経理と財務の違いは使うお金のタイミング!注意したい不正リスクとは
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2023.3.27 (月)Posted by 北森 雅雄
お金を取り扱う仕事として「経理と財務の違いが分からない」という方は多いのではないでしょうか。
経理と財務はともにお金を管理する仕事ですが、両者の違いは「どのタイミングで使うお金を管理するのか?」という点にあります。
そこで本記事では「経理と財務の違い」について解説します。企業では経理と財務は明確に分けられており、適切に担当を区分しなければなりません。
経理と財務の違いについてわかりやすく説明するので、ぜひ参考にしてください。
目次:
1.経理と財務の違いとは?お金を使うタイミングに注目!

事業規模の大きい会社には経理部および財務部と呼ばれる部署が存在することが多いです。どちらもお金を取り扱う部署ではあるのですが、両者の違いをよく分かっていないという方は多いのではないでしょうか。
経理と財務の違いはお金を使うタイミングによって区分できます。経理はこれまでに使った「過去のお金」、財務はこれから使う「未来のお金」を管理する仕事です。
それぞれ役割が明確に異なっているため、両者の業務はしっかり区分する必要があります。
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経理は「過去のお金」を管理する仕事
経理はこれまで実績として残ってきたお金、いわば「過去のお金」を管理する仕事です。
経理は簿記という技術で帳簿を起こします。簿記とは企業の商取引を正しく帳簿に起こし、損益や財務状況を正確に記録する技術です。
多くの企業では複式簿記を採用しています。複式簿記とは企業取引をするときに貸借の二面性に着目し、借方と貸方という2つの対になった項目を用いた記帳方法で、貸方と借方の金額は必ず等しくなります。複式簿記を用いることで会社の財務状況を正しく判断することに役立ちます。
経理は簿記を活用して企業の財務状況を正しく管理することで財務諸表と呼ばれる計算書類を作成し、決算を正しく行うという役割があります。
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財務は「未来のお金」を管理する仕事
財務は会社が保有しているお金をどのように使っていくか計画する、いわば「未来のお金」を管理する仕事です。
財務は企業の財務状況を分析し、企業の収益性や資金繰りの管理を行います。財務は経理が作成した会計情報をもとに財務の分析を行うため、経理と財務の役割は明確に区分されるものです。
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経理と会計の違い
財務は会社が保有しているお金をどのように使っていくか計画する、いわば「未来のお金」を管理する仕事です。
経理とよく似たものに「会計」という考え方があります。
会計は経理が作成した決算書などの計算書類による記録や情報に基づいて財務状況などを分析する仕事です。財務状況を分析することで経営陣への報告に役立てるほか、予算作成や資金調達などの経理判断に役立てます。
会計には大きく分けて「財務会計」と「管理会計」に分けられます。財務会計は企業外部の利害関係者(債権者や株主など)へ報告するための会計、管理会計は企業内部向けに役立てるための会計です。
経理と会計はまったく違うものではなく、経理と会計は密接に結びついています。経理が取りまとめた財務情報を会計が取りまとめるため、経理の担当部署が会計を担当していることが多いです。
経理と財務と会計の違いをまとめると、以下表の通りとなります。次の項からは経理と財務の具体的な業務の例を確認していきましょう。
業務の種類 | 業務内容 | 業務の例 |
経理 | 過去のお金を管理する業務 | 決算管理、税務管理 |
財務 | 未来のお金を管理する業務 | 資金調達、予算管理 |
会計 | 財務状況を取りまとめて分析する業務 | 財務会計、管理会計 |
2.経理の仕事内容一覧

経理はこれまでに使った過去のお金、すなわち実績として残ったお金を管理する仕事です。日々の取引を伝票に記録し、計算書類を正しく記録することに責任を持ちます。
経理の仕事は記録するタイミングに応じて「日常業務」「月次業務」「決算業務」の3種類に分けられます。それぞれ、日々の取引を記録する業務、月ごとに残高の精度をチェックする業務、決算ごとに決算を取りまとめる業務です。
種類 | 業務内容 |
日常業務 |
・伝票記帳 |
月次業務 |
・入金管理 |
決算業務 |
・決算書の作成 |
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財務諸表の作成・管理
経理は簿記という手法を用いて日々の商取引を帳簿に記録します。多くの企業では複式簿記を採用しており、資産の動きと損益の動きをチェックできる帳簿となっていきます。
作成した帳簿を取りまとめたものが財務諸表という計算書類です。財務諸表は「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」の3つに分類されます。企業の財務状況、会計期間における企業成績をチェックできる状態にすることが経理の役目です。
残高管理
経理は取引を帳簿に起こすだけでなく、残高を管理することで財務状況を正しい状態に保ちます。複式簿記で記帳している場合、残高を正しい状態にすることで会計期間の損益を正しく計算できるのです。
経理が管理するべき残高は以下の項目です。経理は月次ごと、あるいは決算期末ごとにこれらの残高が正しい状態にあるかをチェックします。
残高の種類 | チェック項目 |
現金 | 現金の残高が計算書類の残高と一致するか |
売掛金・買掛金 | 掛け取引の残高が回収あるいは支払できているか |
経過勘定 |
一時的に収益のズレを調整する勘定が正しい状態か |
棚卸資産 |
棚卸資産の残高が会計帳簿と一致しているか |
固定資産 |
固定資産の減価償却は済んでいるか |
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決算管理
経理は決算を管理することで経営者や外部の利害関係者に財務状況や経営成績を正しく報告します。
決算は会計期間における企業の財務状況や経営成績を取りまとめる業務です。経理は財務諸表などの計算書類を作成し、株主や投資家など企業の利害関係者に報告します。
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税金管理(税務)
経理は企業があげた収益に対して支払うべき税金を正しく計算し、国や地方に納税するための計算を行います。企業が支払う税金としては、法人税のほかに消費税、法人住民税、固定資産税などがあります。
税金を計算する業務のほか、税務署による税務調査への対応も経理の役割です。
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内部統制の管理
企業のお金を管理する経理は不正が起きないようにチェックしなければなりません。経理は内部統制の運用を管理し、適切な牽制機能を果たす必要があります。
内部統制とは企業が企業が定めたルールを正しく運用するためのプロセスを管理することです。経理は内部統制が正しく機能していることを確認し、経理が正しく行われることを証明します。
3. 財務の仕事内容一覧

財務は会社のお金をどのように使っていくべきか、未来のお金について計画する仕事です。
財務の仕事内容は以下の通りとなっています。資金や予算を管理し、必要があれば会社運営に必要な資金を調達することも財務の役割です。
- ●資金管理
- ●資金調達
- ●予算管理
- ●IR
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資金管理
財務は会社の資金を管理することが主な役割です。ここでいう資金とは主に現金などの流動資産(すぐに現金化できる資産)を指します。
企業が運用するために必要な資金の計画を立てて、必要があれば運転資金を外部から調達することが財務の務めです。
資金調達
財務は資金計画のもと、企業の運営に必要な運転資金を調達します。資金調達の手段としては銀行からの借り入れ、株式の発行、有価証券や不動産の売却といった方法があります。
銀行から資金を借り入れる際、銀行と借入交渉をすることも財務の役割です。会社が十分な返済能力を有しているか、借り入れたお金をどのように運用していくか説明することで借り入れ交渉を行います。
<資金調達の方法> |
資産と資本の違い
「資産」と「資本」は似ている概念ですが、内容が異なります。
資産は企業が所有している現金や土地などの財産です。一方、資本は株主が出資したお金なので企業の持ち物ではありません。株主の出資による資本を「自己資本」、銀行からの借り入れなど企業外部から調達した資本を「他人資本」あるいは「外部資本」と呼びます。
貸借対照表上においては借方に資産、貸方に資本を記述します。資本は資産から負債を差し引いた金額と定義されます(負債=資産ー負債)。
貸借対照表の構成 | |
資産 | 負債 |
資本 |
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予算管理
財務は会社の収益性や財務リスクを分析し、予算を編成及び管理します。
経営者が立てた目標設定に対し、売上や費用を予測して適切な予算を作成します。
予実管理
予実管理とは予算と実績を比較して管理する業務です。
当初に作成した売上予測をどれほど達成しているのか、予算と実績がどれほど乖離しているのかを調べることで業績の評価ができます。
財務リスクとは
財務リスクとは企業の財務に潜むリスクです。
財務リスクの例として、「為替リスク」「金利リスク」「株価リスク」「クレジットリスク」などが挙げられます。財務はこれらのリスクについて適切な対応が必要です。
<財務リスクの例> |
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IR
IR(Investor Relations)は企業が株主や投資家へ投資をする際に必要な情報を提供する業務です。投資の判断に必要な経営成績や財務状態を開示するためにディスクロージャー情報を作成し、投資家へ公開します。
IRの具体的な業務は投資に必要な情報を開示すること、決算報告会での報告などが挙げられます。
4.経理と財務の担当部署は分けるべき?

経理と財務の担当者は別々に分けるべきでしょうか?
これまでに紹介したように、経理と財務は似た仕事をしているようで役割は大きく異なります。そのため、経理と財務の担当部署は別々に分けることが望ましいです。
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担当者が同じだと正しい分析ができない
経理の役割は会社の経営状況や財務状態を明らかにすることで企業の経営分析に貢献することです。一方で、財務の役割は経理が取りまとめた会計情報をもとに財務計画を立てることです。
もし経理と財務の担当者が同じであった場合、財務の計画を作成するために恣意的な経理をしてしまう恐れがあります。そのため、経理と財務の担当者を別々にしなければ正しい分析ができなくなってしまうのです。
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チェック体制を確立する
経理と財務は別の担当者を置くことが望ましいですが、人手が足りない中小企業の場合は人材が確保できないことも多いです。
経理と財務は役割が異なるものの、業務内容は近いものがあります。そのため、チェック体制を確保して業務領域を明確に区分しましょう。経理処理の状況を検証可能な状況にしておくことで、不正を起きさせない体制を確立することが重要です。
5.「おまかせ はたラクサポート」で経理業務を効率化!

経理や財務を管理するなら「freee会計 for おまかせはたラクサポート」がおすすめです。
毎日の記帳業務など経理の仕事に役立つことはもちろん、資金繰り管理や予実管理といった財務の仕事に役立つレポートを作成してくれます。
予実管理は会計データをもとに予算計画を作成し、実績と対比することで予算の状況をクリアにしてくれるツールです。ほかにも経営分析や財務分析に役立つレポートを自動で生成できるため、分析業務に大きく役立つでしょう。
提供機能 | 詳細 |
毎日の記帳 | 銀行明細の入力
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資金繰り管理 |
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予実管理 |
予算作成 |
決算業務 |
決算書類作成 |
経費精算 |
経費科目/申請経路の設定 |
取引先管理 |
住所/口座/支払日の管理 |
ワークフロー |
支払依頼 |
内部統制・IPO準備取引先管理 | 内部統制 権限管理 |
電子帳簿保存 | 2022年1月施行電子帳簿保存法改正に対応 |
6.まとめ
経理と財務の役割は似ているようで大きく異なるものです。経理は主に日々の取引を記録し、正しく決算報告をするという使命があります。一方、財務は経理が記録した計算書類をもとに財務情報を分析し、企業の資金計画に役立てるという使命があります。
経理や財務の仕事を効率的に進めるなら「freee会計 for おまかせ はたラクサポート」がおすすめです。ツールを用いることで経営レポートを作成し、適切な経理および財務を行うことで健全な企業会計および財務状態の確保ができるようになります。
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この記事を書いた人
NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄
NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。
2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。
2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。