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小売業で広がるICT活用(第1回)

みなさまは、昨今のスーパーマーケットで電子化が進んでいることにお気づきでしょうか? セルフレジの導入やポイントカードの統合、アプリの導入など、ここ10年ほどでスーパーマーケットにはさまざまな変化が起こっています。
今回はスーパーマーケットで起こっている、電子化をはじめとする変化や変革について解説します。
DXとは、Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略称です。DXのDは「Digital」の「D」です。「X」は、英語圏で「Transformation」の「Trans」を「x」の略称で書く習慣があることから、DXと略されています。
「Digital」は「デジタル」という意味で、「Transformation」(トランスフォーメーション)は「変容」という意味。DXを直訳すると「デジタル・変容」となります。DXとは、デジタル技術を用いることで生活やビジネスが変容していくことを示す言葉なのです。
経済産業省が提唱する「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」では、DXを以下のように解釈しています。
「(DXとは)企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」。
既存プロセスの効率化や強化のためにデジタル技術を活用するICT化とは異なり、DXはデータやデジタル技術によって、製品やサービス、ビジネスモデルを「変革」することを示します。

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DXという概念は、スウェーデンのウメオ大学に在籍しているエリック・ストルターマン教授が2004年に提唱したとされています。ストルターマン教授は、「テクノロジーの成長が人々の生活をより良く改善するためには、その変化を正しく分析し議論できるためのアプローチの方法を考える必要がある」と主張しました。
ストルターマン教授がこうした主張をしてからしばらくは、DXは学術用語として使われていました。しかしテクノロジーの進化を背景に、この言葉がさまざまな領域に浸透していき、2010年頃からDXはビジネス用語として認識されるようになりました。
さまざまな業界がDXによる構造変革を促進しており、今日はスーパーマーケットにもその影響が発生しています。店舗販売以外にもインターネット通販の普及やオンラインのフードデリバリー事業の拡大などにより、「食品を購入する場」としてのスーパーマーケットの存在意義が改めて考えられています。
従来のスーパーマーケットでは従業員による手作業で陳列などの作業が行われてきましたが、DXによって徐々にシステム化が進んでいます。
DXを推進することで従来、手作業で行っていた業務の自動化ができれば、人件費の削減にも繋がります。特に数値入力やデータ入力といった作業の多くは、ICTツールを導入することで効率化が期待できます。
小売業界が抱える問題のひとつに、慢性的な人手不足があります。せっかく採用しても一人前になるころには退職、というケースも少なくありません。自動化は、人材不足対策を解決する手段のひとつとして期待されています。
DXを推進することで、業務の効率化も期待できます。例えばAIを使用して人の流れを分析することが可能になれば、棚の配置や商品の陳列を調整することで、販売促進につなげることができるでしょう。
需要を把握することで、仕入れを適切にコントロールできるので、「売りたいタイミングで売れない」という売上毀損リスクや、「仕入れたものの売れずに大量に在庫を抱えてしまう」という在庫リスクを軽減できる可能性があります。こうしたリスクの回避は、結果的に物流コストの削減にもつながります。スーパーマーケットは、在庫として保存できる期間が短い生鮮食品を取り扱うため、その恩恵は大きいといえるのではないでしょうか。
人員不足の店舗では、顧客を待たせてしまい販売チャンスの損失やクレーム増などのリスクが生じる可能性があります。DXを推進することは、顧客対応の質を高め、顧客の購入意欲の向上につながるとも考えられています。
例えば、セルフレジを導入することを考えてみましょう。顧客自身が会計作業を行うセルフレジを導入すれば、レジ打ちの店員が不要になって人件費を削減できるだけでなく、同時に稼働できるレジ数を増やすことができます。レジ数を増やせば、並ばずにすぐに会計できるので、顧客の待ち時間を削減できます。結果として、顧客は気持ちよく買い物ができるようになるのです。「あそこのスーパーは会計で並ばなくて済む」という口コミが広がれば、リピート率の向上が望めるかもしれません。
電子ディスプレイの導入も、視点を変えれば顧客満足度の向上につながります。電子ディスプレイは、商品についての詳しい情報や「どの商品がどの棚にあるか」を顧客に伝えることができます。店員は顧客対応のために作業の手を止める回数が減りますし、顧客は店員を探し回らなくても必要な情報を手に入れられるので、スムーズな購入体験が可能になります。場合によっては、電子ディスプレイの導入で浮いた人員を、惣菜の調理に回すことで、惣菜の品数を増やして、惣菜コーナーを充実させることができるかもしれません。
近年、スーパーマーケットでは急速にセルフレジの導入が進んでいます。一般的にセルフレジは、商品に印字されているバーコードを読み取り、商品の合計額を支払うシステムとなっています。代金の支払い方法は現金だけでなく、クレジットカードや電子決済などさまざまなシステムで支払いが可能です。
セルフレジは、「フルセルフレジ」と「セミセルフレジ」に分類できます。
フルセルフレジ
顧客が購入する商品のバーコード読み取り、袋詰めや会計などすべての作業を自ら行うものです。商品や伝票に印字されたバーコードをひとつずつリーダーにかざして、すべてを読み込んだら精算ボタンを押して支払いをします。支払方法は現金だけでなく、クレジットカードや電子マネー、QRコード決済などを使えるケースが多いです。
セミセルフレジ
スーパーマーケットで多いのが、セミセルフレジです。商品のバーコード読み取りはレジで店員が行い、レジの隣に設置されている精算機で利用者が精算するタイプとなっています。すべての行程を顧客に委ねるフルセルフレジと比較すると、読み取りと精算を別々に行うセミセルフレジの方が混雑の緩和が期待できます。
また、バーコードを貼ることができない生鮮食品の場合、コードの読み取りの代わりに「画面をタッチして購入する商品を選ぶ」というアクションが必要ですが、セミセルフレジの場合、バーコードの読み取りは店員が行います。顧客が複雑なアクションをスキップできることは、満足度向上にもつながるかもしれません。
ICタグとは、小さな無線ICチップを搭載した札(タグ)を付けて、電波の送受信を行って商品の識別や管理を行うものです。電子荷札や無線ICタグ、電子タグ、RFIDタグ、RFタグとも呼ばれます。ICタグは商品管理のほか、交通系ICカードやクレジットカード、パスポートにも使われている技術です。小売業におけるICタグは、以下の3つの役割が期待できます。
商品の棚卸し
商品の棚卸しは、ICカードによる商品の管理が大きな効果を発揮します。ICタグリーダーから発信される電波は届く範囲が広く、店内にある商品のICタグを素早く読み取ることが可能となっています。ICタグであれば、商品を陳列した状態でも、間に金属がなければ読み取りに支障はないため、管理しやすくなっています。
欠品、補充管理
顧客の細かなニーズに応じて高い顧客満足度を維持するためには、こまめな在庫確認や補充が必須となります。店内で顧客が商品を手にとっていても、ICタグなら離れたところから読み取ることが可能なため、いつでも在庫を確認できます。
セルフレジとの組み合わせ
ICタグリーダーを搭載したフルセルフレジや防犯ゲートなどを組み合わせることで、顧客はカゴに商品を入れたまま1人で精算ができます。この仕組みを導入すると、一瞬で会計額が画面に表示されるため、回転率の向上にもつながります。また、店員は顧客対応に専念できるようになり、検品や精算のための人件費を抑えながら、サービスの質向上がめざせます。もちろん、万引き防止にもつながります。
スーパーマーケット・チェーンの専用アプリを作ることも、有効なDXのひとつです。従来のポイントカード機能をアプリに用意することで、さまざまなメリットが期待できます。
ほかにもプッシュ通知機能を利用することで、定期的に新商品情報やクーポン配信ができるというメリットもあります。
大手スーパーマーケットであるイオンは、積極的にDXを推進しています。2021年4月にイオングループは代表取締役社長直轄の組織として、新しい価値創造のためのDXを推進するとともに、全社のDXの支援、調整を行う「DX推進部」を新設しました。同社が公開した「デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組み」の資料では、さまざまな事例を紹介しています。
同社は、リアルとオンラインを融合させた顧客接点の創出と利便性の向上をめざすために、2020年6月に従来の「イオンモールアプリ」をリニューアルしました。クーポンや各店舗のフロアマップなど、顧客が必要としている情報をこのアプリに集約した結果、リニューアル前の3倍以上のダウンロード数と高いアクティブ率を達成しました。また、「App Ape Award 2020」において、アプリオブ・ザ・イヤー優秀賞を受賞しました。
近年はステイホームが浸透したことで、外出せずにオンラインで食品を購入したり、デリバリーを利用する頻度が増加傾向にあります。こうしたターゲット層に向けて出前館と協業して、フードデリバリーの展開を拡大。300を超える専門店と連携し、コロナ禍で来館が難しい顧客との接点を創出しました。この取り組みで、来館ができる状況となった時の売上の拡大が見込まれています。

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