注意しましょう。
電子申告の場合は、各添付書類の提出を省略できます。とはいえ、収入・控除額の入力や確定申告書の見直しの際には必要になるので、作業時には書類を手元にまとめておくのがおすすめです。
3
確定申告書をe-Tax受付システムへ送信し納税を行う
作成した確定申告書はe-Tax受付システムへ送信し、e-Tax受付システムを用いて電子申告を行います。送信が完了すると確定申告手続きは終了です。送信前には、確定申告書の内容に間違いがないかしっかりと確認しておきましょう。
確定申告で納税額を申告した後は、実際に納税を行います。納税の期限は3月15日までなので、忘れないうちに終わらせておきましょう。還付金が受け取れる場合は、e-Taxの場合だと約3週間後に指定した口座へ振り込まれます(書面申告は1か月〜1か月半)。
7.税理士に電子申告の代行を依頼することも可能
「確定申告作業をする時間が取れない」という人は、税理士に電子申告の代行を依頼できます。税理士に代行をお願いする場合でも、代理送信は「申告・申請等のデータの作成・送信」だけでなく、「e-Taxの開始届出書の提出」もできます。
電子申告を税理士に依頼するメリットは次の通りです。
- ●手続きや入力ミスがない正確な確定申告ができる
- ●確定申告に関して税理士が関わったと信頼性をアピールできる
- ●確定申告作業を任せている間に、自分は他のことに時間を使える
依頼予定の税理士事務所が電子申告に対応しているかは、事前に問い合わせるなどしてチェックしておいてください。
なお代理送信を依頼する際にも、事前に利用者識別番号と電子証明書の準備が必要です。
8.ネットを使って効率的な確定申告を!

ネットを使った確定申告は手続きに手間がかかるものの、自宅・事務所から申告できる手軽さや青色申告特別控除65万円などのメリットを考えると、長期的にメリットが大きいです。
やり方も案内画面やマニュアルをチェックすれば、問題なく進められます。インターネット環境がある場合は、電子申告による確定申告を検討してはいかがでしょうか。
-
経費精算ならサービスとサポートをセットに!経費精算 無料体験申込フォーム
NTT東日本では、経費精算をはじめとして、バックオフィス業務効率化サービスを無料体験できるメニューを提供しています。
実際に、操作画面をみながら、導入の相談をできますので、お気軽にお問い合わせください!
この記事を書いた人
NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。