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京都府のシステム活用経験が
自治体間の「応援・受援」体制構築を加速

京都府は、近年頻発する水害、地震など大規模災害での被災状況総括や被災者支援を迅速に行うため、2012~2014 年にかけてNTT東日本が開発に参加した「被災者生活再建支援システム」の試験導入を実施しました。この間に起こった連続豪雨災害において、被災者支援業務の大幅な期間短縮など大きな効果を体験したことを契機に2015年に同システムを府内の全市町村に導入。以降、建物被害認定調査結果やり災証明書の発行状況、各種支援状況等の住民データなどを一元管理できる同システムを台風や地震で被災した市町村において活用しています。
しかし、その背景には、全国の自治体と連携した「応援・受援」の体制づくりや職員の育成などの課題も山積します。「災害時には、平時からの訓練と自治体の枠を超えた相互協力体制の整備が不可欠」と語る京都府 危機管理部 災害対策課 主幹の津田 聡雄 氏に被災者生活再建支援システム導入の効果と導入後の課題についてお聞きしました。

京都府

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京都府 危機管理部 災害対策課
主幹 津田 聡雄 氏

導入の目的
被災者生活再建支援システム」導入で、災害時に即応できる自治体の
相互協力体制を整備
導入ソリューション

災害時の被災者への対応は時間が勝負。
限られた人員でも迅速・的確な支援を可能にしたい

――府内の市町村における「被災者生活再建支援システム」の導入経緯についてお聞かせください。

津田氏:京都府では、頻発する災害に備えたシステム化による負担軽減と市町村の相互協力体制整備のため、京都大学防災研究所の指導を得て、2012 年10 月から京都府と府内全市町村が共同で被災者台帳システム研究会を設置していました。

その一環として、2012年から2014年まで、宇治市と福知山市において試行的導入を実施したのが「被災者生活再建支援システム」です。

この試行導入の3年間に京都府は連続して豪雨災害に見舞われましたが、同システムにより宇治市と福知山市では、り災証明書発行期間の大幅な短縮など迅速な被災者支援で大きな効果を上げることができました。
これを受け京都府は、2015年7月に同システムを府内の全市町村への導入実施となりました。

――システム導入後は、どのように活用されたのでしょうか。

津田氏:大災害発生時において災害対応業務は多岐にわたることから多くの人員が必要になり、被災した自治体だけでは対処しきれない場合があります。そのため平時から、応援だけでなく受援体制も整備しておくことが大切です。

京都府 危機管理部 災害対策課
主幹 津田 聡雄 氏

また、応援する側の自治体も、各種業務に対応できる人材を平時から育成するなど、いざというときに迅速な支援を提供するとともに、それを継続できる体制を準備しておくことも重要となります。

被災者生活再建支援システム」は、建物の被害認定から調査結果までの被災状況を一元データ化し、り災証明書発行を効率化するとともに、被災者台帳を管理して被災者の生活再建を支援します。また、業務フローを共通化することで、建物被害認定調査やり災証明書の発行など一連の被災者支援の各業務のスムーズな遂行も可能にします。

京都府では、大きな建物被害の発生した2017 年9月の台風第18号や10月に起きた台風第21 号で、府内の全市町村に導入した同システムの活用によって市町村間での迅速な応援および受援が可能となり、限られた人員の中でもこれまで以上に被災者への公平かつ迅速な支援を少ない業務負担で実施することができました。

業務フローの共通化と平時からの準備と訓練が、
有事の自治体間の応援・受援に効果を発揮する

――システム活用の効果は他の自治体への支援でも発揮されましたか。

津田氏:大災害に対応するために相互協力体制の整備が必要なのは、府外への応援・受援においても同様です。

京都府がシステム導入後、実際に行った被災地での応援事例としては、2016年の熊本地震、2018年の大阪府北部地震、2019年の台風第19 号などがあります。

熊本地震においては、建物被害認定調査の二次調査数がかなりの数に上った益城町で職員が調査に対する十分な研修等を受けていない状況でしたので、京都府からは、知事会等の連絡員や避難所運営、建物被害認定調査員などの応援とともに多くの二次調査要員を派遣しました。
また、大阪府北部地震では、被害の大きかった府南部の宇治市、八幡市、大山崎町の中でも、損壊家屋が非常に多かった八幡市に対して、建物被害認定調査をマネージメントするコーディネーターを派遣するとともに、府の職員も調査要員として派遣しました。

さらに全国各地に甚大な被害をもたらした2019年の台風第19 号では、京都府からシステム導入の経験を持つ職員を福島県伊達市に建物被害認定調査などの応援に派遣したほか、京都市からも、同システムを利用している茨城県水戸市に支援を行うなど、広域的な応援も行っています。

「大阪府北部地震における建物被害認定調査の様子」

――導入後に見えてきた課題はありますか。

津田氏:「被災者生活再建支援システム」の導入による支援業務フローの共通化は、広域的な災害対応を見据えた相互協力体制整備を著しく推進させます。

また、2018年から本格的に運用を開始した「被災市区町村応援職員確保システム」は、カウンターパートによる支援をより的確に実施する方式となっているため、コミュニケーションを密にした支援体制の構築に大きな効果を発揮できることも実証されました。

市町村で同システムを導入することにより、支援業務の事務処理の負担軽減とともに、大災害発生時における市町村同士の円滑な応援・受援体制を構築できるメリットは明らかです。

一方で導入後は、業務フロー共通化のメリットを活かすためにも実際に災害が発生した場合に滞りなく使えるよう、いざというときに備え、平時から市町村職員がシステムを活用および使用する訓練を実施するなど、システム操作や作業手順に慣れておくことが重要となります。

――先日行った大規模な研修もその体制づくりの一環だったということでしょうか。


「2019年1月 被災者生活再建支援システム研修会場の様子」

津田氏:その通りです。災害時、システムを使って建物被害認定調査やり災証明書発行の手続きを円滑に行えるようにするためには実動訓練は必須だと思います。

2018年には、舞鶴市と京田辺市においてり災証明書の発行訓練を実施。2019年11月には府庁内で実施した「被災者生活再建支援システム」の合同研修では、京都府内の約60人の市町村職員が参加し、住民役と窓口職員役に分かれて、生活相談の受け付けや被害状況と申請内容の照合などのシステムの操作、二次調査受け付けへの誘導など、システムを利用した調査方法やり災証明書発行に係る手順について確認し、職員の習熟度の向上を図りました。

プログラムは座学のほか、システムを使ったり災証明書発行窓口の設営から操作・運営にいたる一連の流れを体験できる実動訓練があり、実際の運用を想定したカリキュラムとなっています。

京都府では、平時におけるこれらの研修を通じて、各市町村が自立した取り組みとして設営や訓練を実施し、有事に備えて迅速な被災者支援体制を構築できるようバックアップしていきたいと考えています。

また、従来からの災害対応で培ってきた運用手順や方法も有している各市町村においては、それぞれの実情に応じて、同システムの各種機能を活用して業務の迅速化を図ってもらいたいと思っています。

「2019年11月 被災者生活再建支援システム研修会場の様子」

システムを活用して市町村と連携、
さらに迅速かつ的確な支援業務体制の構築を

――今後のシステム活用の方向性についてお聞かせください。

津田氏:災害時、生活再建支援における業務全体のマネージメントが可能となるだけでなく、自治体職員の業務軽減につながる「被災者生活再建支援システム」の運用で必要なことは、平時の訓練だけではありません。

現場状況に合わせたシステムの進化も必要です。
同システムでは、実際に運用していく中で感じた機能性や操作性、利用画面での細々とした改善要望など、ユーザーである各市町村のリクエストも、パージョンアップ時のシステム性能向上のための改修にしっかり反映していただいています。

またネットワーク接続や設営に対するサポート体制も完備されており、実際の災害発生時においての信頼性も大きな特長です。

*上記ソリューション導入時期は2015年7月です。

*文中に記載の組織名・所属・肩書き・取材内容などは、全て2019年11月時点(インタビュー時点)のものです。

*上記事例はあくまでも一例であり、すべてのお客さまについて同様の効果があることを保証するものではありません。

京都府
導入サービス 京都府共同利用 被災者生活再建支援システム
導入時期 2015年
組織名 京都府
組織概要 近畿地方に位置する京都府は、北は日本海と福井県、南は大阪府、奈良県、東は三重県、滋賀県、西は兵庫県と接し、そのほぼ中央に位置する丹波山地を境にして、気候が日本海型と内陸型に分かれます。京都府では、大規模災害の発生に備え、実践力の向上や関係機関との連携を強化するため、毎年、「防災の日(9月1日)」を中心とした防災週間に防災訓練を実施するとともに、府内企業を対象に事業継続計画(BCP)の策定の必要性を確認する「BCP策定支援ワークショップ」なども開催しています。

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