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飲食店を開業するために必要な準備は?流れや資格・届け出などを紹介

2021.11.26

今回の記事では、飲食店を新規で開業するにあたって、どのような準備や流れがあるのか知りたいという方に向けて、事業計画から物件探し、資金や資格・届け出まで包括的に説明していきます。

1.事業計画・コンセプトの作成

事業計画・コンセプトの作成

飲食店の開業準備には、具体的な場所や機材を確保する前段階の「そもそもビジネスとしてどう成り立たせていくか」を考える必要があります。新しくビジネスを始めていくので、どのような客層に向けたサービス(お店)であるのか、どのくらいの期間でどのくらいの収益を見込んでいるのかなどを考えていきます。

①事業計画書の作成

まず、飲食店を経営するための事業計画書を作成します。事業計画書とは、事業の内容(飲食店の場合はどのようなものを扱うのかなど)と、将来の売上予測や、家賃・材料費・人件費などのコスト試算、それらによる収益などをまとめたものです。

事業計画書を作成する目的は3つあります。

(1)開業に必要な資金の把握

飲食業は開業してから10年後には約90%は廃業してしまう非常に競争が激しい業界です。また開業してから1年以内の廃業は約16%、2年以内で約50%、3年以内で約70%とも言われています。長く続けるのはもちろん、開業してから軌道に乗るまでを耐えるのも難しいです。このような事態を避けるため、開業後にどのくらいの資金が必要なのか正しく把握する必要があります。

参考:【閉店店舗のデータから分析】閉店しやすい飲食店の傾向とは(居抜き情報.COMより)

(2)サービス内容の可視化

飲食店に限らず、ビジネス全般として自社のサービスを可視化することは重要です。アイデアを具体的にすることや、客観的に見つめ直したり、意見やアドバイスをもったりするのにも役立ちます。とくに、飲食店は競合が多いため、自分のお店が選ばれる理由があるのか開業前に把握することが重要です。

(3)融資、補助金・助成金の申請に必要

開業後、日本政策金融公庫や地方銀行へ融資を申請する際や、各機関へ補助金や助成金を申請する際にこの事業計画書が必要になります。飲食店は自己資金100%で開業するケースもありますが、資金調達を行うケースもありますので、開業前に作成しておきましょう。

②コンセプトの作成

事業計画書の作成と平行して、お店のコンセプトを作成していきましょう。コンセプトとは、ターゲット顧客はどの層で、どのような戦略で店舗を運営するかなどの内容です。

以下に一例を挙げます。

  • 取り扱う飲食物(どのようなジャンルか、酒類は提供するのか、など)
  • 店舗の立地(人通りの多いところか、賃料の安い郊外か、など)
  • ターゲット顧客(年齢層・性別、学生、ビジネスマン、主婦など)
  • Webサイト・SNSの運用(Instagramなどの活用、ポータルサイトへの登録)
  • ランチタイムやディナータイムの運営
  • 内装・外装

このような内容から、例えば「オフィス街の駅前で20代から40代のビジネスマンをターゲットにし、昼は安価で提供スピードの早いランチを営業、夜は居酒屋としてやや価格帯を高くして会食にも利用できるようなメニューや内装の雰囲気にする」といった具体的なコンセプトを決めていきます。

実際のところ、同じようなコンセプトを持つ飲食店はたくさんあることがほとんどで、その中で競争から生き残っていくためには独自の魅力や差別化できる要素を作っていくことが大切になります。

開業・移転の手続きや資金調達、ICTツールについてわかりやすく解説!

2.物件探し

物件探し

事業計画・コンセプトを作っていったら、次に物件を探していきます。

①条件を踏まえて物件を探す

事業計画とコンセプトを元に、店舗を構える物件の条件を考えます。店舗型の飲食店は立地によって繁盛するかどうかが大きく左右されるので、できるだけ良い場所を選びたいものです。一方で人気のエリアや駅前などの立地は賃料も高くなるため、事業計画をつくっておくことで賃料の上限をある程度把握しておくことができます。

物件探しの条件として決めておくべき内容の一例を挙げます。

  • 立地(駅からの距離、周辺の飲食店の数、人通り、など)
  • エリア(ターゲット層がいるかどうか)
  • 広さ(希望の客数を満たせるか、広すぎないか)
  • 賃料(高額すぎないか)

とくに広さに関しては、賃料そのもの以外の費用にも関連してきます。内装・外装費は坪単価×坪数で決まることが多く、店内が広すぎるとその分の椅子・テーブルなどの家具を増やさなければならない可能性もあり、また想定客数が増えることで必要になる人件費も増えます。

このような事態を避けるためにも、事業計画段階で客単価・客数・売上などをある程度考えておく必要があります。

②内装・外装についても同時進行で考える

可能であれば、施工業者と一緒に内見をしておくのがおすすめです。内装や外装に対して希望するイメージがあったとしても、物件によっては実現するのが難しいケースがあるからです。

③居抜き物件について

飲食店に限らず、オフィスや事務所などを前利用者の状態のまま入居する「居抜き物件」は、初期費用を抑えることが可能なため魅力的です。前の店舗の内装をそのまま引き継いで店舗運営をする居抜きは、「造作譲渡物件」と呼ばれます。

内装費用を抑えるメリットがある反面、前のテナントが撤退したという理由から、実は悪い立地で集客に不向きであるケースもあるため注意しましょう。また、物件契約時に「造作譲渡料」という費用が別途発生することがあります。

3.開業資金の調達や備品等の準備

開業資金の調達や備品等の準備

物件を仮押さえるなど、ほぼ決まった後は開業資金や備品等の準備を行います。開業資金に関しては、どの程度必要になるのかを事業計画段階で把握するため、物件探しと並行して足りない分の資金調達をどう行っていくのか考えておきましょう。

開業資金について詳しくは以下の記事で紹介していますので、代表的な助成金・補助金なども知りたい方はぜひ読んでみてください。

飲食店の開業にはどのような費用がかかる?必要になる資金について紹介

①開業に必要な費用

飲食店の開業に必要な費用は店舗の規模にもよりますが、700万円〜1000万円ほど必要になると言われています。費用のかかる代表的な項目としては以下が挙げられます。

(1)物件契約費

物件契約時にかかる費用です。住居用の賃貸契約と違う点は、保証金がかかるケースが多い点です。

物件契約費の項目と相場は以下となります。

  • 保証金:テナントのオーナーに支払う費用(家賃10か月分ほど)
  • 敷金:保証金と同様の費用、退去時に修繕費用などに利用される(家賃1~2か月分ほど)
  • 仲介手数料:不動産業者に支払う手数料(家賃1か月分ほど)
  • 前家賃:入居前に支払う1か月分+入居月の残り日数を日割り計算した合計金額

(2)店舗設備費

お店をオープンさせるために準備するべき項目と、その費用です。物件が決まった後、オープンに向けてそれぞれ用意しましょう。

  • 内装・外装費用:床・壁・照明、インフラ関係や看板などの工事費用
  • 厨房費用:ガスコンロ・冷蔵庫・オーブントースターなど
  • 家具・食器・備品費用:調理器具から椅子・テーブルなどの家具まで
  • レジ費:POSレジや決済システムを導入したタブレットなど
  • 販促費:ポータルサイトの掲載費や広告費など
  • 募集費:正社員やアルバイト募集の雑誌・サイトなどの掲載費など
  • 通信費用:店内のフリーWi-Fiや電話の設置費

(3)初期の運転資金

開業後、お店が軌道に乗るまでは単月で計算しても赤字になることが多く、その期間のランニングコストも事前に用意しておく必要があります。家賃・人件費・光熱費・材料費や、またオーナー自身の給料がゼロになる可能性もあるので生活費も必要です。期間としては半年分ほど確保しておくのが好ましいです。

②資金調達の手段

飲食店を開業するためには自己資金100%で行う必要はなく、外部からの資金調達を行うのも一般的です。資金調達の手段について簡単に紹介します。

(1)日本政策金融公庫の融資

無担保で融資が受けられることが多い政府系金融機関です。所定のフォーマットで創業計画書を作成し、融資申請を行います。創業時のまだ実績のない状態では民間での融資を受けることは厳しいですが、日本政策金融公庫は融資を受け付けています。創業計画書の作成には、先に述べた事業計画書も活用できます。

(2)地方銀行・信用金庫の融資

民間の融資は基本的に開業時の飲食店ではなかなか受けることが難しいですが、信用保証協会付きの融資を受けられるケースがあります。実際の店舗の審査が必要な営業許可証が必要なため、開業前の内装費用や物件費用には充てられませんが、その後の運転資金に活用できます。

(3)助成金・補助金の利用

小規模事業者に向けた助成金や社員を雇用するための助成金、IT機器の購入費用の補助金など、飲食店以外も含まれる制度も活用できます。こちらも、開業後に審査に通ることで利用できるようになります。

上記の他には、家族・知人・友人からの資金調達やクラウドファンディングなどの方法もあります。

4.必要になる資格

飲食店の開業に必要な資格は2つです。

①食品衛生責任者

食品衛生の管理を行う責任者が店舗に一人は必要です。各都道府県の講習(1日)を受けて試験に合格すれば取得可能で、受講料は1万円です。すでに調理師や栄養士の資格を持っている場合は、自動的に取得できます。

食品衛生責任者は、開業時に届け出を出す必要があります。

②防火管理者

収容人数30名以上の店舗で必要となります。消防署の防火管理講習(1~2日)を受けて取得可能で、受講料は3000円~8000円ほどです。店舗の広さによって2種類の資格があり、延床面積が300平米以上の甲種防火管理者(1日で取得)と、300平米未満の乙種防火管理者(2日で取得)があります。

③調理師免許は不要

実は、調理師免許は飲食店の開業に必須ではありません。調理師免許を持っていることで食品衛生責任者の資格が自動的に取得できますが、調理師免許の取得には「2年以上、調理業務の経験がある」という条件があるため、飲食店経験が短い人には難しい条件となっています。

5.必要になる届け出と提出先

開業資金の調達や備品等の準備

実際に飲食店を開業するときに必要になる各種届け出と、その提出先について説明します。

①開業届(税務署)

法人でなく個人で経営する場合は、税務署や各都道府県への「個人事業の開廃業等届出書」の提出が必要です。開業から1か月以内に提出する必要があります

個人事業主は税金の控除額に違いのある白色申告と青色申告の2種類があり、青色申告の場合は開業届と同時に青色申告承諾書も合わせて提出することも多いです。

②食品営業許可(保健所)

食品衛生責任者の取得に合わせて、飲食店の営業許可を保健所で取得する必要があります。流れとしては、保健所に事前相談し、営業許可の申請をし、その後に保健所の施設の検査が入り、営業許可書の交付という流れです。

申請料金は営業形態や地域によって変わりますが、おおむね1〜2万円ほどです。

③消防署への届け出

30名以上の座席がある場合は防火管理者選任届を、ガスコンロなど火気を使用する場合は「火を使用する設備等の設置届」をオープン当日までに提出します。また、店舗のオープン7日前までに防火対象設備使用開始届も提出する必要があります。

(1)火を使用する設備等の設置届

ガスコンロなどの火を使用する場合、届け出が必要です。厨房が存在する飲食店では基本的に必要ですが、飲み物の提供のみなど火を使用しない場合は不要です。

(2)防火対象設備使用開始届

飲食店に限らず、建物や建物の一部をこれから使用しようとする方は、開業の7日前までに防火対象設備使用開始届を消防署に提出する必要があります。

(3)防火管理者選任届

飲食店の店舗をはじめとした、物品販売店舗など不特定多数の人が出入りするような建物で、収容人数が30名以上の場合には防火管理者選任届の提出が必要です。

④深夜における酒類提供飲食営業開始届出書(警察署)

居酒屋など、午前0時を過ぎて酒類を提供する飲食店が該当する届け出です。営業開始の10日前までに申請します。開業後に酒類を提供するように変更した場合も申請が必要です。

⑤風俗営業許可申請(警察署)

スナックなど客に接待行為を行う飲食店や、バーなどの低照度飲食店、喫茶店などの区画席を設けた飲食店、また麻雀やダーツなどの設備がある飲食店に必要な申請です。1号営業から5号営業まで種類があります。申請から許可取得までの期間は基本的に55日と長い期間が必要ですので、オープンの前に申請しておきましょう。

⑥社会保険の加入(日本年金機構・社会保険事務所)

法人で従業員を雇用する場合は社会保険の加入が必要です。個人経営では不要です。

⑦労災保険の加入(労働基準監督署)

従業員やアルバイトを雇用する場合は労災保険への加入が必要です。雇用後、10日以内に労働基準監督署で手続きが必要となります。

⑧雇用保険の加入(公共職業安定所)

従業員を雇用し、31日以上の雇用予定と週の労働時間が20時間以上になる場合は、雇用後10日以内に公共職業安定所(ハローワーク)で手続きが必要となります。

6.まとめ

今回の記事では、飲食店を新規開業するために必要な準備について説明していきました。新たに独立して事業を始める人にとっては、内容が多く大変な準備になると思います。

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