新潟県がICTでめざす、被災者生活再建支援の新機軸

近年、国内では地震や豪雨などによる災害が増えています。災害が起こると自治体は、被災した住民が早く生活を立て直せるように支援する必要が生じます。そこで新潟県は支援業務を迅速に行うために、県内24の市町村と共同で、情報通信技術(ICT)を活用した「新潟県共同利用 被災者生活再建支援システム」を導入。このシステムにより、り災証明書の発行や、各被災者の状況に応じた支援をスピーディーに行えるようになりました。さらに新潟県は、自県だけでなく、他の都道府県で災害が起きたときも、同システムを導入している自治体と連携して円滑な相互支援を実現しようとしています。全国を視野に入れた、新潟県の災害支援の取り組みについて担当者に伺いました。

導入の目的
有事の際、被災者の生活再建に対応できるよう平時に準備を整えたい
被害情報や支援状況を一元管理できるシステムを導入、全国の自治体とも連携

新潟県

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新潟県防災局 防災企画課 涌井 正之課長

被災者の生活をいち早く再建するには、
平時からの準備が欠かせない

――新潟県は、2017年にNTT東日本の「被災者生活再建システム」を導入して、被災者支援を行う体勢を整えています。災害が起きてからではなく、平時にシステムを導入した理由を教えてください。

涌井氏:大規模な災害が発生すると、自治体はさまざまな対応業務に追われることになります。その業務量は膨大で、なおかつ災害対応の経験がないと、どのように業務を進めていけばよいか分からないということが多々あるのです。有事の際、スムーズに業務を遂行するためには、平時より災害対応業務を標準化しておくことが必要だと考えました。

新潟県防災局 防災企画課 涌井 正之課長新潟県防災局 防災企画課 涌井 正之課長

 

 避難所の運営や支援物資の配分といった業務は、住民同士の関係性や地域の特性などによって変えなければいけません。しかし建物の被害認定調査やり災証明書の発行といった業務は、全国どこでも手順が一緒で標準化しやすい要素です。この標準化しやすい部分を、平時にルール化・システム化しておけば、有事の際にもスムーズに対応できると思いました。

 そこで新潟県では、県内の市町村と共同で生活再建支援業務の標準化を図り、2015年4月にガイドラインを作成しました。2017年度には標準化した業務をより効率よく実行する目的で、県と県内24の市町村に「被災者生活再建支援システム」を導入。2018年度から運用を開始しました。このシステムを使えば、建物の被害調査票を自動でデータ化し、り災証明書をスムーズに発行することが可能になります。また、仮設住宅の手配、支援金の給付、税や公共料金の減免など、自治体各課が実施する被災者支援の状況をデータベース化し、被災者台帳として管理することもできるのです。

 被災者台帳は、どこのどんな住民に、どんな被害が発生して、どのような助けを求めているかといった情報が集約された、大変大切なものです。住民基本台帳やマイナンバーを活用して、平時より被災者台帳を整備しておくことで、有事のときに被災した住民を漏れなく支援していくことができると考えました。「住民全員を確実に救いたい」、そう考える我々自治体にとって、被災者台帳の管理ができる「被災者生活再建支援システム」は、非常に有意義なシステムだと感じています。

――具体的に平時はどのようなことを行っていますか?

涌井氏:災害が起きてからだと、データ入力やシステムの操作に慣れるための時間はほとんど取れません。そこで、日頃から県と各市町村が合同でシステムに関する研修を重ね、合わせて基礎データを入力して被災者台帳を管理しています。システムの導入にあたっては、平時から運用するとランニングコストがかかり、財政の負担になるという意見もありました。しかし、災害時にすぐ対応できるメリットは非常に大きい。今後は、導入した市町村が独自に研修を重ねていけるように、県がバックアップしていくことも考えています。

災害時には、都道府県の垣根を超えた支援が求められる

――県内の被災者支援の体制を整えることに加えて、新潟県は、他の都道府県への災害支援にも積極的に取り組まれています。災害時の応援・受援の重要性についてお聞かせください。

涌井氏:新潟県は、2004年の新潟県中越大震災や2007年の新潟県中越沖地震の際に、全国多数の自治体から支援をいただきました。その恩返しということで、国内で大規模な災害が発生した場合、県と県内の各市町村が連携し、「チームにいがた」として積極的に支援を行っています。2018年には、平成30年7月豪雨や北海道胆振東部地震の被災地に赴き、建物の被害認定調査やり災証明の発行業務などをサポートしました。

 大規模な災害が起こると、被災自治体の職員だけでは対応しきれません。例えば新潟県中越沖地震では、被災地である柏崎市の建物被害認定調査を7,238人で行いましたが、そのうち柏崎市の職員は延べ650人でした。このことからも、他の自治体の支援が不可欠なことを感じていただけると思います。また、マンパワーに加えて災害対応業務のノウハウも必要です。新潟県中越大震災の時は、我々新潟県の職員はどう業務を進めてよいか分からない部分が多数ありました。その時、大きな力になったのが、阪神・淡路大震災で災害対応を経験した神戸市、尼崎市、兵庫県の職員からのアドバイスでした。我々の体験を振り返っても、過去に災害を経験した自治体が支援に入ることは、災害対応において必須だと思います。

――災害支援を行う中で見えてきた課題を教えてください。

涌井氏:受援自治体では、災害時にどのような業務をどこのセクションが行うかが明確になっていないケースが多いため、支援に入った自治体をうまく活用できていません。特に被災者の生活再建支援業務は、住民の生活に直結するので迅速な対応が必要ですが、被災自治体の準備が整っていないために対応が遅れがちです。

 一方、支援自治体は多数の職員を派遣しますが、その中には災害対応をしたことがない職員もいます。そのような職員に対しては、業務内容を理解してもらう必要があります。また、いくつもの自治体が支援に入りますから、自治体同士が目線を合わせて、同じレベルで業務を行うことも大事です。そのためには、現地で何度もオリエンテーションや研修を行わなければなりません。

 これらの課題を解決するひとつの方法として、私たち新潟県が導入した「被災者生活再建システム」のようなシステムを多くの自治体が取り入れて、平時から一緒に研修を重ねていくことが有効だと考えています。災害時の作業が標準化され、最初から同じ目線で支援ができる体制になっていれば、被災者の生活をより早く立て直すことができるのではないでしょうか。

各自治体、事業者、研究機関一体となって、
災害支援の輪を広げていきたい

――新潟県は、「被災者生活再建システム」を活用した積極的な被災地支援を行っているそうですね。

涌井氏:北海道胆振東部地震の際、新潟県は北海道安平町の支援に入りました。同町は早くから新潟県と同じシステムを導入していたので、効率的に災害支援ができました。このことからも、今後、多くの自治体で同じシステムが導入されれば、支援業務がより円滑に進むと思います。

 すでに岩手県、茨城県、東京都、京都府は、全都府県レベルで、新潟県と同じ「被災者生活再建システム」を導入しています。そこで新潟県は、これらの都府県と意見交換会を行い、有事にどのような連携ができるかについて協議を重ねています。同じシステムを導入している自治体との連携が強化できれば、いずれかの自治体が被災した時にスムーズに支援できると考えています。今後は、このシステムを導入している自治体が核となって、相互支援の輪を広げていければ理想的です。

 新潟県はこのシステムを使った災害対応を、行政だけで行っている訳ではありません。システムに関係する事業者の方々や、研究者、研究機関と連携して支援にあたっています。システムについては事業者や研究者の方が詳しく、こういう方々がチームにいることで、より確実に、被災自治体の職員に対する説明やトラブル時の対応などが行えるのです。今後はこのような方々との連携をさらに強化していきたいと考えています。

 自治体と事業者、研究機関が一体となった取り組みを強化し、国内でどのような災害が起こっても、それを広域的に支援する体制づくりを進めていきたいと考えています。

*導入サービス:新潟県共同利用 被災者生活再建支援システム(2017年導入)

*文中に記載の組織名・所属・肩書き・取材内容などは、全て2019年1月時点(インタビュー時点)のものです。

*上記事例はあくまでも一例であり、すべてのお客さまについて同様の効果があることを保証するものではありません。

導入サービス  新潟県共同利用被災者生活再建支援システム
導入時期 2017年
組織名 新潟県
組織概要 新潟県は、本州の日本海沿岸のほぼ中央部に位置します。東側には朝日山地、飯豊山地、越後山脈が連なり、西側には妙高山などの山々がそびえています。また、信濃川や阿賀野川など数多くの河川が日本海にそそいでいます。川の下流には越後平野、高田平野など広大で肥沃な平坦地が広がり、全国有数の食料供給基地を形成しています。気候・風土は、おおむね阿賀野川を境として、南側は北陸型、北側は東北型に入っています。新潟の冬はたくさんの雪が降り、魚沼地方や上越地方は日本でも特に積雪量の多いところです。

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