• 2023.3.21 (火)
    Posted by 北森 雅雄

会計の具体的な業務内容と、経理・財務・簿記の違いをわかりやすく解説

会計という言葉はよく耳にしますが「具体的にどのような業務なのかよくわからない」という方は多いのではないでしょうか。

また、会計と混同しやすい言葉として経理・財務・簿記があり、使い分けがあいまいな方も少なくありません。ここの共通言語があいまいだと、取引先や社内で話が通じないこともあり不便です。

そこで本記事では、会計の具体的な業務内容と、経理・財務・簿記の違いをわかりやすく解説します。

会計業務のポイントも紹介するので、会計業務をスムーズに行いたい経理担当者や経営者の方は、ぜひ最後までお読みください。

.会計とは?お金の取引を記録して報告すること

会計とは、企業や公的機関などがお金やものの取引を記録し、その結果計算された収支や財政状態などを利害関係者に報告することです。

つまり、会計の業務は取引の記録だけではありません。
記録したものをまとめ、利害関係者に報告することで、会計の目的を果たすことができます。
そのため、会計にはある一定のルールや財務諸表などの様式があることに注意しましょう。

また、会計は企業や公的機関だけが行っていると思われがちですが、取引を記録し報告する目的で、収支のある町内会や部活、サークル活動などでも行われています。

ただし、企業や公的機関以外の任意で会計を行う組織には、法律で定められた会計の規則は存在せず、組織独自のルールに従う必要があります。

どのような組織であっても、お金の流れを正しく記録して報告することが会計の重要なポイントです。

なお、利害関係者とはその組織と利害関係のある人や組織を指す言葉で、ステークホルダーとも呼ばれます。つまり企業内部の経営者や従業員、取引先、株主、金融機関、官公庁や地域の方などが利害関係者になりえます。

.会計業務の3つの種類

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企業が行う企業会計は、次の3つに区別することができます。
それぞれ業務の目的や報告対象が異なります。

  • ●財務会計
  • ●税務会計
  • ●管理会計


財務会計

財務会計は、企業の財政状態や経営状況を、企業外部の利害関係者に対して報告することが目的です。

法律で定められたルールに則って企業活動を財務諸表にまとめ、有価証券報告書やIR情報などとあわせて開示します。

開示された情報をもとに、利害関係者は自身の行動を判断します。

たとえば、株主や投資家であれば株を保有するか売買するか、金融機関であれば融資を実行するかどうかなどです。

企業が開示する会計情報は、株価や資金調達にとって重要な情報になります。


税務会計

税務会計は、税金を正しく計算して申告し納付することが目的です。

税務会計は財務会計の一部とされることがありますが、目的が異なるため財務諸表の内容も異なる場合があります。

特に収益や費用の考え方が財務会計と税務会計では異なる場合があるため、注意しなくてはいけません。

代表的な違いとして、減価償却費があげられます。
財務会計では企業の実態をあらわすために、資産の使い方に合わせた耐用年数による減価償却費が計算されます。

しかし、それでは同じ資産でも企業それぞれが異なった耐用年数を設定してしまい、課税の公平性が保てません。

そこで税務会計では、法的に決められた法定耐用年数を使って、減価償却費を計算しなおします。

このようにして、税務会計では税金を正しく計算するために、財務会計で計算した利益を法人税などの課税所得に調整する手続きを行います。


管理会計

管理会計は、社内に対して経営報告を行うことが目的です。

そのために、以下のような資料の作成も行います。

  • ●原価計算
  • ●キャッシュフロー計算書
  • ●経営分析
  • ●予算管理
  • ●事業計画書など

管理会計によって計算された結果は、経営者や管理者が企業状況を把握したり、意思決定をしたりするために役立てられます。

管理会計は、あくまで社内にむけた経営判断のための会計です。
そのため法的なルールや義務はありません。

しかしルールがないとはいえ、管理会計にミスがあると経営判断を誤ってしまいます。
正しい会計処理は、管理会計でも必要になります。

.会計と経理・財務・簿記の違いは?

経理や財務、簿記の業務は、会計に深く関わりのある仕事ですが、それぞれの業務内容や意味は異なります。

特に経理と簿記は会計業務の一部を指しますが、どの業務が経理なのか、簿記とはどの作業のことなのかをはっきりと区別して仕事することはあまりありません。
しかし、資格試験や勉強が必要なのは簿記とされており、明確な意味の違いがあります。

経理と財務と簿記について簡単に解説するので、違いを理解しておきましょう。


経理とは「お金の管理と帳簿作成」

経理とは、企業のお金と取引の流れを記録し管理する業務です。
「経営管理」の略称とされ、お金に関わる全般的な役目を担っています。

具体的な業務内容は、以下になります。

  • ●請求書の作成や支払いなどのお金の管理
  • ●伝票や帳簿への記帳
  • ●経営資料の作成
  • ●税金関係の各種申告など

一方、会計も取引の管理と記録が業務内容ですが、報告までが会計業務に含まれます。
経理は会計報告するための帳簿や資料を作る業務、ととらえればわかりやすいでしょう。


財務とは「資金計画と資金調達」

財務とは、財務諸表などをもとに資金計画を立案し、資金を調達する業務です。
つまり、会計情報を使ってその先の行動を起こすことが財務だといえます。

具体的には、経理が作成した貸借対照表や損益計算書などから中長期的な資金計画を立て、資金の調達や運用をするのがおもな業務です。
また、金融機関との交渉も行うため、豊富な知識や経験と計画力・実行力が必要とされます。

大企業では財務部門が経理部門とは別に設置され、CFO(最高財務責任者)がおかれることもあります。
一方、中小企業では経営者が財務を担っていることが多いようです。


簿記とは「仕訳と記帳作業」

簿記とは、日々の取引を仕訳におこし帳簿に記録する業務です。
「帳簿記入」の略称とされ、お金や取引の流れを記録する方法を指します。

具体的には、日々の取引について実態にふさわしい勘定科目で仕訳を作り、帳簿にまとめることが業務です。これを記帳作業といいます。

帳簿から作られた財務諸表をもとに、会計報告や財務業務が行われます。
簿記は会計や財務、経営判断を正確に行うための下準備となる業務、と考えるとわかりやすいでしょう。

そのため経理を担当するなら、簿記の技術を身につけることが必要です。
勉強だけでも十分ですが、技術力に応じた簿記3級から1級までの資格試験を商工会議所が主催しています。
正確な簿記知識習得のために、資格試験にチャレンジしてもよいでしょう。

.会計業務の流れ

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会計業務には、1年の間に「日次」「月次」「年次」という大きな流れがあります。

日次を積み重ねることで、月次、年次へとつながっていきます。

また月次では月に1度、年次では年に1度の業務もあるので、忘れずに処理することが大切です。


日次の会計業務

日次の会計業務は、すべての会計の基本となります。
そのため、毎日の取引を正しく記帳しましょう。

具体的な業務は、経費などの領収書精算や売上仕入の記録、領収書や請求書の整理などです。

また、未処理伝票や記帳ミス・漏れがあると、帳簿と実際の残高が合わなくなってしまいます。
後日さかのぼってミスを見つけることは容易ではありません。
帳簿と実際の残高が一致しているかを日々確認するのも、重要な業務です。


月次会計業務

月次会計は、日々記帳した帳簿を月末に締め、その月の収支をまとめる業務です。
また、帳簿と実際の残高が一致しているかも確認します。

さらに月に1度の業務として、以下のようなものがあります。

  • ●給与支給に伴う記帳や支払い
  • ●請求書の作成(月締めの契約)
  • ●売上の入金確認と記帳
  • ●仕入れや経費、社会保険料の支払い

月次で決算を行っている会社は、月次決算に伴う業務も行わなくてはなりません。


年次会計業務

年次会計とは、期末に行う決算処理を指します。すべての会社は1年間で事業を締め、決算を行わなければいけません。

日々の取引と月次会計で作成した帳簿をもとに、1年間の取引をすべてまとめて財務諸表などを作成します。

また年に1度の処理として、未収収益などの経過勘定科目や減価償却の計上などがあります。

さらに、決算日から2ヶ月以内に決算を締めて確定申告書を作成し、税務署に申告し税金を納付することが必要です。

ようやく決算作業を終え申告が済むと安心してしまいますが、会計業務はまだ終わりではありません。

決算が締まったら領収書や請求書の整理、次の事業年度のために帳簿の繰越をします。
そしてまた新しい事業年度で日々の取引を積み重ねていく、というのが会計業務の流れです。

繰り返しになりますが、年次会計業務は月次会計業務のまとめであり、月次会計業務は日々の正しい会計業務を積み重ねた結果です。日々の会計業務をいかに正しく効率よく行えるかが、重要なポイントといえます。

.会計業務のポイント4選

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会計業務の内容は幅広く多岐に渡るため、会計業務担当者の多くが作業をスムーズに進めたいと考えています。

そこで次に会計業務のポイントを4つ紹介します。ぜひ参考にしてください。

  • ①会計処理はルールを守って正確に
  • ②日々の業務をためこまない
  • ③書類は正しく保存する
  • ④会計業務全体を効率化する


ポイント①会計処理はルールを守って正確に

会計の目的は取引を記録し報告することなので、正確に処理しなければいけません。
会計で作成した財務諸表は、経営の意思決定に役立てたり、利害関係者が判断の材料にしたりするからです。

会計処理にミスや漏れがあると、企業の経営に大きく影響を及ぼし、多大な損失を生む可能性もあります。
企業の成長のために、会計処理が正しく行われることは重要な要素なのです。

また、会計処理は法律などでルールが決められています。
企業外部の利害関係者が正しく判断するために、開示する財務諸表はある一定のルールが守られていることが前提です。
万が一故意に財務諸表を操作すれば、正常な経済活動が行えないからです。これは「不正会計」とよばれ、厳しいペナルティが課されます。

会計のルールは、企業会計がどの立場からみても正確であるためのものなので、必ず守りましょう。
その基本となる大きな理念は「公正妥当」です。

公正妥当とは、社会一般に認められ社会のルールとして受け入れられていることを指します。
日本の会計制度について、日本公認会計士協会のサイトには次のように説明されています。

日本の会計は、一般に公正妥当と認められる「公正なる会計慣行」を規範としています。

引用元:日本公認会計士協会 日本の会計制度

さらに具体的な会計処理に関する指針として、「企業会計原則」が作られています。

企業会計原則は、正確な会計帳簿の作成や会計方針の継続適用など、会計処理をするうえで守るべき原則を7つあげています。

会計処理を担当するときは、7つの企業会計原則をぜひ確認しておいてください。

他にも財務諸表規則や会社法、税法に従って会計処理を行います。

会計処理はこれらのルールを守って正確に行いましょう。


ポイント②日々の業務をためこまない

会計処理は日々の取引の積み重ねです。そのため日々の業務はためこまず、その都度処理することがポイントです。

決算で1年分をまとめて処理しようとしてはいけません。
その理由は次の2つです。

  • ●時間が経てば取引の詳細な内容を忘れてしまうため、処理を間違ってしまう。
  • ●1年分の作業量は膨大で、作業時間が足りなくなる。

伝票作成だけではなく、帳簿の残高を合わせる作業もこまめに行うことをおすすめします。
帳簿に間違いがあった場合、さかのぼって確認する作業には想像以上の時間と手間がかかります。

もしすぐに処理できないときは、あとからでも正しく処理ができるように、詳細や注意点などをメモしておきましょう。


ポイント③書類は正しく保存する

会計処理を行うときは、領収書や請求書、契約書などの書類をもとに作業します。

これらの書類は作業が終わっても破棄してはいけません。
書類は正しく保存しましょう。10年分を保存していれば安心です。

書類を保存する理由として、たとえば作成した帳簿の内容について問い合わせがあれば、書類を根拠にして説明する必要があります。
また伝票に間違いがあれば、間違いを正すために書類の確認が必要です。

さらに、税法には書類保存の規則があります。この規則を守っていなければ税金計算で損をする場合もあるので、書類や帳簿の保存には注意しましょう。

帳簿書類等の保存については国税庁のサイトをご確認ください。

国税庁 帳簿書類等の保存期間


ポイント④会計業務全体を効率化する

会計業務には日々の取引の記帳をはじめ、以下のような要素があります。

  • ●経費精算
  • ●入出金管理
  • ●給与計算
  • ●報告資料の作成
  • ●申告納税など

これらは別々の業務ですがそれぞれに関連性があるため、全体を一括で管理することで効率化が可能です。

たとえば給与は勤怠管理、給与計算、支払手続き、記帳作業という4つの業務から成り立っています。
それぞれを別に管理していると手間がかかってしまい、従業員が多い会社であれば給与業務だけに数日を費やしてしまうことも珍しくありません。

業務全体を効率化するためには、業務管理の連携ができる会計ソフトを導入したり、会計業務を一括で管理できるサービスを活用したりするなどの対策が効果的です。

.まとめ 会計業務のやり方とポイントを知って効率よく仕事しよう

会計とは、取引の記録と報告をすることです。

取引の記録には、日次と月次、年次の処理があり、その都度正確に処理してください。日々の取引処理に誤りがあれば、見直しに時間がかかるからです。

効率化するポイントは業務全体を把握して一括で管理することですが、会計処理の様々な業務を一括管理する方法がわからずに、悩んでいる経理担当者や経営者の方が多くいらっしゃいます。

そのようなお悩みをお持ちの方は、NTT東日本の「freee会計 for おまかせ はたラクサポート」へぜひご相談ください。

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この記事を書いた人

NTT東日本 ビジネス開発本部 北森雅雄

NTT東日本に入社後、自治体向けのシステムエンジニアとして、庁内ネットワークや公共機関向けアプリケーションなどのコンサルティングからキャリアを開始。

2018年から現職にて、プロダクト(SaaS)開発、デジタルマーケティング全般のディレクションに従事。

2022年に業務のデジタル化を分かりやすく発信するオウンドメディア(ワークデジタルラボ)のプロジェクトを立ち上げ。
NTT東日本にかかわる、地域のみなさまに向けてデジタル化に役立つ情報発信を展開。

北森雅雄 masao kitamori

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