ターゲットの性別を気にした空室対策。あなたの物件は、どんな人向けですか?
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2024.5.27 (月)Posted by
■ワンルームだから「単身」向け。 では男性、女性どちらに人気ですか?
繁忙期があけ、満室になった大家さんもいらっしゃる一方で、空室で出てしまった大家さんもいます。特に単身物件は供給も多く、空室として残ってしまった物件も多いのではないでしょうか? こうした物件のオーナーに「どんな方がこのお部屋を借りるのですか?」と聞くと、「ワンルームだから単身に決まっているじゃないか」「2DKだからカップル向け」などと、間取りタイプと入居人数を語る方が多いものです。あるいは、「街中だから社会人」「大学近いから学生」と立地で語る方もいます、「ではどんな社会人?」「どんな学生?」とお聞きすると、思い浮かばない方がいます。
では、洋服はどうでしょう? 男性向け、女性向け、あるいは「ユニセックス(男女を問わないファッション)などの性別や、社会人と言っても、作業服のようなイメージのワークマンのような服と、ホワイトカラー向けのワイシャツなど、仕事や志向で随分と服のイメージが変わります。
すなわち、「ワンルームだから単身」「2DKだから二人向け」と考えているから、「どこにでもある、似たような物件」になっていないでしょうか?
男性向けのデザインの部屋と女性向けの部屋では、ターゲットが変わる
■女性は警戒する「1F」。 ところが閑散期には、1Fばかりが空いてしまう
女心は男にはなかなかわからないもの。女性のお部屋探しでは、一階はかなり苦戦します。なぜでしょう? それは「泥棒や暴漢が1階だと侵入してくるかもしれない」という恐怖が、一般的に男性よりも強いことと、「一階だと、外から覗かれるかもしれない」という恐怖があるからなのです。
だとすれば、「このエリアは女子学生が多い」「このエリアは看護学生が入居する」などといったケースでは、空いてしまった1Fのセキュリティを強化する必要があります。道路から面した部分に塀を建てる。あるいはその塀を乗り越えて誰かが侵入すると人感センサーが光る。昔から、一階の庭に砂利が多いのも、不審者が侵入すると、石がジャリジャリと鳴ることで、抑止する効果なのです。
防犯カメラや人感センサーなど、セキュリティ対策は必須です。
一方で、一階単身が空いてしまった場合に、「よし男性向けで考えるか」と、シックな壁紙や隠れ家的なバーのようなデザインにすると「おっ、ちょっとカッコイイ部屋だな」と感じるダンディなタイプの男性もいるかもしれません。女性を意識した可愛い部屋をセキュリティ強化して闘うか、それとも男性に振って、デザインなど勝負していくか。男性はネットで動画を見る人も多く、ネットのスピードを速くする一方で、セキュリティ対策にはそこまで設備投資しないなど、メリハリをつけた空室対策も可能です。
いや、男女どちらにも借りてほしいから、無難な色で無難な設備としてしまうからこそ、特徴や魅力に欠け、空室として残ってしまったかもしれません。
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■ホワイトカラーかブルーカラーか。 仕事のタイプでも部屋のイメージが変わる
どんな仕事をする人なのかで、ファッションだけでなく、重視する設備も変わります。職場までクルマで通う、あるいはバイクで通うとなれば、それは日常的に出入りするので、車両の出しやすさや屋根のあるなしなどは重要なポイントでしょう。一方で、電車通勤が多いとなれば、そうしたことはあまり気にならないかもしれません。
特に最近は、ホワイトカラーを中心にテレワークも増えています。仮にそういう人が多いエリアであれば、物件の遮音性や、ネットのスピードとセキュリティは重要となります。当然、空室対策でどちらに重点を置くかも変わってくるのです。
■ファミリータイプといっても、 子供はどこで過ごすのか。
「広い物件だからファミリー」というのも、たしかにわかりやすいのですが、ではその性別はどうでしょう。男の子がふたりと、男女と、女の子がふたり、では随分と暮らし方も変わります。性別が異なると、「いずれ部屋を別にしたい」といったニーズもあるかもしれません。同姓であるとふたりで遊ぶ、のか、上の子は塾の宿題をするけど、下の子はまだまだおもちゃで遊びたい、テレビを観たいなど、これまた部屋数や遮音性も重要になります。
旗竿地など、引き込みの道路がある場合は、そこでなわとびの練習が出来るかもしれませんし、キャッチボールぐらいできるかも。自転車の練習もしようか、と、物件の弱点だった部分も活用次第では強みになります。プロパンガスを都市ガスに変えれば、光熱費が安くなるだけでなく、子供たちの自転車置き場や、お砂場セットの物置、ベビーカー置き場などに出来るかもしれません。
■ヒントは今の入居者の属性にあり。 クレームなどもヒントに空室対策を。
こうして考えると「ワンルームだから単身」ではなく「このワンルームにどんな人が住むのか」というターゲット選定になります。男性なのか、女性なのか。ホワイトカラーなのか、ブルーカラーなのか。夜勤が多く遅く帰るのか、それともテレワークもあり、家にいるタイプなのか。
そんな時にヒントになるのは、既に住んでいる人です。そう、今の入居者がテレワークをする人が多いなら、ネットワークを強化すべきですし、今の入居者に女性が多いなら、セキュリティの強化かもしれません。駅から遠く、みな、駅や職場や学校に自転車やバイクで行くなら、雨の日に濡れたサドルではかわいそうだから、自転車置き場に屋根を付けましょう。そう、実は、そんな兆しは「ネットが遅い」「テレワーク中に隣家がうるさい」「自転車置き場の雑草何とかしてくれ」「ストーカーが怖いのでなんとかして」といった日々のクレームにヒントがあるのではないでしょうか。
繁忙期を終え、今開いている部屋を埋めるためには、「ほかの物件よりもよい、ちょっとしたなにか」が重要です。ターゲットを想像しながら、今までの入居者のクレームなども見て、空室対策の強化ポイントを考えていきましょう。
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執筆:上野 典行(うえの のりゆき)
【プロフィール】
プリンシプル住まい総研 所長1988年慶應義塾大学法学部卒・リクルート入社。リクルートナビを開発後、住宅情報タウンズ・住宅情報マンションズ編集長を歴任。現スーモも含めた商品・事業開発責任者・ディビジョンオフィサー・賃貸営業部長に従事。2012年1月プリンシプル住まい総研を設立。All Aboutガイド「賃貸」「土地活用」。日管協・研修副委員長。全国賃貸住宅新聞連載。全国で、講演・執筆・企業コンサルティングを行っている。