古物商許可とは?取り方は?必要になる事業者と許可申請の流れを解説
2022.3.22

近年、SDGsやサスティナブルという言葉が浸透して、中古品のリユース・リサイクルにもよりいっそう注目が集まっています。誰でも一度はリサイクルショップやフリマアプリなどのサービスで不要品を売買したことがあるのではないでしょうか。
その中でも、事業として中古品の売買を行う場合は、個人や法人にかかわらず「古物商許可証」が必要です。古物商許可は古物営業法で決められている法律なので、許可を取らずに営業をしていた場合、罰則があります。
今回の記事では、「古物商許可証が必要になるケース」と「古物商許可証の申請方法」について詳しく解説していきます。中古品売買を行っている方は、「古物商許可が必要にも関わらず申請をしていなかった」もしくは「古物商許可を取得する前に取引を始めてしまっていた」ということが無いように本記事を読んでしっかり確認しましょう。
1.古物商許可とは

古物商許可とは、法人・個人が古物営業法で決められている古物を売買または交換する際に取得が必要になるものです。
前述の通り、古物商許可は古物営業法に定められています。もし、許可が必要にもかかわらず未取得だった場合は「3年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科せられる可能性があります。法律に違反しないためにも、古物商許可が必要になるケースを確認していきましょう。
また、古物商許可を取得し、これから開業・設立を考えている方はデジタルツールの活用やICTをうまく導入できるかが経営をしていくうえで成功の鍵となります。NTT東日本では業種・職種別の開業ポイントをまとめた資料をダウンロードすることができますのでぜひ参考にしてみてください。
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2.古物商許可が必要になる対象とは

古物商許可が必要になるケースは中古品(古物)を売買・レンタル・交換する場合などです。あくまで中古品が対象ですが、新品であっても一度使用するために取引された品物は古物に該当します。
具体的には以下のケースが対象となります。
- 古物を買い取り売る
- 古物を買い取り修理して売る
- 古物を買い取り使える部品を売る
- 古物を買い取りはせず、売れたら手数料をもらう(委託販売)
- 古物を買い取りレンタルする
- 古物を別の品物と交換する
上記に該当する取引は基本的に古物商許可が必要となりますが、例外もあります。次に解説していきます。
古物商許可が必要のないケースもある
そもそも古物営業法の目的は、盗品の防止や盗品の速やかな発見を図り、窃盗その他の犯罪の防止を図ることです。犯罪防止の観点で決められているため、例外として古物を売買または交換する場合でも古物商許可が必要のないケースがあります。
具体的には以下のケースが挙げられます。
- 自分で使用するために購入したものを売る
- 無償でもらったものを売る
- 海外で購入したものを売る
- 化粧品・お酒などの消費してなくなるもの
- 電子チケットなど実体がないもの
例えば、メルカリなどで個人が「自分で使用するために購入したもの」を不要になり、売る場合は対象外となるため、古物商許可の取得は必要ありません。
3.古物商許可申請の流れ

では、古物商許可が必要であった場合、どのような対応になるのでしょうか。
古物商許可申請の流れは具体的に以下となります。
- 条件の確認
- 個人・法人区分を決める
- 取り扱う品目を決める
- 警察署への事前相談
- 必要な書類を集める
- 申請書の作成
- 書類提出と手数料納付
- 審査
申請を行うには、書類の収集・作成など時間がかかる作業も多くあります。特に、個人で申請する場合は、事前準備がスムーズな申請手続きのポイントとなります。順番に詳しく解説していきます。
条件の確認
まず、申請を行う前に古物商許可の取得条件を確認しましょう。先に申請書類を準備しても、そもそも申請の対象外であったら意味がありません。
以下に当てはまる方は基本的に古物商許可を取ることができません。
- 犯罪歴がある
- 未成年者
- 成年被後見人・被保佐人
- 古物商許可を取り消されて5年を経過しない者
- 住所不定者
- 外国籍で適切な在留資格がない
- 公務員
- 暴力団員
- 営業所が用意できない場合
上記で最も注意すべきなのは、「営業所が用意できない場合」です。申請を行う際は必ず営業所を1つ以上記入する必要があります。
賃貸物件など他人が所有している物件を営業所にする際は、「使用承諾書」が必要になるケースがあり、申請のハードルが高くなるので注意が必要です。例えば、公営住宅の場合、居住することが目的のため営業所にすることはかなり厳しいと言われています。
個人で取るか法人で取るか
古物商許可は個人・法人どちらで取るかを事前に決める必要があります。
例えば、個人で古物商許可を取得していて、実際には法人で古物商を行っていた場合は古物営業法違反にあたります。
また、個人と法人では必要書類も大きく異なります。法人の場合は定款のコピーや役員全員分の書類が必要になるなど、申請書類が複数必要になってくるので注意しましょう。(詳細の必要書類は後述)
そのため、申請を行う前に個人・法人どちらの名義で営業を行うかをしっかりと決めておきましょう。
取り扱う古物の品目を決める
古物商を行う上で取り扱う品目のメインとサブを決めましょう。
品目は13品目あり、必ずメインを1つ選択します。ほかにも取り扱う品目があればサブを選びましょう。サブは何種類でも選択することが可能で、別途手数料がかかることもありません。しかし、詳しく分からないからとすべて選択するのはよくありません。なぜなら、中古車を扱う際は「駐車場の賃貸借契約書」が必要になったり、業種によって制限がかかる可能性があるからです。実際に営業を行う予定の品目のみを選択しましょう。
品目については以下の13品目に分けられています。
■古物の13品目
「古物」は古物営業法に規定されており、以下13品目に分類されています。
- 美術品類 (絵画・骨董品など)
- 衣類(洋服・古着・着物・子供服など)
- 時計・宝飾品類(時計・宝石など)
- 自動車(四輪自動車・タイヤ・カーナビ・部品など)
- 自動二輪車及び原動機付自転車(バイク・タイヤ・部品など)
- 自転車類(自転車・タイヤ・部品など)
- 写真機類(カメラ・レンズ・ビデオカメラ・双眼鏡など)
- 事務機器類(パソコン・コピー機・ファックス・シュレッダー・電話機など)
- 機械工具類(工作機械・土木機械・医療機器類・工具など)
- 道具類(家具・スポーツ用品・CD・DVD・レコード・ゲームソフト・おもちゃなど)
- 皮革・ゴム製品類(バッグ・靴・毛皮など)
- 書籍(文庫・コミック・雑誌など)
- 金券類(商品券・航空券・株主優待券など)
取り扱う商品がどの品目に当てはまるか、特にメインはどの品目に該当するかを事前に確認しておきましょう。
参考・出典:e-GOV 法令検索
警察署に事前相談をしておく
書類の申請窓口は管轄する警察署の「生活安全課 防犯係」です。また、自身の居住地を管轄する警察署ではなく、実際に古物商を行う営業所を管轄している警察署へ提出が必要です。管轄の警察署は警視庁のホームページで確認することができます。
管轄する警察署が分かったら、申請前に一度事前相談をしておくとスムーズです。事前相談をすることで申請時に不備が発覚し何度もやり直しになるのを防ぎ、受付する担当者からの印象が良くなります。また、申請書類は人によって必要書類が異なり、すぐに準備できる書類ばかりではありません。自己判断で申請書類を準備し、書類が足りない・記入不備があるなどを防ぐためにも、一度事前に警察署へ相談しておくと安心です。
必要な書類を集める
古物商許可申請に必要な提出書類はすぐに取得できるものばかりではないため、事前に添付書類を集めておきましょう。事前に収集が必要な書類は以下です。
必要書類 |
個人 |
法人 |
住民票(本籍地記載・ |
本人と管理者 |
役員全員分と管理者 |
身分証明書 |
本人と管理者 |
役員全員分と管理者 |
登記事項証明書 |
土地・建物の登記簿謄本 |
履歴事項全部証明書 |
定款のコピー |
不要 |
奥書きしたもの |
管理者というのは、各営業所に1人設定する必要があります。個人の場合はほとんどの場合が本人=管理者となるため、その場合は管理者の部分は省略できます。
「身分証明書」は免許証や保険証などではなく、本籍地を置いている市区町村で発行したものが必要です。「登記事項証明書」は営業所が自己所有の場合求められる事が多く、法人の場合は「現在事項証明書」では受理されないため、「履歴事項全部証明書」の提出が必要です。
また、法人の場合「住民票」「身分証明書」は役員に就任している方と各営業所それぞれの管理者全員分が必要になるため注意しましょう。
以下はケースによって必要になる書類です。
- URLの使用権限を疎明する資料(ネットを通じて商売する場合)
- 営業所の賃貸借契約書(営業所が賃貸の場合)
- 使用許諾所(営業所が賃貸の場合)
- 営業所の見取り図
- 駐車場の賃貸借契約書(中古車を扱う場合)
上記以外にも必要になる書類がないか、必ず事前相談の際に確認しましょう。
申請書を作成する
書類が集まったら次は以下の必要な申請書を作成しましょう。
必要書類 |
個人 |
法人 |
古物商許可申請書一式 |
必須 |
必須 |
略歴書 |
本人と管理者 |
役員全員分と管理者 |
誓約書 |
本人と管理者 |
役員全員分と管理者 |
各種申請書 |
警察署から必要書類を指定されたもの |
「古物商許可申請書一式」は警察署やホームページで手に入れることができます。営業所の数や役員数によって書類枚数が異なります。また、「略歴書」「誓約書」は法人の場合、「住民票」と「身分証明書」と同じく役員と管理者全員の書類が必要になるため注意が必要です。
書類の提出と手数料の納付
必要な書類が集まり、申請書の作成が終わったら管轄の警察署へ提出に行きましょう。また、必須ではありませんが、事前に管轄の警察署に電話で予約を入れると日程の調整をしてもらえるのでスムーズです。
提出書類と一緒に、古物商許可の手数料として19,000円の納付が必要となります。忘れずに現金で用意していきましょう。(県の証紙を購入する場合もあり)
審査期間は40日程度
一般的な古物商許可の審査期間は40日程度で完了します。審査期間は40日となっていますが、申請日翌日から起算し、土日祝日・年末年始を除くため、2か月以上かかる可能性もあります。特に、個人で書類作成を行う場合、正式に書類が受理されるまでに何度か修正を依頼されることもあります。営業開始までに許可が下りないということがないよう、余裕をもって申請を行いましょう。
4.古物商許可取得後は環境整備をしよう

古物商許可を取得し、開業・設立を行う場合は、その後の環境整備も考えておきましょう。
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5.まとめ

近年は副業ブームの時代です。フリマアプリやネットオークションも一般的になり、個人で手
軽にせどりなどの中古品売買を始めやすくなりました。しかし、個人で中古品売買を行っていても、古物営業法に定められた取引であれば法律に違反してしまう可能性があります。そのため、事業として中古品売買を行う際は必ず「古物商許可」を取得しましょう。
古物商許可が必要であれば、必ず営業所を管轄する警察署に申請を行う必要があります。申請書類は事業主によってケースバイケースになるため、事前に相談することが古物商許可取得への近道です。審査期間は40日もかかるため、審査期間中に開業・設立の環境整備を進めましょう。